04話 王子様に見初められて その3
大きな物音で翼は目が覚めた。外はすでにうっすらと明るい。兵士が部屋の中にいる。手には鎖を持っている。その下に誰かがいる・・・シュリ!?
裸の姿で首と腕には鎖が巻きつけられている。体からは血が流れ全身傷だらけだ。変わり果てた姿をしたシュリが微動だもせず床に倒れていた・・・!!!
「この犬っころの面倒を見ておけ」
翼は慌てて駆け寄る。一体何があったんだ!?
「ヒドい・・・」
誰がこんなことをしたんだ・・・翼はシュリを持ち上げ自分のベッドに寝かそうとするが意外と重たくて持ち上げることができない。
翼は横で寝ている侍女に手伝って貰うために声をかける。
「すいません あの子大変なんです!ベッドにつれてくの手伝って下さい!」
「は?なんで私がそんなことをしなくちゃいけないの 今眠いのだけど」
まったく取りあってもらえない。
「あなたも明日はこうなるのよ 自分の心配をしたほうがよくなくて?」
「・・・」
仕方なく四苦八苦しながらシュリを持ち上げなんとか自分のベッドに寝かしつける。
息はある。しかしなんだってこんなことに・・・
そう言えばあの侍女の子はあなたも明日はこうなるって言っていたけどどういうことだろうか?
シュリは昨晩にユリウスとかいう人に呼ばれて帰ってきたらこうなっていた。ボクも今夜ユリウスに呼ばれて同じ目にあわされるということだろうか・・・
「そんなことないだろ?」
自分の中で根拠もなく打ち消して現実逃避しようとする。駄目だ。ここで考える事から逃げちゃいけない。侍女の子に話を聞いて情報を集めよう。
「ウザがれるんじゃない?」
いやそんな些細なことよりボクが同じ目に合うかどうかを知る方が重要だ。そう自分に言い聞かせ侍女の子に質問を投げかける。
「こういうことってよくあるんですか?」
「ここまで酷いのは滅多にないかなー この子は餓狼族だから特別なんじゃない」
がろうぞくってあの子の種族のことかな。
「ユリウス様は何をしたんですか?」
「なにって・・・夜伽でしょう」
「よとぎってなんですか?」
「あなたなにも知らないのね 笑えるわ」
「殿方が女性を夜に呼んでやることって 一つしかないでしょう」
とのがたってなんだ?流石にまた聞くのはまずいかな。
「あなた達みたいな 奴隷相手だと好き放題されるのでしょう そういう事がお好きなのよ てか寝たいんだけど もう話しかけてこないでもらえる?」
事情は大体わかった。さてどうしようか・・・
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朝食が終わり翼は部屋に戻ってきた。他の侍女は仕事にいってしまい部屋にいるのはボクとシュリの2人きりだ。
「えと シュリさん 朝食をもらって来ましたよ 食べませんか?」
「・・・」
「じゃあ ここに置いておきますね 食べたくなったら食べて下さい」
意識は取り戻したみたいで安心した。ロゼッタにシュリの分の朝食をもらえないか頼んだ際に医者も呼んでもらえないか聞いてみたが奴隷のために呼ぶ医者はいないと言われてしまった。
翼はベッドに横になり天井を見つめながらこれからどうするべきか考えていた。下のベッドからはシュリのすすり泣きが聞こえる。ボクも今夜ユリウスの部屋に呼ばれてシュリと同じ目にあわされる可能性は高いだろう。それでいいのか?もちろんそれは嫌だ。でもどうすればいいんだ。
「逃げよう」
どうやってここから逃げるんだよ?王宮には兵士がたくさんいるしここを守るための見張りも厳重だ。逃げるのは無理だ。
「諦めよう」
ずっとそうだったじゃないか。いつもいざっていう時に色々と理屈を付けて諦めていた。運が悪かったんだ。そういう運命だったんだ。諦めてユリウスのもとに行こう。
「・・・それは嫌だ」
「じゃあ逃げるか?」
「それは無理だ・・・」
ボクはずっーと自分の中で答えのでない堂々巡りを無駄に繰り返した。たが時は無常に進む。
「ガチャ」
ロゼッタが部屋に入ってきた。
「そこのあなた ユリウス殿下がお呼びです 私についてきなさい」
なにも決められないままボクは部屋を出たのであった。
出来れば明日も更新の予定です