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四話 続く咳と意地

この作品は再度掲載になります(※加筆修正をしています)

なろうの別サイトになります⇒https://ncode.syosetu.com/n9450ca/52/


『願いは遠くに消えて』⇒https://ncode.syosetu.com/n8621er/


元のお話『イノセント クライム』のhttps://novel18.syosetu.com/n9450ca/

 それから二、三ヶ月が過ぎた。(りゅう)(すけ)の風邪も治った、と言いたいところだけど、一度は()まった咳がまた出始めていた。

「コホッコホッ」

 数十秒に一回は咳をしている。(つら)くは無さそうに見えるのに私はつい心配してしまう。

「龍輔、また病院に行こう。風邪じゃない気がする」

「大丈夫だ、コホッ。でも、咳留めは欲しいな。

「なら、今行こう。準備して」

「は? 今かよ⁉︎」

「私、夜勤だから今しかないよ」

 こう言えば、必ず龍輔は私と行くと思っていた。しかし、予想外の言葉が返ってきた。

「悪い。明日一人で行くことにする」

「どうして。今行かないと!」

 私は内心悔しかったけれど、緩まず強気で言う。

「うるせえな、タイミングがあるだろ。コホッコホッ」

 言葉を残して、龍輔はどこかに行ってしまった。行かないでと思っているのに、龍輔はお構いなく一人で行ってしまう。私は少しばかり期待していたけれど、それは意味のない事だとも心の中で思っていた。


 (しばら)くして、龍輔は手になにか入った袋を持って戻ってきた。

「病院、行って来たの?」

 私は尋ねる。

「ああ、」

 嘘をついている分かりやすい(あい)(づち)だった。

「袋の中、見せて?」

 龍輔は私に向かって袋を投げるように渡してきた。突然渡すものだから、落としそうにはなったものの上手く掴むことが出来た。

 袋の中を見ると、市販の咳留めの薬とペットボトルの水が一本だけが入っていた。私の予想通り、病院には行っていなかった。

「病院行かなかったんだね。どうして?」

「行かなくても咳さえ止まればいいと思ったからだ。だから心配すんな」

「あー、そう。なにかあってからじゃ遅いんだから」

 私はその場を離れた。


 そう、なにかあってからじゃ遅い。でも、その一方で心配し過ぎなのかなとさえも思っていた。いつの間にか時間が過ぎていき、私は夜勤へと出発した。


 夜勤から帰宅すると、龍輔は寝ていた。それもそう、夜勤に向かう時は外が暗かったけど、帰ってくる頃にはすっかり日が昇っていた。おかげで途中に日の出を見れた。


 それから数ヶ月後の事だった。まだ、龍輔の咳は続いていた。それに時々、なにかに耐えるように(ゆが)んだ顔をする。

「どうしたの?」と聞いても、

「なにもねえよ。大丈夫だ」と返事が返ってくるだけ。私には言えない何か(・・)を隠しているような、そんな気がした。


 そんなある日、私は見てしまった。部屋のテーブルに置かれている袋の中身。たくさんの市販の薬やマスク。病院に行かないでこんなに買い込んで、一体どうしてしまったんだろう。

 すると、部屋の入り口から龍輔が現れた。私は龍輔が現れた事に直ぐに気が付いてテーブルに置かれた袋と龍輔を交互に黙ってみていた。

「な、なんだよ」

慌てている龍輔。

「なに、この薬。病院に行かなきゃ駄目だよ」

「行く余裕なんてねえんだよ」

 私は龍輔の言葉に(あき)れた。本当は行きたくないからだ。

「行きたくないなら、(しゅう)呼ぶよ?」

「呼ぶなよ。つか、そんな事したらあいつの仕事の邪魔だろ。やめろ。コホッコホッ」

 どこか必死になっている龍輔を見ていると、なんだかにやけてしまった。けれど、にやける一方で心配してしまう。龍輔は一向に病院に行く気配はない。

 意地を張って私の言葉を聞かせても無理。だからといって、無理に行かせるのも……。どうやっても病院に行かせる事は出来ない。

 ここは諦めていつか自分で行くのを待つしかないと思った。それが後悔する事になるとは今の私は知らなかった。

作者のはなさきです。

四話目投稿完了しました。良ければ感想、ブックマーク、アドバイス、評価などよろしくお願いします。

次話更新は4/29(日曜日)の予定です。

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