25話 『いつもそばにいるよ』と実際に言われたら鬱陶しい
「えと それでエマちゃは転移魔法を使えるの?」
「使えるけど ただちょっと特殊な魔法でさ ウチ以外の人を転移することはできないんだよね 警備の時に使ってる魔法なんやけど こんな風に翼ちゃの影に入って」
そう言ってエマはスーッと姿を消す。なんか忍者みたいだ。
「翼ちゃにマーキングしておけば姿を隠したままいつでも翼ちゃのそばにいることができるという魔法でね」
エマの声だけが響く。姿は見えない。
「翼ちゃに危険が及んだ時に颯爽と現れ その命を救うってわけ!」
ボクの正面に突如としてドヤ顔をしたエマが現れる。
「てか 今までもその魔法を使って ボクの気付かない内にそばにいたりしたの?」
「それはもちろん ウチの仕事は翼ちゃの警備だかんね 昨日はお風呂の鏡の前でずぅーっと自分の身体をジロジロと見とったやろ やっぱり胸がないのが気になるん?」
「わぁわぁッ!? なんで見てるの おかしいでしょー!」
「仕事だよ 仕事 警備のお仕事だから 万が一なにかあったら大変じゃん」
「いやいやいや さっき言ってたよね 王宮は簡単に侵入者が入って来れないようになっているって お風呂にまでついてくるのは流石にやりすぎじゃない?」
「バレたか ごめんごめん ちょっと見てみたくて」
「こわい こわい 本当にやめて プライベートを覗き見しないで 次やったらクビだよ」
「わかったって もうしないから許して」
「約束だよ」
ビックリした。他になんか変なことをしたのを見られてないか不安だ。常にそばにいるかもと思って行動しなくちゃいけないということか・・・
「えと 話を戻すけど エマちゃはボクを連れて転移することはできないということ?」
「そそ」
「使えないな」
ボクは小さな声でボソッという。
「え なに?」
「いやなんでもないよ ちょっと思い出したんだけど テスタロッテという女の子を知ってるかな?なんでも空間転移魔法の天才らしいんだけど」
「ウチは聞いたことない」
「テスタロッテかい イタズラばかりしおる子でよく怒られているという話を聞くの ケーキを盗んだとか ぬいぐるみを盗んだとか・・・ ただ転移魔法に関して他の者の追随を許さん程の腕前を持っとることは確かじゃよ」
「そんなに凄いんだ それなら仲間になって貰いたいな ボクが転移魔法を覚えるためのアドバイスをいろいろとくれるかもしれないし」
「人の話を聞く子じゃないと思うぞ」
「うーん スイーツ好きみたいだったから美味しそうなお菓子を揃えてお茶に誘ったら話を聞いてもらえたりしないかな」
「お茶するのはいいね ウチもスイーツ食べたい」
「スイーツ食べるのが目的じゃないからね」
「わかってる わかってる でいつやるの?ウチも参加するッ!」
エマは絶対にスイーツを食べたいだけな気がする。
「そうだね 今日の3時くらいからこの庭園でやろうかな とりあえず侍女の子にいろんなお店のスイーツを買って来て貰えるように頼んでみるよ」
正直ボクも美味しいスイーツが食べれるのは嬉しい。女の子3人でお茶するなんて当然だけどはじめてのことだし楽しみになってきた♪




