11話 異世界でポーションを探す
ポーションってこの世界にあるのだろうか?
翼は足を引きずりながら街を歩いていた。街に人影はまったくない。それはまぁ良かったんだけど・・・
足が酷いことになっている。ボクの左足には弓矢が貫通してぶっ刺さったままである。血が流れ紫色に変色している。鉄でてきた矢には引き抜くことが出来ないようにご丁寧に返しが付いていた。
動かすと尋常ではない激痛が走る。このままでは歩けなくなってしまう。
松明が動いているのが見える。追手がボクを探しているのだろう。とりあえず足を治さなければ・・・
「道具屋とか・・・ないよね?」
翼は周りを見渡す。
「あッ あった!」
近くに道具屋と書かれた看板がある。どうやらボクはこの世界の文字を読むことができるようだ。
あるのかよ・・・だけどさすがに薬草やポーションやエリクシールとかは置いてないよね。いやもしかしたらあるかもしれない。RPGでは鉄板だしね。ちょっと魔法を使って忍びこんで見ようか。
翼は首を振った。
「いやいやいや」
あれはゲームの話だ。常識的に考えて無理があるだろ。ボクはもう奇跡を信じて何かをしたりはしないって決めただろう。可能性が低いことは避けるべきだ。
病院とかはあるのかな?回復魔法があるのだから魔法使いのやっている診療所とかはあるかもしれない。
あとは教会とかはどうだろう?聖職者はなんか回復魔法とか使えそうなイメージがある。それに神父は罪を告白されても通報しないと聞いたことがある。たとえ人を殺していても警察にはその事を言わないらしい。もしかしたらなにも言わずに治療をしてくれるかもしれない。まぁここは異世界だからもとの世界とは違うだろうが・・・
運よくここから教会の建物が見える。足はもう限界だし追手もどんどんと増えているだろう。もちろんどうなるかはわからないが流石に道具屋を襲撃するよりは可能性が高いはずだ。イチかバチか行ってみよう。
翼は決心をして教会の扉を叩く。しかし反応はない。もうさすがに寝てしまったか。
そっとドアノブを回す。
「開いた」
鍵はかかっていなかったようだ。おそるおそる中に入る。そんなに広くは無さそうだが薄暗い。以前に教会に訪れた際に見かけた白色の魔女の像がまた同じように祀られている。とんがり帽子を被り胸には星の形をしたペンダントをしている。なんか不思議な感じの像だ。
「あなたは誰ですか?」
急に声をかけられる。人が居たのに気づかなかった。
「あ すいません・・・た・・・助けてください!」
「こんな夜ふけにどうされたのですか?」
初老の穏やかそうな神父が近づいてくる。
「足を怪我してしまって」
「!?」
「これはひどい 早くこちらに来なさい」
牧師の自室だろうか?ベッドに座らされる。
「うーむ 矢を抜かなければ回復魔法をかけれないが・・・この矢は刺さったら抜けない構造になっているな 無理に矢を抜けば足が裂けてしまう・・・」
「とりあえず矢を抜けば回復魔法をかけてくれるんですね!ちょっと待って下さい」
「いや!? だから無理に抜くのは・・・」
魔法で矢を動かすことは可能かもしれない。翼は矢が動くことをイメージする。
「動け 動け 動け」
必死で念じる。
「痛ッ・・・」
矢がピクりと動く。よし動きそうだ。矢じりの返しの部分が完全に見えるまで動かす。あとは『刃風』で矢じりを切り落とせばいい。
「集中しろ 集中」
自分の身体を切り落としてしまったら笑えるな。出力を抑え細心の注意を払い矢じりを切り落とす。あとは魔法で矢を引き抜けば・・・
「カチャン」
矢が床に落ちる。
「すいません 回復魔法をお願いします」
「あ ああ・・・」
牧師は翼の足に手をかざす。足が光に包まれる。痛みは残っているが傷口は消えた。
「ありがとうございます 本当に助かりました」
翼は頭を下げる。
「君は一体何者なんだ?どこかの奴隷が逃げてきたのだと思ったが・・・魔力封じの首輪をしているのになぜ魔法がつかえる?それにその弓はミライリア軍のものだ 軍が街を捜索しているようだがもしかして君を探しているのか?」
どう答えようか・・・正直に事情を話せば聖職者とはいえ流石にボクを捕まえて軍に引き渡すだろう。
「この男を殺せばいい」
囁く声が聞こえる。どうせコイツもボクを裏切る。いや、だけどこの人はいきなり来た完全に不審者のボクの足を治してくれた。それは確固とした事実だ。それとは逆にボクはまだ裏切られた訳ではない。ここで殺したらボクはアイツらと一緒になってしまう。
「ボクはユリウス様の奴隷でしたけど 逃げ出してきました」
神父は翼をじっと見つめる。
・・・ユリウス殿下は幼き少女の奴隷を集め乱暴をしているという噂を聞いたことがあるがそうかこの少女が!?
「それは・・・それはつらかったね 軍の人間には黙っておいてあげるから安心なさい とりあえず今日はこのベッドで休むといい」
神父は優しい目でそう言うと部屋を後にした。