六話 謝罪と検査結果
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「ねえ、すーちゃん。龍輔の事だけど、呼吸困難の後に意識を失って運ばれたけど、最近変だと感じた事はなかった?」
私はその言葉に衝撃を受けた。
「最近、なんだか息苦しそうにしているよ。でも、まさか呼吸困難で意識を失うって、」
「そう、ありがとう。検査してみないと分からないけど、最悪の事態も考えといたほうがいいかも」
秀は真剣な表情でそう言った。
「え?」
私は秀の言葉に恐怖を覚えた。
「ごめん、龍輔をよろしく」
秀はそう言って行ってしまった。私は俯きながら龍輔がいる病室へと戻った。
戻ると、龍輔は背中を向けて横になっていた。
「龍輔」
「話、終わったのか?」
龍輔は私の声を聞くと、私のほうを振り向いて問い掛けてきた。その際に外されていた呼吸器が再び装着されていたことに私は気付いた。
前々から苦しそうにしていたし、呼吸困難で運ばれてきたと秀が言っていった事もあるから、苦しいのかな?
「そんなに苦しいの?」
思った事が口をついて出てしまった。
「秀が付けろと言ってただろ? また何かあったら御前に迷惑かけるしな」
冷静に答える龍輔。
「そっか」
それから私達は数分間だけ会話をした。
翌日、私は職場の病院に着くと最初に今回の事で謝った。なぜなら、昨日途中で早退してしまったから。
「昨日はすみませんでした」
私は頭を下げながら言った。しかし、私の言葉が届いたのか分からず、沈黙が流れる。
「いいわよ。婦長から聞いたわ。大切な人が倒れたらしいじゃない」
少し悲しそうな顔で先輩は言う。
「え、それは当たってますが、そんな事は一言も言ってません」
「あら、そうなの? でもお大事にね」
厳しい注意が返ってくるかと思っていた。でも、先輩の暖かい言葉が返ってきた。私はこの職場に来てよかったと改めて実感した。
私はホッと溜め息一つして仕事に取り掛かった。でも、私は大切な人が倒れたなんて、この職場の人たちには一言も言っていない。どうして分かったんだろう。理解してくれたのはなぜだろう。もしかして、電話していたのを聞いていたとか?
そんな疑問が次々と浮かんできて頭の隅に残った。やがて、仕事はいつの間にか終わっていて、龍輔のお見舞いに行った。
それから、三日後の事だった。
「すーちゃん。龍輔の検査の結果だけど、」
「もう検査結果が分かったの? どうだったの?」
「それが、肺炎だったよ。暫く入院になるけど、龍輔の場合重症化しているから最低一ヶ月半以上はかかるよ」
『肺炎』という言葉に気を落とした。でも、どこかで予想はしていた。あの時から龍輔の様子がおかしかった。
「そっか。多分、龍輔が聞いたら二週間、いや一週間が限界だと思うから私から説得しておくよ。ありがとう秀」
「僕はなにもしてないよ」
私は秀に仕事を増やしたように感じたけれど、秀は気にしていない様子を見せて、微笑んだ。
「ごめんね。僕行かなくちゃいけないから後で龍輔の病室に行くよ」
「忙しいんだね」
「すーちゃんのところより人数が少ない分ね。じゃあまた」
そう会話した後、私達は別れた。秀は外来のところに、私は龍輔の病室にそれぞれ向かった。私は龍輔の病室の前に着くと、すぐに中には入らずに立ち止まって考えた。検査の結果をどうやって伝えよう。普通に言っては納得しないだろうな。
入院が一ヶ月以上も掛かると言ってしまったら、龍輔の性格上「今すぐ退院してやる」とか言い出す。私が考えていると、不意に病室の扉が開いた。目の前に龍輔が現れた。
「おい、突っ立ってんじゃねえよ」
私を見た龍輔が大声を出した。
「ごめん。って呼吸器外してどこ行く気なの?」
「どこでもいいだろ」
「呼吸器外してまで行く場所あるの?」
「トイレだ。退け、邪魔だ」
私を押しのけて龍輔は行ってしまう。遠くに行ってしまう前に私はある事を思い出した。言わなきゃと口を開いたけれど、言葉が出てこない。いつの間にか龍輔が遠く離れていた。
作者のはなさきです。
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次話更新は5/6(日曜日)の予定です。