08話 嬲り殺し
ボクは教皇ヨハンと彼の率いる秘密部隊『救いの会』のメンバーに囲まれていた。
敵は6人こちらは1人。つまり多勢に無勢というやつだ。今ボクが真正面から戦えば確実に殺されるだろう。とりあえずこの場から逃げることのみを考えよう。
とはいえ出口は1つしかない。そして敵は全員その出口から入ってきたわけで逃げるのも絶望的だ。だけど何としてでもここを切り抜けなくちゃいけない。そうしなければ死が待っているのだから・・・
どうしようか?そうだ出口がないなら作ればいい!
ボクは素早く後退し後ろの壁に向かって魔法を撃ち込む。
「『暴風撃 』!!!」
壁は凹んだが穴を開ける事はできなかった。無理か・・・穴をあけてそこから逃げようと思ったんだけどね。
「何をしているんですか?ここは地下の聖堂ですよ 生き埋めになりたいのですか?」
ボクは翼にツッコミをいれられる。自分の顔をした人物に話しかけられるのは気持ち悪いな。しかし広い空間だと思ったけどまさか地下だったとは思ってもみなかった。ホントにボクは考えが浅いな。
いやでも待てよ。ヨハンはボクの身体が生き埋めになったら困るはずだ。ボクを逃がさないとここを壊してみんな生き埋めにすると脅したらどうだろう?
いや自分も生き埋めになっちゃうしそもそも地下聖堂をうまく壊せるかもわからない。いくらなんでも無謀すぎる。
ならばボクの身体を人質にしてここから逃げるというのはどうだろう?
いやどうやって人質にするんだよ。魔法で脅す?いやダメだ。ボクの身体は魔法が効かない。それじゃ剣とか何かしらの武器で脅す?いやそんなもの持っちゃいないし使えもしない。それにそこまで近づく前に普通に殺されるだろう。
「・・・」
ダメダメだ。今日はまったくもっていいアイディアが思い浮かばない。これはマジでヤバいな。殺されちゃうッ。
そんな風にパニクって挙動不審になってるボクを翼は冷めた目でみていた。
「はぁ 翼様 あなたは全く困った人ですね」
翼はゆっくりと手をかざす。強大な魔力が集まっているのがわかる。これをボクに撃ち込むの?無理だ防ぎ切れない。ここで終わりか・・・いや諦めちゃダメだ。なにか・・・なにかないか・・・?
一瞬にして魔力が溜まり翼は素早く魔法を撃ち込んだ!しかしボクは無傷だった。
なぜなら翼はボクにではなくヨハンに対して魔法を撃ち込んだからだ・・・!?
ヨハンはとっさに『魔法壁』を展開したようだがかなりダメージを受けたようだ。額から血がでている。
「なッ なにをする・・・!?」
「これ以上 翼様に手はださせません」
翼がそうヨハンに言い放った。どういうことだろう?アルナはボクを助けてくれようとしているのだろうか?
「くッ お前らアルナを取り押さえろ」
「・・・うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヨハンが急に叫び声を上げる。見るとヨハンのお腹から剣が突き出ている!?
剣は勢いよく引き抜かれ血がドバっと噴き出す。どうやら背後から剣で串刺しにされたようだ。ブロンドの長い髪に青い目をしたお人形みたいに可愛らしい女の子が剣を持ちそこに立っていた。ボクと目が合うとニコッと笑う。このシチュエーションじゃなければ恋に落ちたかもだけどぶっちゃけかなりホラーだ。
ヨハンは自分に回復魔法をかけてなんとか体勢を立て直そうとする。しかし空中から出現した無数の鎖がヨハンの身体に巻きつき動きを完全に止める。
「ガジャ 貴様 私を裏切るのかッ?」
「裏切る?神を裏切ったのはあなたでしょう 救世主様を操ろうなどとは神に対する冒涜にほかならない」
「そいつは救世主などではない ただの異世界人に過ぎない なぜそれがわからぬのだッ 貴様らは他の馬鹿どもと違いそれを理解してると・・・」
ヨハンの言っていることは正しい。ボクは神の使徒でも救世主でも無い。ただの異世界人にすぎない。でも言っていることが正しいからといってそれが受け入れられるとは限らないしそれにヨハンは嘘をつきすぎた。
「黙れ 『神が背負いし十字架』」
空間から巨大な十字架が出現した。きっとアレはボクが磔にされたやつだ。十字架は凄い勢いで落下しヨハンの身体に突き刺さった。
「グッ・・・ハッ・・・貴様ら・・・こんなことして許されるとでも・・・」
「許されるだろ 散々 同胞を殺させやがってこの野郎 俺らはな 決してお前の道具じゃなぇんだよ」
オールバックのイケメンがヨハンに近づく。
「人を裏切るやつは人に裏切られるのさぁ」
その理屈だとあなたも誰かに裏切られることにならない?まあいいけどさ。
「じゃあな 教皇様 安らかに眠りなッ・・・!」
そういうと十字架に一筋の雷光が走りヨハンは黒こげになり絶命した。
ボクは助かったの!?またなんとか九死に一生を得て命を拾うことができたみたいだけど・・・
「あの すいませんが いったいぜんたいどーいうことなのか説明して貰えませんか?」
ボクはおずおずと切り出すのであった。




