No.12 私の彼氏になってください
「か、彼女さんとは高校からって聞いたんですけど…」
「ん?ああ、16からの付き合いだから そう言っただけだ。まぁ向こうは正真正銘 高校生だったしな」
「そ、その人も…」
「いや違う。普通の家のお嬢さんだよ」
「10年も結婚しないのって…やっぱり何かあるんですか?」
「ん〜。…向こうの親が大反対でね」
「そ、そうなんですか…」
「ああ」
重い沈黙が流れた。
私はただ、私たちは同じなのだと言いたかっただけだった。
一体感が出るかと思ったそれは、私たちに傷を増やしただけのような気がした。
「さて、あんまり長居してもどうかと思うし、帰るわ」
そう言って立ち上がる。
ぐ〜!!
とたんに新垣さんのお腹の虫がなった。
「……」
こ、これは聞き流した方がいいのかな?
と新垣さんを凝視すると
「…結局お前からもらった焼きそばも食えなかったからな」
「え?な、なんでですか?」
「あいつらが機関銃のように話してくるから食えなかったんだよ!!」
あいつらとは、隆さんと彩音さんかな?
「…の、残り物で良かったら食べます?」
私は立ち上がって冷蔵庫を開けて、ひじきとキンピラ、煮豚にマカロニサラダを取り出す。
タッパーの蓋を開けながら、
「ゴハンは大盛り食べれます?」
「あ、ああ」
それを聞いて冷凍ゴハンを二個レンジに入れた。
「ゴハン温まるまで、それ食べててください」
そう言うと壁に掛けてあったエプロンを着て卵を割った。
醤油をたらし、カシャカシャとリズミカルに混ぜて熱したフライパンに流し入れる。
ジュワっと美味しそうな音を立てて火が通っていく卵をクルクルと丸めて、また流し入れ…。
チーン!!
と響くレンジの蓋を開け、ゴハンを丼に入れた。
ちょうど切り終えた厚焼き卵と一緒に出す。
「どうぞ」
「お、おう…」
いただきますと丁寧に手を合わせ、卵焼きから食べ出した。
…ほんとに卵焼き好きなんだな〜。
「旨い!!」
そう言って笑った。
私も つられて笑った。
「この前と同じですよ」
「醤油もいけるな!!」
「だし醤油ですからね」
「そんなのあるのか?」
そこから調味料はアレがいいとか、隠し味はコレだとか話し合った。
「お前ほんとに ちゃんと料理してんだな〜」
「やらないと死にますからね」
親からの援助は学費だけなんだから。
「悪かったな。その、弁当取っちまって…」
「おかげで贅沢な昼ごはんになってましたよ?」
私の経済状況では買い食いなどできるハズもなく、ほんとに楽しいランチタイムだった。
「そうか…」
新垣さんが微笑んだ。
それは初めて見た穏やかな笑顔だった。
「大変なのは今だけだ」
「はい…」
「社会に出て、ちゃんとやっていたら ちゃんとした人がお前を見初めてくれるから」
「……」
「そしたら、その人と結婚して幸せな家庭を築きなさい」
そう言って私の頭をポンポンと優しく叩いた。
「幸せにしてくれる人って、見たら分かるんですか?」
「はっ?」
「ビビビッてくるんですか?」
「そう言われると…」
困るわ~と新垣さんが頭をかいた。
「なんとなく分かるんじゃないか?」
俺もそうだったし、と余計な一言までつけた。
「なら教えてください」
「はっ?」
「私は男友達もいません。出会った時になんとなく分かるように新垣さんが基準になってください」
「はぁぁ!?」
言ってる意味が分からないと目を白黒させている。
これは賭けだ。
私はゴクリと唾を飲み込むと静かに言った。
「私の彼氏になってください…」




