八話 鋭く刺さる言葉と強がり
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龍輔に病状を話してから三日後の事だった。それは私が龍輔のお見舞いにと病室へ向かっていた時だった。病院に入り、院内の庭が見えるところで聞き覚えのある声が聞こえた。
「りゅうすけお兄ちゃん、行くよ!」
「おう!」
私は声のほうのする方へと振り向いた。すると、庭で龍輔とこの前見た男の子がサッカーボールで遊んでいたのが見えた。確か、秀の話では絶対安静じゃなかったっけ? その事を思い出した私は一度逸らした視線をまた龍輔と男の子の方に向けた。
やっぱり! 自分の視線が真実だと再認識された。私は二人がいる場所へと駆けていった。
「龍輔!」
辿り着くと、私は名前を大声で呼び掛けた。けれど、龍輔は聞こえないふりをしているようだった。
「龍輔ってば!」
私は龍輔の背後まで行き、肩を叩きながらもう一度呼んだ。
「なんだよ。邪魔すんな」
龍輔は、私に向かって低く怒鳴るように応えた。
「秀が言ってたでしょ、安静にしてないと駄目だって!」
「うるせえな。俺は今、こいつと遊んでんだよ。邪魔すんなっつっ、たろ。コホッコホッコホッ」
「ほら、咳が」
私は心配そうな顔で龍輔を見た。
「とにかく、俺に、近づくん、じゃねえ。コホッコホッ」
龍輔はさっきから言葉が途切れ途切れになり、咳き込んでいる。その度に苦しそうに見えたのは私の錯覚だろうか。
「りゅうすけお兄ちゃん?」
男の子が龍輔の様子を見て、不思議に思い首を傾けている。
「悪いな。また、今度、な。コホッコホッ」
龍輔は男の子に背を向けて、その場から離れて屋内へと入っていた。
「馬鹿、野郎。コホッ」
私とすれ違う際に龍輔は私を睨みつけて小さく呟いていた。私もその後を追おうとする。
「俺に近づくな、つったろ! コホコホ」
しかし、龍輔は私に怒鳴った。そんなに怒らなくてもいいのにと思った。
「嫌だ」
私は拒否の言葉を口にすると、後を追い続ける。すると、龍輔が振り返ってこう口にする。
「近づい、たら、お前と、別れるぞ。コホッ」
その言葉を聞いた瞬間、私は立ち止まった。『別れる』という言葉が私の心に鋭く刺さって恐怖感を覚えた。その間に龍輔はその場から去ってしまった。
数分後、私は龍輔の病室に戻った。病室には誰も居なかった。先に行ってしまった龍輔が戻っていてもおかしくない時間なのに。私は病室の中を確認して急いで、とある場所に向かう事にした。
秀に聞いてみよう。でも、龍輔が秀の邪魔はするなって言いそう。そんな事気にしなくたっていいはず。
一人考え事をして歩いていたせいで私は誰かにぶつかってしまった。
「すみません」
頭を下げて謝る。
「なぜ、謝ってんだ。コホッコホッ」
聞き覚えのある声がした。頭を上げると、そこには龍輔が立っていた。
「龍輔!」
私は龍輔が見つかって一安心したおかげか声が出てしまった。
「なん、だよ。コホッコホッ」
龍輔の表情はどこか元気が無いように見えた。そのまま私達は病室へと戻る事にした。無言のままで。
病室に着くと中には秀が居た。
「龍輔またどこか行ってたの? 安静にしてなきゃ治らないものも治らないよ」
「どこ、行ってたって、いいだろ。そのうち、治るだろ。コホッ」
「そのうちね」
秀が苦笑いしながら呟いた。そして、病室を出ていった。龍輔はすぐにベッドに横になった。
「コホッコホッコホッ」
なんだか、とても辛そうにしている。
「大丈夫?」
声を掛けたけれど、龍輔は私に背を向けるように向きを変えた。
「コホッコホッコホッ」
龍輔の咳が続いていて、気になってしまう。
「ねえ、大丈夫なの?」
「うるせ、えな。帰れ」
そう言われて、最初は気にしなかったものの『帰れ』という言葉を聞いて、龍輔の態度に苛つきつつも沈んだ気持ちになった。
「龍輔の強がりバカ!」
私は病室を出て行った。いつもそうだよ。どうしてなんだろう。
龍輔がいつも強がるの事に私には分からなかった。
作者のはなさきです。
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次話更新は5/13(日曜日)の予定です。