13話 カーリー将軍
以前ボクは神聖ミライリアの国政を決める会議にでていたけどあの時は完全にお飾りでろくに話も聞かずぼーっとしていた。
だけどボクはヨハンとの一件で反省した。ボクは反省ができるのだ。お飾りじゃダメだ。
だから自分でちゃんとこの国の内情を調べたり政治のことを勉強するようにした。それでわかったけどこの国は超マズイ状況である。
いきなり皇帝が殺されて王宮が壊されてそれをやった本人がトップの座にいるんだからまぁ当然っちゃ当然なんだけどね。
表面に出ていないだけでかなり不満は溜まっている。それにヨハンは自分に反対するものをかなり粛清したようだ。つまりけっこう殺しちゃっているみたいで人材もいなくなっているし国を見放して国外に退去している人も沢山いるみたいだ。
まぁぶっちゃけこの国がぐちゃぐちゃになってしまってもそんなにはボクの心は痛まない。べつに想い入れもないしね。でも少しは心が痛む。出来るならば救ってあげるのもやぶさかではないという気持ちはある。
とはいえボクがこの国を動かすのはムリだよね。ただの引きこもりの子どもなんだから。餅は餅屋というし詳しい人にどうすればいいか聞いてしまおう。ただヨハンの時みたいに騙されないように注意はしなくちゃね。多分頼られれば誰しも悪い気はしないはずだ。
ガジャさんに国政のことを相談するなら誰が一番良さそうかを聞くとカーリー将軍だと言われた。今はヨハンによって自宅に軟禁されているような状態なんだそうだけど、もともとは軍の最高司令官で多くの戦争で活躍した英雄なんだそうだ。ボクをヨハンの手から救うのも手伝ってくれたという。
てかカーリー将軍ってなんか聞いた事があったと思ったけどボクが王宮から逃げる時に名前を聞いた人だ。ボクは勝手にその名前を使ってカーリー将軍の使いだと偽り王宮から出ようとしたんだっけか。その人に本当に会いに行くことになるとは思ってもみなかった。
カーリー将軍はでっかいクマみたいな人だった。そして声がデカくてとても馴れ馴れしい感じの人だ。のっけから近所の知り合いのノリでボクに話しかけてきた。
「ようこそ ようこそ 白き魔女様 俺はカーリーだ」
そう言って握手を求めてきた。そして握手が終わるとボクをハグした。一瞬ボクはユリウスのことを思いだしドキッとして身体がこわばる。
ただの挨拶だ。落ち着け。落ち着け。ボクは懸命に自分に言い聞かす。だけど頭が真っ白になってしまい何を話せばいいのかわからなくなってしまった。
「はじめまして 翼といいます 今日 ここに来たのは国政のことでアドバイスを貰いたかったからなんです どうすれば国をまとめることができます?ボクはアルナを皇帝にしたいんですけど・・・」
「アルナとは誰かな?」
ヤバっ・・・!やってしまった。全然うまく説明が出来てない。人と話すのはホントに苦手だ。ボクは恥ずかしくなり顔が赤くなった。心が折れてこの場から逃げたくなる。
・・・いや逃げてしまったらダメだ。それじゃあ今までと変わらないじゃないか。とりあえずボクの考えを伝えよう。伝えてみてこの人にアドバイスをもらう。そのために来たんだ。最後までやりきるんだ。
もしボクの事を子どもだと相手にしないんならいいじゃん。この人を殺せば!
いや嘘だよ。もちろんそれで殺したりはしない。ボクはサイコパスじゃない。ただ気に入らなければ他の人の所に行けばいいだけだ。そうだ気楽にいこう。
ボクはアルナが前皇帝のお兄さんの血を引いているので彼女を皇帝に立てることで皇族の反発が抑えられるし国民からの支持も取れるのではないかという話をたどたどしくだけどカーリー将軍に伝えた。
「白き魔女様のお気持ちはわかりました それで残っている皇族はどうなさるおつもりで?処刑しますか?」
「いや ボクは人を殺すつもりとかはないんです なんかいい方法はないですか?」
「でしたら 国外追放にするのが良いかと」
「なるほど・・・あの ボクは自分で言うのもアレですがまだ子どもです 政治のことは正直よくわからないです でもこの国を良くしたいという気持ちはあります 力をかしてもらえませんか?」
カーリーはじっと翼の目を見つめた。
「貴女はこの国をどうしたいとお考えですか?」
とりあえず自由とか平等とかの話をすれば神の使徒ぽくなるんじゃないかな。ボクのいた世界の政治の話、つまり民主主義の話でもすればごまかせるかもしれない。
「ボクは自分の権力が欲しいとかは思わないんです ボクが望むのはみんなが自由にそして平等に暮らせる世界です 奴隷は良くない 差別も良くない この国ではそういったものを全部なくしたい 人は神の下で平等であるはずだ アルナには王様になって貰うけど権力を持たせるつもりはありません ボク達は国をまとめる為のシンボルであればいいと思うんです 皇帝の血は国をまとめるシンボルになるでしょうし この国を建国した白き魔女も立派なシンボルになります」
「ボクたちはいるだけでいい 国政に関しては理想は国民の投票で代表をえらぶのがいいと思います 基本ボク達は政治にタッチしない ヨハンが国のエラい人を粛清したと聞きましたが そのことで逆に新しい人材が入れやすい状況が生まれていると思うんです どんどん使える人材をいれて欲しい 良さそうな人がいれば教えてもらえませんか?」
うん。だいぶイイ感じに言えたんじゃないかな。
「そんなことまで 考えておられていたのか?!正直驚きました 本当に素晴らしい このカーリーにできることであればなんなりと力をお貸ししよう ここに約束する!」
「良さそうな政治家ならばアキレスが良いだろう 理想を語る青臭い男だが 貴女と同じようなことをいっとたはずだ」
「ありがとうございます 一緒に自由で平等な国を作りましょう!」
ボクはカーリー将軍と固い握手を交わす。




