10話 『やったか!?』と言われた気がした午前0時ぐらい
翼は王宮から脱出する為に王宮と王都をつなぐ橋を全速力で走っていた。
「もうすぐ王都だ!」
そう思った瞬間・・・ボクの足に激痛が走った!?
「うわわぁぁぁぁッ・・・!」
翼は真っ逆さまに橋から水路に落ちる。
「ドッボーーーン」
水飛沫があがる。ボクの身体が水中に沈む。
「くっ・・・まずい・・・」
ボクは泳ぎが苦手だ。プールの授業は嫌いだった。自慢じゃないが25mも泳げたことはない。息継ぎが上手くできなかった。息継ぎをする際は息を吸うんじゃなくて息を吐き出せと教わったけどあれはおかしくないか?息を吐き出したらもっと苦しくなっちゃうじゃないか!
いや・・・そんなことを言ってる場合じゃ・・・ない。
翼は水面でバシャバシャと踠く。足がズキズキと痛む。
よく見ると矢が足に刺さっている!?
「つッ・・・」
油断していた。兵士はみんな逃げたと思っていたのに・・・そんなに甘くはないか・・・
だがボクはこんな所で死ぬ訳にはいかない。
「絶対に死んでたまるかッ・・・てんの・・・!」
翼は猛然と死にものぐるいで泳ぎ出す。岸まではもうちょっとだ。
なんとか・・・なんとかあそこまで辿りつかなくちゃ・・・駄目だっ!
力を振り絞り前へ・・・前へと身体を動かす。息が苦し・・・い・・・だけどもうちょっとだ・・・もう少しで手が届く。
「手を伸ばせ」
翼は必死で石垣にへばりつく。
「はぁッ・・・はぁッ」
なんとか助かった。しかしこの高い石垣を登るのか・・・?
いや登らなければいずれ兵士に捕まり殺されるだけだ。
「登ってやるよ 登ればいいんだろッ」
とはいえその前に足の傷をどうにかしないと・・・だけどボクはまだいまいち魔法の使い方が分からない。
心からそれを望む・・・それがトリガーだということはわかる。みうには呪文を唱えるように言われたけどきっとあれは嘘だろう。とはいえイメージし望むものが全て魔法になる訳ではなさそうだ。
今ボクが使えるのは『刃風』と弾や矢を防いだ『風防壁』あとは王宮の正門に穴をあけた時に使った『暴風撃』の3つしかない。
回復魔法が使えないかと思って足の傷が癒えるのを懸命にイメージしてみる。しかし何も起こらなかった。
まだわからないけどボクは攻撃寄りの風魔法しか使えないのかもしれない。
とにかく登らなくちゃ・・・
翼は石垣に手をかける。結構石と石の間に隙間がある。そこに足をかけていけばなんとかなるかもしれない。
ボクはサルと言われるくらい木登りが好きだった。ボルダリングをやってみたいと思っていたけどこんな形で叶うことになるとはね・・・
少しづつ・・・だが確実に・・・石垣を登る。かなり上まで登ってきた。
「落ちてまた最初からとかなったら最悪だな」
いや。これはフラグじゃないよ。うん。
注意深く・・・たが素早く・・・登っていく。てっぺんが見えてきた。
もうちょい。もうちょいだ。足の痛みに耐えながら懸命に最後の力を振り絞る。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
ボクを石垣を登りきった。
「やれば なんとかなるもんだね」
翼は王都まで戻ってくることが出来たのであった。