No.5 デートです!!
身長167センチで元読者モデルの夏樹の服は丈が長い。
ゆえにチュニックが私にとってのワンピースだ。
夏らしい水色のそれにカゴバックを装着して、サンダルに足を入れる。
いざ出陣!!
家に迎えに来てくれるという事なので門の外で待っていると、青のスポーツカーが目の前で止まった。
「おはよう」
「お、おはようございます…」
…今日はスーツじゃないんだ。
て、当たり前だけどね。休みだし?
でも、あの新垣さんだからな〜なんて思ったりもした。
「乗れよ」
「あ、はい!!」
慌てて助手席に座ると車は緩やかに発進した。
「きょ、今日はどこに行くんですか?」
「ん?ちょっと足を伸ばして県外に行こうと思ってる」
「県外?」
「心配すんな。夕飯までに帰してやるから」
…そんな心配してないけど〜と新垣さんを盗み見る。
いつも きちんとセットされている前髪はラフにおろされ、Tシャツにジーンズという何でもない格好だ。
それでもTシャツを押し上げる適度に鍛えられた胸板や細身のジーンズから伸びる長い足だけで充分お洒落に感じる。
私、デートしてるんだ〜。
なんだか沸々と込み上げてくるな〜。
車内に流れるBGMは洋楽だから何歌ってるか分からないけど、新垣さんのイメージにピッタリのイカれたヘビメタだし、なんだか途中から高速 込み出して機嫌も悪くなってるけど、ほんとメッチャ楽しいわ〜!!
「着いたぞ?降りろ」
ふあ?
肩を揺すられて起きると新垣さんが呆れたように見てた。
「寝る子は育つんだろうな?」
「…それは身長の話ですか?」
叶うことなら育ってほしいよ!!
のそのそと車から出ると太陽の眩しさに目が眩む。
昨日は興奮しすぎて寝れなかったからな〜。
失態、失態(泣)
「ん?ここは?」
辺りを見渡すと、移動販売の車が処狭しと並んでた。
「この前テレビで見たんだよ。オフィス街の一角にある人気の移動販売」
そう言うとスタスタと賑やかな輪の中に入っていく。
ロコモコにハンバーガー、タコヤキからスープカレー。
色んなお店がある。
「とりあえず端から食ってくか」
「は、はい!!」
新垣さん、お目目がキラキラしてますね(笑)
「お前なんにする?」
「あ、じゃあ、和風トンコツで」
「じゃあ俺これにしよ」
そう言って手際よく注文して商品を受けとる。
「そこの花壇で食うか」
二人で寄り添いながら座って食べる。
「んま!!濃厚なのにくどくない!!」
「どれどれ?」
ぎゃっ!!
新垣さんがアタシのトンコツに箸を突っ込んできた。
「お、ほんとだな。うまい」
わ、わ〜(泣)
「こっちのキムチ味も旨いぞ?」
そう言って自分のカップを差し出してきた。
え、ええ!?
ほれほれと言わんばかりにカップを揺らす。
あわわわわ(泣)
パニックになりながらも自分の箸を突っ込む。
パクリと食べると、舌を刺激する辛味が広がる。
「うぐっ!!ごほっごほっ!!」
「お、おい(笑)大丈夫か?」
新垣さんが笑いながら背中を叩く。
「か、辛いの、苦手です〜」
「ガキだな(笑)」
そんなやり取りをしながら、もう一軒もう一軒と目新しい料理を攻略していく。
そのたびに一つを二人でシェアするように分けあって私の心臓は爆発しそうなくらいドキドキしていた。
一通り回ると、お店も片付けに入りだす時間帯になっていた。
「神楽、ちょっとここで待ってろ」
「あ、はい」
なんだろうと新垣さんを目で追うと、片付けをしている店主に声をかけた。
おもむろにポケットから何やら出して店主に渡していた。身ぶり手ぶりを加えて話した後、軽く会釈をして次の店に行って同じ事をしていた。
何軒か回って、満足そうな顔で新垣さんが帰ってきた。
「何してたんですか?」
「ん?営業」
営業?
「まぁ、あれだ。次の一手を打っとかないと客足に響くだろ?」
「次の一手?」
「屋外で売ってる串焼き屋がな、この夏で撤退するんだよ」
「ありゃ」
「そこに今話題の移動販売のワゴンが入ったら面白いだろ?」
「確かに!!」
「ああいうのは曜日で契約するから日替わりで楽しめる。リピーターの多いウチとしては悪くない条件だろ?」
「確かに!!」
わ〜!!そう考えると、さっきメッチャ美味しかったのが仕事中お昼に食べれたら嬉しい!!
「向こうも場所探しに苦労してるらしいからイイ返事がもらえそうだ」
「わ〜!!やりましたね、新垣さん!!」
「おう!!お前が一緒に来てくれて助かったよ。さすがに一人では食いきれんからな!!」
……は?
「あと、金のことは気にするなよ?経費で落ちるからな!!」
……え?
これって、デートじゃなかったんですか?