12話 世界商会
ボクはガジャにみぅ達のことを調べさせることにした。ボクが彼女達に騙されて奴隷にされたということを伝えるかは迷ったけど正直に言おう。自分の情けないことは人に伝えたくはないがボクの本気度を分かって貰うためにはしかたがない。思い切ってボクは話をした。だけど・・・
「ああ 知ってます 神の使徒を謀るなど許されざることです その者達をどうされますか?命じてくだされば皆殺しにします」
教皇ヨハンがガジャにボクが王都に来た経緯を調べさせていたようで把握していたみたいだった。
ボクはガジャがボクのことで怒ってくれて正直、嬉しかった。命令すれば皆殺しにすると言ってくれたことも心強く感じた。
だけどとりあえずみう達の現状をきちんと把握すべきだと思ってあらためて彼女達のことを詳しく調べるようにお願いした。
そして3日後にガジャは報告を上げてきた。みう達はボクを恐れもうあの屋敷から逃げ出していると思っていたけどそんなことはなく普通にあの屋敷で生活しているようだ。
屋敷のあるラァツェイという街は神聖ミライリアの領土ではなく『世界商会』という商人の組合が管理しているという。商人の組合といってもその規模は巨大で世界各地に拠点があり潤沢な資金と独自の軍事力を持っているようだ。なんでも世界の政治や経済にたいしても大きな影響力を持っているらしい。そして厄介なことにみうは『世界商会』の幹部の一人だという。その権力を使い大規模な人身売買を行っているようだ。
「例えばの話ですけど その世界商会にボクの仕業だと気付かれずにみうとヒロとエリカを消すことはできますか?」
というかガジャに殺せと言ったら本当に殺してくれるもんなのかな。人を殺してくれといって二つ返事で殺すのはやっぱりおかしいよね。普通じゃない。無条件にボクの言うことをなんでも聞いてくれるとは思わない方がいいだろう。
「我々の仕業たとバレる可能性は1~2割といったところです」
うーん。確率は低いか・・・でもゼロでないわけだ。
「もし バレたらどうなりますか?その世界商会と全面戦争になりますか?」
「その可能性はありますが・・・翼様を奴隷にして売り払った輩を許すことはできません 証拠は残しません 私に殺す許可を頂けませんか」
なんか勢いで言ってないか。さっきは1~2割の可能性でバレるかもしれないって言ってたよね?
「ボクは奴隷をなくしたいんだ 人は神の下では平等だと思う ガジャさんはどう思いますか?」
「おっしゃる通りです 翼様 さすがは神の使徒 その慈悲深きお心に私は感激しております」
ガジャの顔は布で隠れているのでイマイチ感情がわからない。
「その世界商会は奴隷を商品として扱っているのですか?奴隷はどこの国にも普通にいるものなんですか?」
「どの国でも奴隷は使っています 世界商会でも武器と並んで奴隷は主力の商品です」
そういってガジャは考えこむ。
「僭越ながら私に妙案がございます 白き魔女様の名のもとに世界商会を潰してしまえばよいのです 神罰を降すのです そして人が皆平等の世界をつくるのです」
この人はまた一気に話を飛ばしてきたな。別に妙案でもなんでもないよ。
「世界の国々と強い結び付きがある組織をいきなり潰したら各国から敵視されたりしないかな?そもそも簡単に潰せないんじゃない?」
「何をおっしゃるのです 翼様の言われていることは正しいことです 神の使徒に逆らうのであれば神罰を降し商会もその国々を滅ぼすまでかと」
話が全然噛み合わない。この人はやっぱり考え方がヤバすぎるな。でも逆にボクは少し冷静になれた。みう達を殺したいけど闇雲に突き進んだらこの世界の他の国々と戦うことになるかもしれない。やるならばその覚悟を決めなければならない。そしてそれは今では無い。
とりあえず全てを神罰で解決しようとするガジャさんに暴走されないように気を付けよう。気がついたら世界中の国々がみんな敵になっていたらシャレにならない。
「今はまず神聖ミライリアをまとめるのが先かと思います みう達に神罰を下すのはそのあとにします」
「翼様がそうおっしゃるなら私は従います」
ガジャは不満げにそう言った。




