二話 お粥と少しの寂しさ
この話は再度の連載になります。
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寝室を出た後、私はキッチンに行き直ぐにお粥を作る準備をする。まずはお米を磨いで、磨いだお米を数分間、水に浸す。
その間にほうれん草などの野菜を切っておく。浸していたお米を鍋に移して火にかける。沸いてきたら、野菜を加えて火を弱める。
そうして、簡単に熱々でとてもシンプルなお粥が出来上がった。スプーンで掬くって味見をしてみる。
「うん、火加減や味は大丈夫」
頷きながら呟く。お茶碗にお粥を入れて、お盆に乗せ寝室に居る龍輔の元へと運ぶ。
寝室につくと、龍輔の様子を見るかぎり眠っていた。近くにあった小さなテーブルの上にお粥が入ったお茶碗が乗っているお盆を置き、寝ている龍輔を起こす。
「お粥出来たよ、龍輔」
「食べたくねえ……ゴホッ」
言葉を吐き捨てるように言葉を口にすると、毛布に包まってしまった。
「少し食べたほうがいいよ。だから、お願い起きて」
「ったく。仕方ねえな」
龍輔は仕方なさそうな表情でむくっと起き上がってお粥のお茶碗に手を伸ばした。
そういえば、体温計の温度は三十八度八分だった。
予想はしていたけれど、高かったんだとはあの時は思わなかった。相当無理をしていたんだろうなと思った。
そして、龍輔は一緒に添えてあったスプーンでお粥を掬って口にする。
「美味しくねえな」
「美味しくなくても風邪にいいんだから食べなよ」
私はわざとらしく頬を膨らませてそっぽを向いた。そっぽを向いたまま暫く黙ってその場に体育座りしていると、龍輔の声が聞こえてきた。
「作ってくれてありがとな。ゴホッ」
背中越しに龍輔の御礼の言葉が優しい。別に御礼を言われる事はしてないのに。
具合が悪いときは、お粥が良いって言うから作っただけ。それと、あまり体調を崩さなかった龍輔の体が心配でなにか出来ないかと思っただけ。
私は立ち上がって、寝室を出ようとした時、ある事を思い出して龍輔のほうを向いた。
「あ、明日病院に行こう。秀のところに。それまでゆっくり休んでて」
「お前な。彼奴に会いたいだけだろ」
そんな! でも、龍輔の言う通り。
龍輔と私と秀は幼馴染みだった事もあり、私達はいつも一緒だった。それが、秀は親の跡継ぎで医学への進学を目指し、立派な医師になった。それ以外に私も途中から看護の勉強を目指したのも一理あるのだけれど。
だから、龍輔とは一緒にいるものの三人で会う機会がなかった。また三人一緒に集まれたらと思った。けれど、その思いを隠していた。
「風邪じゃないかもしれないじゃない。秀のほうが信頼出来るだろうし」
わざと理由付けをするように言った。
「何だよ、それ、心配しすぎなんだよ。お前はゴホッ」
「でも、秀の病院に行くからね」
「仕方ねえな、ゴホッゴホッ」
龍輔は溜め息をついた後、咳をする。私の提案には納得してくれた。
「分かったらさっさと寝る。治るも治らなくなるよ」
毛布を手にとって龍輔に被せる。しかし、龍輔は毛布をあっさりと手で退かし、私のほうに視線を向けていた。目を合わせると、少し睨みつけられてるように見えた。
「早くあっち行け。ゴホッ」
寝っ転がって毛布を被りながら私に言い放つ。言葉が悪いけど、優しい。
馬鹿、そういうところが好きなんだよ。私は少し寂しさを感じながら寝室を後にした。
作者のはなさきです。
二話目投稿完了しました。アドバイスなどありましたらよろしくお願いします。
次話更新は4/22(日曜日)の予定です。