31話 毒を食らわば皿までと言いますが
翼は囚われていたシュリの救出に成功した。シュリは今ベットで寝ている。宮廷魔術師の人たちに回復魔法をかけてもらったから身体の傷は癒えたはずだ。
『さて これからどうしよう』
世界商会とは完全に敵対してしまった。勝手に奴隷商を襲撃してそこの一番偉い人を殺しちゃった。これはやっぱり超ヤバいよね。みんなに怒られるかな。こういう時は素直に謝るべきか?
『いや 違う』
もともと世界商会はぶっ潰すつもりだったんだ。なによりもその一員である、みうとヒロとエリカを絶対に殺すと心に決めていたはずだ。
『でも 今はまだその時ではない』
ボクはこの国の人たちにまだ認められてない。魔法のこともまだよくわかってない。だから今は我慢すべきだ。
そう思ってた。別に間違っていないはず・・・いや本当にそうなのかな。自分の心を偽っていただけじゃないのか?
シルクハットの男はボクがこの国にやってきたことで政治も経済もダメになったと言っていた。ボクのことを完全にバカにしていた。
頭にくるけどそう思っている人は結構いるはずだ。ボクはみんなに舐められている。小さな女の子が何を言ってるんだって思われてる。それはミライリアの国政の会議に出ている時にもいつも感じていることだ。
自分でゆーけどボクはこの国のためにかなり頑張ってる。でもどうしたって不満を持つ人はいる。そもそも全員を納得させることなんてできるのかな?
ボクは前の世界でみんなにいい人だと思われたかった。そのために空気を読んでみんなと話を合わしていた。自分の考えとは違うことを言ったり他人の悪口を言うこともあった。ただの嘘つきだった。でもこんなことみんなやってると思ってた。
もちろん罪悪感は生まれる。やってることはボクをいじめてたヤツらと変わらないのだ。でもボクはそれを認めたくなかった。だから物事を深く考えないようにした。それでいてプライドだけは高かったから心の中でいつも他人をバカにしていた。
普通にイヤな奴だったと思う。優柔不断で自分じゃなにもできない癖に人の陰口ばかり言っていたわけで誰からも信頼されなくなった。
でも人には良心やら向上心やらがあるものでこんな生き方をしていると、どうしたって自己嫌悪で心が壊れていくものだ。
『やっぱりおかしいよ このままじゃダメだ 自分を変えたい』
少なくともボクはそう思った。結局、なにかを肯定することはなにかを否定することであってみんなが納得することなんてないのだ。
自分が納得すればいい。ボクの人生なんだから人にどー思われようがボクが良ければそれでいい。そう思うことにした。もう自分を偽るのはたくさんだ。
ボクはなにがしたいのか?
何度でも言う。それは復讐だ。みうとヒロとエリカを殺したい。
すべては復讐のためにある。舐められてボクの言うことを軽んじられ無視されたら復讐という目的が果たせなくなる。それでは困るのだ。
そう。たしかに復讐するための力を蓄える必要はあった。だけどすでに賽は投げられてしまったのだ。賽ってなんだか知らないけど、もうコトは動きはじめてしまった。明確にボクは世界政府と敵対したのだ。この件で必ずみう達はボクのことを知り警戒するはずだ。今いる所からボクを恐れて逃げてしまうかもしれない。
それに万が一ではあるけど、このあとすぐにボクがなんらかの事故で死ぬことだってありえるのだ。人は必ず死ぬ。例えば魔法を教わっていて事故って死ぬことも可能性はゼロではない。そうしたら死んでも死にきれない。
絶対にやりたいならば今すぐやらなければならない。今だ。今すぐにだ!
いろいろと理由をつけて後回しにすると結局はやらないもんだ。今までそうだったじゃないか。ボクはそれを後悔していたはずなのにまた同じ失敗をくり返すとこだった。それは絶対に嫌だ。つまり今から・・・
『ボクはみうとヒロとエリカを殺しにいくっ!!!』




