15話 ボクと友だちになってもらえませんか?
神聖ミライリアの王宮は平らな六角形の形をしている。中央部分は吹き抜けになっていて庭園が広がっていてそのさらに中心には『セイントパレス』と呼ばれるスカイツリーみたいな形をした巨大な塔があった。だけどボクが上半分くらいを魔法で吹き飛ばしてしまったので今は絶賛修理中だ。
ボクはその様子をみて罪悪感に苛まれながら庭園でアルナとお茶をしていた。まぁお茶を飲んでいるのはボク一人でアルナはその傍に控えているだけなんだけどね。
「あの アルナさん」
「なんですか 翼様」
「ボクと友だちになってもらえませんか?」
「えッ!」
ボクは友だちが欲しかった。でもどうすれば友だちを作れるのかがわからなくなってしまった。だからマンガやアニメみたいにストレートにお願いしてみることにした。
「これからはボクを翼と呼んでもらえる? ボクはアルナさんのことをアルナと呼ぶから あとお互い敬語を使うのも止めよう」
キモいと思われているだろうか?ボクは今すっごく恥ずかしくてアルナの顔をまともに見ることが出来ない。
アルナは『白き魔女』であるボクのことを尊敬していてなんでも言うことを聞いてくれる。だからその自分の立場を利用して強引に友だちになってもらうことにした。
こんなことをするなんてボクは人間としクズだろうか。でもかまうもんかッ。それが本物じゃなくても作り物だとしてもそれでもボクは友だちが欲しいんだ!
他の方法が思いつかなかった。アルナとは仲良くやっている。だけどその立場は当然だけど対等なものではない。ボクはそれを寂しく感じてしまった。今の状態から少しづつ友だちになっていくというイメージがまったく湧かないのでもう強制的に友だちになってもらうことにした。
初めは遠慮や違和感があったとしてもだんだん慣れてきて本当の友だちになれるんじゃないかという望みを持って・・・
「白き魔女様にそんな 畏れ多いです」
当然アルナは嫌がったがそうはいかないよ。
「いいから 命令! ボクはアルナと仲良くしたいんだ それとも迷惑かな?迷惑ならやめるけど・・・」
「いや そんなことはありません 私も同年代の友だちはいなかったから 嬉しいです・・・じゃない 嬉しいよ」
茶番だね。いーんだ。茶番でも・・・とにかく友だちが欲しいんだもん。
それにアルナも本当に嬉しそうに見える。きっと誰だって友だちは欲しいはずさ。
「ということで 友だちとしてお願いしたいことがあるんだけどいいかな」
「いいよ なぁに」
「アルナさー 皇帝になってくんない?」
「!?」
アルナは驚いた顔を見せ少し考え込む。
「わかった 翼がそういうなら 私は皇帝をやる!」
断るんじゃないかと思っていたのでちょっと意外な反応だった。
「翼 ありがと」
そう言ってアルナはボクに抱きついた。胸が当たってボクはドキっとする。女の子の匂いがした。
「あっ ごめんなさい・・・」
アルナは我に返り翼から離れる。あれもしかして泣いているのかな?
そう言えばアルナのお父さんは皇帝の正統な後継者だったが弟のグラムに殺されたという。そしてアルナも命を狙われてずっとその身を隠して生きてきたらしい。いろいろとアルナなりに込み上げてくるものがあるのかもしれない。
「翼は私を救ってくれた人 私は必ず貴女を守るから」
アルナは凛とした姿でそうボクに宣言するのであった。




