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欲望の果てに……  作者: T隊長
始まり始まり 千葉編
13/21

ごく当たり前な日常 十一

 市川駅前 飲み屋街 表通り


 深夜を過ぎた時間帯にも関わらず、現時点では此処(ここ)の飲み屋街は依然として人が減っていく様子は見られない。寧ろ徐々に人々は増えていく一方だった。


 ある人は酒を求めて酒場へ、ある人は新たな出会い求めてナンパや店に出向き、ある人は客を求めて客引きをし、ある人は使えそうな働き手を求めてスカウトをし、ある人は他人の懐から金品を求めて掏摸(すり)をする等、様々な人々が集まり、此処(ここ)の飲み屋街は人間の『欲望』で溢れかえっていた。


 だが、そんな飲み屋街にも関わらず、少し変わった『欲望』を抱く者が居た。


 それは喧騒(けんそう)めいた飲み屋街にはそぐなわない『場違いな存在』だった。


 しかしそんな存在なわりに、此処(ここ)の空気に溶け込む……というよりかは、その存在を見事に殺していた。目の前を通り過ぎ行く人々に対して、何かに怯えるように、自らもその存在を掻き消すことを意識しながら。


 彼は本来、この場にはいない存在だった。自分の意思で此処(ここ)に訪れたわけでもなく、自分の意思で帰ることも出来ない。


 彼は心の中で呟き続ける。


 帰りたい……帰りたいと。


 人々は彼の存在に対して肯定も否定もせず、目の前を通り過ぎて行き、後顧(こうこ)する人も(ほとん)ど見られなかった。彼の『暗部』な一面があることを知る由もなく。


 己の『欲望』を満たす為に、彼の存在は享楽(きょうらく)にふけることを優先した人々にとっては、有象無象(うぞうむぞう)なものに過ぎなかったのだ。


 ある一人の男を除いて。


 漆黒の黒いローブを身に纏った、まるで『死神』の姿を思わせる彼の存在は、飲み屋街にあまり影響を与えることはなかった。


 現時点での話しでは。

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