26話 王宮の庭園でお茶会を
テスタロッテをおもてなしする準備は着々と進んでいた。執事や侍女が集まってあっとゆーまに庭園に高級そうなテーブルとオシャレなパラソルを用意してくれた。めっちゃ美味しそうなスイーツが銀色で中心に棒があってお皿が段になってるヤツの上にいっぱいのせられている。
あれはアニメや漫画とかで執事を連れたお嬢さまがお茶を飲むシーンでみたことあるけどなんて名前なのかな?
いやそんなことはどうでもいいんだ。ボクはたった今この作戦の重大な欠陥に気がついてしまった。
テスタロッテはスイーツを自由に盗んで食べている女の子だ。ということはもう食べ飽きていてボクがケーキをあげたところでべつにそんなに嬉しくはないんじゃなかろうか?
急に不安になって軽くパニクってたらテスタロッテが到着してしまった。彼女はなんだか暗い顔をしている。どうしたのだろうか?前にあった時とは全然雰囲気が違うようにみえる。
「こんにちはー!」
ボクはテンションを無理やり上げて明るく挨拶をする。
「こんにちは・・・」
「今日は来てくれてありがとう♪」
「本日は翼様にお招き 頂き えっと光栄です」
「翼でいいよ」
「そんな ことはできません」
「えっと そうなんだね まだ紹介してなかったけどこっちはエマ・アラバスターだよ」
「テスちゃん よろ〜♪」
「・・・よろ」
「今日はさ ケーキを食べたいと思って用意してもらったんだ」
きっと喜んでくれるはず。そんな期待とは逆にテスタロッテは恨めしそうな目でボクを睨んでいた。どうも怒っているようにみえる。
なんでだろう?何か変なことを言ってしまっただろうか。意味がわからない。
「と とりあえず ケーキ食べようか テスはどれが食べたい?好きなのをなんでも食べていいよ」
「!?」
「ケーキ食べていーの?」
「もちろんだよ そのために来て貰ったんだから」
「本当に??? 食べてもいーの???」
「テスの為に用意したんだよ 喜んでもらいたいなって思ってさ せっかく準備して貰ったんだから 食べてくれなくちゃイヤだよ」
「そうなの! じゃあ 頂きます!」
テスは獲物を見つけた狩人のような目つきになったと思うと素早くお皿にケーキをのせて一口頬張った。
「と〜ても 美味しいッ!」
手を頬にあてて本当に美味しそうだ。そのままあっとゆーまにテスはケーキを平らげてしまった。
「もう1個食べてもいい?」
「どうぞ どうぞ」
ケーキを2個平らげたところでテスタロッテっては一息ついたようだった。とても幸せそうな顔をしている。今なら話ができると思っていったいぜんたいどーいうことだったのかを聞いてみた。
テスが言うにはなんでも『ケーキ禁止令』なるものがだされていたらしい。だから今日も自分だけスイーツを食べることができないと思っていたのだという。目の前にたくさんのスイーツを並べられてボクらがそれらを食べるのをみせびらかされると思っていたから不機嫌だったらしい。
「なんてヒドい人たちなのかと思ってたら好きなものを食べていいとか マジ神だよ!」
「どうして『ケーキ禁止令』なんてだされたの?」
「ちょっと ケーキをわけてもらっただけなのよ」
どうやらちょっとわけてもらっていたケーキ屋さんが潰れたらしい。それが結構おおごとになってしまったらしい。どんだけ盗み食いをしたんだ。まぁ、さすがにそれだけが理由ではないんだろうと思いたい。
「それで私の首にこのチョーカーを付けられたの 何かを盗むとビリビリビリってする魔法がかかっているのよ」
とっても可愛らしいアクセだと思っていたけどファッションじゃないのね。
「それはひどいね」
「でしょ!でしょ!でしょ!」
自業自得ではあるんだろうけど、そういうモノを身体に付けられるのはいい気分がしない。てかめっちゃ不快いだ。
ボクが話をしてチョーカーを外してもらおうかな。いやでもこのままにしてボクからケーキを食べさせていればテスはなんでも言うことを聞くようになるかもしれない。そっちの方が確実にコントロールできる気がする。そのくらいにこの子はケーキに飢えている。
ボクはなにを考えているんだ・・・ゲスすぎるよ。たかがケーキだけどテスにとっては大切なモノのなんだ。
人にとって大切なものはそれぞれみんな違うはず。人の好きを馬鹿にしたり冷やかしたりする人はボクは大嫌いだ。それを利用して弱みにつけ込むなんて最悪だよ。それはしちゃいけないことだ。
「ボクからそのチョーカーをとってもらえるようにかけあってみるよ」
「ホント!ありがとー!大好き!!!」
テスはボクに抱きついてきた。
「だけど約束だよ もう盗みを働かないでね 代わりに毎週1回 今日みたいなお茶会をテスのために開いてあげる ただし 一度でも約束を破って盗みを働いたら 二度とお茶会には誘わないからね」
約束なんて確実なものじゃないのはわかっている。嘘をつくことだってできるしね。あのチョーカーみたいに直接的な痛みを伴うものの方が信頼できるだろう。
でもボクを肉体的な痛みと恐怖で支配した『みう』のようなことは絶対にしたくはない。それをしたらボクはあいつと同じになってしまう。ボクはあいつとは違う。絶対に違うんだ。
もし約束を破られたらしかたない。もうテスと一緒にはお茶をしないというだけだ。
「よーし もう盗みは絶対にしないよ じゃあ 約束の指切りをしようよ!」
「えっ?」
指切りなんて意味がない。そんな風にボクは反射的に思ってしまうけど。テスが小指をそっとボクの目の前に差し出してきたのでついテスの細い指にボクの細い指を絡めてしまった。
「指切りげんまん嘘ついたらぁ 針千本のーます 指切った♪」
テスは満面の笑みを浮かべていた。まるで天使みたいだ。嘘をつくようには思えない。たまには人を信じてみてもいいかな。ボクはそんな気になった。
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