３８話 只今 準備中です （ Now Loading ）
「それでは貴女様をみうの元へとお連れしましょう」
「ありがとう ガジャさん ところで ルネ導師はどこにいるの？」
「大規模な魔法を使われているので その場を動くことが出来ないそうです」
「えっ そうなんだ 一緒に来てもらえないのかぁ」
それなら先に言ってほしかったな。ちょっと心細いがしょうがない。そもそも人に頼るつもりはなかったもんね。
「しかし 心配することはございません 今から連絡が入るはずです」
「連絡？」
『翼よ 着いたようじゃな』
その場を離れることができないはずのルネ導師の声が聞こえてきた。ボクは周りをきょろきょろと見回すがその姿はどこにも見当たらない。
『念話じゃよ お主の頭の中に直接 話しかけておるのじゃ お主からも出来るから ワシに頭の中で話しかけてみるがよい』
そんなことできるんだ。とりまやってみよう。
「えっと 聞こえますか？」
ボクは心のなかでそう念じてみた。これで本当に向こうに伝わるのだろうか？普通に不安だな。
『ほれ 早く やってみるのじゃ？』
あれ？やっぱり出来てないっぽいな。どうしよう？まぁ、もう一度やるしかないか。
「聞こえますか？聞こえますか？聞こえますか〜！」
『ほれほれ 早くせんか？』
ダメだこりゃ。どうやら無理っぽいな。
「ガジャ さんもルネ導師と念話をしていますか？」
「はい しております 翼様」
「すいませんが ボクは念話が出来なさそうだと伝えて貰えませんか？」
「えっ できないのですか？ かしこまりました お伝えします」
はぁ・・・情けないな。いつもボクはこんなんで本当に嫌になるよ。基本的に要領が悪いんだよね。
『なんじゃ お主は念話ができんのか 情けないヤツじゃのう』
『うるさいよ』
『なんじゃ できるじゃないか』
『え？ 本当だ ビックリした〜！ 本音が漏れて伝わっちゃったみたいだな てか 普通 事前にできるか確認するべきだよ まった あのお爺ちゃんは困ったもんだよ』
『すまん すまん 白き魔女様なら このくらいは出来ると思ってな』
『えっ なに これ 思ってることが全部 伝わっちゃってんじゃん・・・ 欠陥魔法だよ』
『失礼なことをいうんじゃない 相手に伝えたいと思わなければ大丈夫なはずじゃぞ』
そうなのか。気をつけないとダメだね。うん？今の感情は向こうに伝わってないようだ。うーむ。何となくコツが掴めたかもしれない。今度は相手に伝わることをイメージして・・・
『聞こえる？』
『聞こえておるよ 何の用じゃ？』
『いや 別に用はないけど』
『用がないなら 話しかけるでない これは遊びじゃないんだぞ そもそも お主 こんなところで油を売っておってよいのか？ 早くみうの所に行きたいんじゃないのかい？』
は？なんなのさ・・・あいかわらず突っ込むことが多すぎてイラッとさせるお爺ちゃんだ。いやよそう。たしかにルネ導師の言う通りではある。
『もちろん すぐに行くつもりだよ 確か ボクらとあと１００人の兵士さん達とで突入するんだったよね？』
『そのことじゃがのう 一つ当てが外れてな』
『えっ なに？ どうしたの？』
『ワシらが屋敷の防衛システムを壊したことに 向こうさん 気づいて無いようなんじゃ』
『えっと それはいいことだよね？ なんかマズイことが起きたのかと思ったじゃん まぎわらしい言い方をしないでよ』
『まぎわらしい じゃなくて まぎらわしいじゃ まぎらわしいんじゃが まぎらわしいじゃよ いや そんなことはどうでもいいのじゃ』
『どうでもいいなら 言わないでよ・・・ えっと それで？』
『それでのぅ ・・・なんじゃっけ？』
『いや 知らないよ』
いい加減にしろ。ボケ老人。
『そうじゃ そうじゃ 作戦を変更するんじゃった 相手が気づいてないなら このまま 最後まで 気づかれないように少人数のチームで行動した方が良いと思うての』
『ボクもそのメンバーに入ってるよね？』
『もちろんじゃよ メンバーはガジャとおぬしとエマ それにカリー将軍とワシの所から精鋭を３人づつ これでどうじゃ 』
『うん 了解したよ』
『詳細は ガジャに伝えた それでは 気を付けてな 怪我だけはせんように それと 何かあれば 言うんじゃぞ』
『ありがとう じゃあね』
「えと 今 ルネ導師と念話をして作戦の変更を聞きました 詳細に関しては ガジャさんに 伝えてあるって 言ってたけど」
「はい 念話で詳細を話しております 作戦を共に行なうもの達は ここに向かっているそうですので 合流しだい出発しましょう」
襲撃に参加してくれる６名とは直ぐに合流できたのでさっそくボクたちは屋敷に潜入することにした。
てかもうすでに近くに住んでいる人たちは異変に気づき騒ぎになっている。流石に２０００人を超える人数で包囲をすれば当然だろう。
本当にみう達はボクらに気がついていないのだろうか？なんだか色んなことが心配になってきちゃった。
いや、ボクはみんなを信頼することにしたのだ・・・でも本当に信頼できるのか？ぶっちゃけ変な人達ばかりじゃん。
『あーもう ごちゃごちゃ考えずにやるんだよ お前はバカなんだから今さら考えても意味ないだろーが！』
ボクは自分の気持ちに喝を入れた。
『どうしたんじゃ 翼よ なにか ワシ 悪いことをしたじゃろうか？ バカとは酷いことを言わんでくれんか ワシ 頑張っておるよ・・・』
『あ すいません あなたのことじゃなくて ボク自身についてのことです』
なんだよもう・・・念話でルネ導師に話しかけてしまったのか。めんどくさいなぁ。いろいろと煩わしいよ。直ぐに殺しに行きたいのに、いろいろとその為の準備的なものやらなんやらが多くて嫌になる。
『あー 早く殺したいな』
『え？ なんじゃって！！！』
『あ いや すいません みうのことですので・・・』
また、心の声が伝わってしまった。ここだけ切り取られるとボクはマジでサイコパスだね。
ほんの少し前にボクは泣きじゃくったり、死にそうになったりしていた。そして今度は暴言を吐いている。もう本当にめちゃくちゃだ。でもまぁ、別にいいや。
何より重要なのは目的を達成するまで止まらない事だよね？
ボクは自分にそう言い聞かして開き直った。反省は終わった後にすればいい。今はみうを殺すためのことだけを考えよう。うん。
