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十三話 変化

この作品は再度掲載になります(※加筆修正をしています)

✩色々加筆修正してますが今回は特に主人公の鈴香の気持ちを少し加えてみました。

なろうの別サイトになります⇒https://ncode.syosetu.com/n9450ca/61/

別の話を含めた小説『イノセント クライム』⇒https://novel18.syosetu.com/n9450ca/


加筆修正済み再掲載『願いは遠くに消えて』⇒https://ncode.syosetu.com/n8621er/

「それってどういう事?」

 私がそう聞くと、(りゅう)(すけ)(しゅう)がお互い顔を合わせて困った表情をした。まだ治療は続けるとしても、やめる可能性があるということを聞いて、正気でいられなかった。

「治療は続けるべきだよ。抗ガン剤じゃなくても他の治療法だってあるし、」

「悪いな。今はまだ続けて、他に治療法があっても、やらない。コホッ」

「どうして……」

 龍輔は私の言葉に答えず、起こしていた身体を倒し、無言でベッドに横になった。

『龍輔、言うべきだよ。すーちゃんにまた誤解されて嫌われるよ』

『……痛くなったから、お前が代わりに言ってくれ。コホッコホッ』

 二人は小さく呟くように会話をしていたけれど、その会話は私にも聞こえていた。二人の会話の意味が分からず、私は黙っていた。しかし、秀が私のほうを向いて、一度溜め息を零した。

「すーちゃん、よく聞いて。龍輔は抗ガン剤を使っているけど、あまりに強い抗ガン剤で副作用の影響が強すぎるらしいんだ。それで、その、他の病気を併発してしまっているんだ。だから、」

「そう、なんだ」

 秀の言葉を最後まで聞かなくても病気を併発してしまったまで聞けば、止める理由が分かってなにも言えなくなった。末期の癌なら強い抗ガン剤でかなり危険だって分かってたはずなのに。それでも少しの期待をしてしまった私は。

「気を落とすな。治療しなくたって死ぬわけじゃねえ」

 龍輔が体を起こして、私のほうを向いて言った。

「なに、言ってるの。残り三年あるかないかって言ってたくせに、」

 いや、本当は一年あるか分からない。だから余計に治ってほしいと願って期待してしまうんだ。

「うるせえ、帰れ」

 龍輔は私の言葉に怒鳴った。

「またそうやって、追い返そうとする」

「んだよ。お前がうるせえからだろ。コホッコホッ」

 やっぱり変わりないいつもの強気の龍輔。本当は弱くて、心配させないように振る舞ってるくらい分かるよ。

「ここで喧嘩はやめてよ。病院だよ」

 秀が私たちを注意し、龍輔はベッドに大人しく横になった。

「……」

 私も龍輔も秀も無言になり、暫く沈黙が続いた。

「私、もう行くね」

 その言葉を口にして、病室を出ていく。また、龍輔から逃げてしまった。私は一度立ち止まって溜め息を零す。

「待て。さっきは悪かったな。帰るな。コホッ」

 落ち込んでいると、突然後ろから声がした。振り向くと、龍輔が立っていた。

「今更、なに言ってるの? 帰れって言ったのは龍輔でしょ」

「悪かったって言ってん、だろ」

 龍輔は謝ると、突然倒れた。倒れた拍子で龍輔の頭からフードが取れた。フードが取れると、龍輔の姿に私は唖然とした。龍輔は金髪に近い色のした髪の毛だったのだけれど、その髪がほとんど抜けていた。

 所謂、脱毛状態だった。抗ガン剤を使ってるせいでこんな状態になっていたんだ。

「龍輔、大丈夫?」

 そんな事を一度は気にしたものの私はすぐさま倒れた龍輔に掛け寄って声をかけた。龍輔は一瞬、辛そうな表情をしていたのに、私を見ると平気な顔をしてフードを被り直した。

「大丈夫だ、ただの貧血だ。心配する、な」

貧血? 違う。きっと、抗ガン剤の副作用と病気の痛みで辛いだけだ。

「大丈夫じゃないじゃん」

 私が言うと、龍輔はそんな事など無視して私の腕を掴んだ。

「いいから、来い」

 私はどこかに連れていかれた。

「離して!」

 あまりに強く掴むものだから大声を出してしまった。

「悪い。でも、強く掴まないと逃げるだろ」

「それは、龍輔が悪い。帰れって言うから」

「本当に悪かった。だから、黙ってついて来い」

 相変わらず龍輔は私の腕を強く掴んでいる。

「帰らないから強く掴まないでよ。痛い」

 龍輔はなにも言わず、私をどこかに連れていこうとする。途中、龍輔の様子がおかしかった。廊下の手すりに掴まって立ち止まっていた。

 私は引っ張られるように腕を掴まれていたため、先頭を歩く龍輔の背しか見ることが出来なかった。

「大丈夫?」

 それでも、心配して声をかけた。

「大丈夫だ。とにかく、俺の病室に行くまで、黙ってろ」

 龍輔はそう言うばかりだった。


 数分後、そんなに遠距離ではないのに、やっとという思いで龍輔の病室に辿りついた。病室には、まだ秀がいた。

「龍輔? 無理して病室を飛び出して、何かあったら大変なんだから」

鈴香(すずか)が帰るのを連れ戻しに行った、だけ、だろ」

「でも、ここは気持ちを抑えて」

「んな事、出来るわけねえだろ!」

「なに言ってるの。龍輔落ち着きなよ」

 落ち着かせようと龍輔に言った。

「だって、こいつが!」

 私の言葉でも落ち着かず、余計に怒鳴るばかりだ。言い訳をする龍輔に苛立って、私は龍輔をベッドに向かって叩きつけるように強く押した。ベッドに叩きつけられた龍輔。

「痛えな。なにすんだよ!」

「落ち着きなって言ってるでしょ。馬鹿」

「なに、怒ってんだよ。お前が落ち、着けよ、コホッコホッ」

 龍輔はそう言うと、咳き込んで私に背を向けて、ベッドに横になってしまった。

作者のはなさきです。

十三話目投稿完了しました。

昨日、数分で削除できましたが同時進行に連載している『忘却の中で』の更新を間違えてこの作品で更新してしまって焦りました。確認の必要を改めて感じました。

良ければ感想、ブックマーク、アドバイス、評価などよろしくお願いします。

次話更新は5/30(水曜日)の予定です。

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