03話 憧れの異世界生活 その2
お風呂はめちゃくちゃ立派で大理石で出来ていた。変な女神の像が持っている壺からドバドバとお湯が流れている。
タオルで体を隠しドキドキしながら湯船の方へ歩いていく。なんか落ち着かない。みうの胸にどうしても目がいく。巨乳だ。見事なまでの巨乳だ。それに比べボクの方はつるぺただ。見事なまでのまな板だ・・・不公平だ巨乳税を支払え!そんなくだらない事が頭に浮かぶ。
しかし生で女の子の裸を見たのは初めてだ。マジでドッキドキする。どうしてもチラチラとみてしまう。
エリカはスタイルがよくてまるでモデルさんみたいだ。金髪でさっきまではシュシュを付けてポニーテールにしていたが今は下ろしている。これもこれで似合っているなとチラチラみていると・・・
「ドン!」
滑ってひっくり返ってしまった。とっさにエリカがボクの身体をつかむ。
気づくと目の前にエリカの目がある。口と口が接触している?キス?ボクとエリカがキスをしてる!?
「わぁわぁわぁ」
エリカが頬を赤らめ慌てて後ずさりする。
「ウチ 初めてだったのに・・・」
しゃがみこんで、ちっちゃな声で呟く。僕も初めてなので鼓動が聞こえるくらい動揺をしてまともに前を向くことができない。
みうが2人をニタニタしながら見ている。
冷静を装って湯船に入る。カラダが細くて白くて柔らかくて自分のカラダじゃないみたいだ。下はどうなっちゃっているのだろうか?怖くてちゃんと見ることができない。
「皆さんはなんか仕事とかしてるんですか? いや なんか凄い立派な家なんで」
みうに聞いてみる。
「私達は冒険者ギルドに所属していてそこで仕事を斡旋して貰ってるんですよー」
おっ!ギルドか。いかにも異世界ものっぽくていいじゃない。
「ツバサさんは魔法 使えそうですか?」
「ちょっとわからないですね 魔法って使えるんですか?」
「今 使う事ができなさそうなら難しいと思います この世界でも魔法はホント珍しいものなんです 転生した時に力を授かってなければ後から覚えるのはまず無理かと・・・」
「もし良ければ お風呂あがりに試してみましょうかー?」
「是非 お願いします!」
魔法を使えるなんてワクワクしてきた♪
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
屋敷の庭園で魔法の練習をする。
「じゃあ ちょっとやってみますね 火の精霊よ 我に力を与えたまえ ファイヤァァァー」
そう言ってみうが杖を振るうと拳くらいの大きさの炎が出現した。ゆっくりと中空を舞う。
「じゃあ 翼さんも同じように呪文を唱えて杖を振ってみてくださーい」
同じようにと言われてもそれだけでは良く分からない。とりあえずやってみよう。
「火の精霊よ 我に力を・・・与えたま・・・え ファイヤァ 」
呪文をいうのがなんか恥ずかしくて声がうわずってしまった。杖を振ってみるが何も起こらなかった。
「うーん 残念ですけどぉ これで魔法がでないとなると才能がないかもですね」
「まぁ でもほとんどみんな魔法は使えないから落ち込むことはないよ! 俺も使えないし」
「ですです! 魔法を使うことが出来ないから出ていけとか言いませんから(笑) 安心して下さい♪」
とは言ってもマジ残念だ。かなり落胆する。声を出さなければイケそうな気がするんだけどなぁ。その後も何度かやってみたが結局、翼は魔法を使う事はできなかった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
夕食は豪華絢爛というヤツだった。大広間には色とりどりの宝石が眩い光を放つシャンデリアが吊り下げられておりその下には無色透明なテーブルが置いてある。素材が何なのか見当もつかない。横には執事とメイドがズラリと控えている。テーブルの上のお皿にはたぶん龍と思われる生き物の頭とその刺身っぽいものが盛り付けられていた。
「凄くないですかー 龍の活け造りですよぉ♪」
龍って食べられるのか?漫画やアニメでは強くて神聖な生き物というイメージがあるけど。食べたら祟られたりしないのかな・・・
「翼ちゃんはお酒飲めるっしょ?」
ヒロが尋ねてくる。
「いやボクは未成年なんで」
「なに硬いこといってんの ここは日本じゃないんだぜ そんなの気にしちゃもったいないよ」
「いやぁ〜」
「翼ちゃん ノリ悪くない?」
渋ってるとエリカも話に割り込んでくる。
「そうですよー 平気 平気 私も未成年ですし」
みうも勧めてくる。
「ちょっと試しに飲んでみなよ!美味しいよ!」
「じゃあ ちょっとだけなら」
いやいやグラスを受け取るとヒロにお酒をなみなみと注がれる。
「それではツバサちゃんの異世界生活に乾杯しよう かんぱーい!」
恐る恐る飲んでみる。苦くてあまり美味しくない。
「龍の刺身も美味しいですよー どうぞどうぞ!」
みうに勧められて恐る恐る箸をのばす。醤油にしてはかなり赤い液体につけて食べてみる。美味しい・・・と言えば美味しいけどなんかぬるぬるしててちょっと気持ちが悪いな。
「どぅ? 美味しーでしょ?」
「はい 意外と美味しいです こんなの初めてです」
「ですよね もっと食べていーですよ♪」
不味いとは言えず、褒めてしまったらどんどん勧められてしまった。無理してお酒で流し込む。
「お!いい飲みっぷりじゃん 翼ちゃん!」
ヒロに空になったグラスにすぐお酒を注がれてしまった。
「かわい〜じゃん!なかなかいいじゃん!じゃんじゃん飲もうじゃん!はい!」
一気飲みしろということなのか?みうもエリカもこっちに注目していて気まずい。しょうがないと諦めてお酒を飲み干す。カラダが火照っててクラクラする。
「うぇーい!いーね 翼ちゃん」
パチパチと拍手が聞こえる。ヒロがまたグラスにお酒をなみなみと注ぐ。手拍子をしてもっと飲ませようとする。
「はい!はい!はい!」
「ごめんなさい もう本当にキツいです」
「は?ここで飲まないとかないわ」
エリカが急に強い調子で言う。
「ですです 飲まないとかないですよぉー」
「まぁ まぁ 翼ちゃん 空気読もうよ マジで 場の雰囲気悪くしちゃダメだって」
観念してお酒をまた飲み干す。なんか視界が白くボヤけてきた。自分が倒れたのがわかったが自分の意思でどうすることも出来ない。そして記憶が途絶えた・・・