最初の町について
特に何事もなく町に着きました。
いや三日間さまよったわけじゃなく魔王様のところに物資を運んでいた馬車に遭遇して乗せてもらったというわけです。
魔族側の馬は丈夫で速いからね。
まえに速さだけなら最強と言われた獣人プレイヤーがあっさり魔族の馬車に置いてかれていたから。
わかりやすく言うと弓矢の攻撃よりも早いしサラマンダーよりずっとはやーい。
おかげで一日で街につけた。
もちろん馬車で移動中ぼーっとしていたわけではなくいろいろな確認をしていた。
例えばログアウトができるかどうか、ステータス画面は見れるのか、そもそもメニュー画面が開けるのか。
全部無理でした。
唯一わかったことというと今来ている服はゲーム中俺が好んできていたものであること、所持していたアイテムや金は全て異次元空間にしまわれていて取り出し自由であること、そもそもセカンドワールドの人たちはレベルという概念を知らないということくらいだった。
アイテムに関しては (俺の所持品どうなったんだろ、お気に入りだったあのナイフとか……)って想像した瞬間目の前の空間が歪んでそのナイフが出てきた。
メニューはどうやっても開かなかった。
レベルに関しては御者のおっさんにさりげなく聞いてみた。
その時は
「おっさんレベルってどのくらい?」
「レベル?なんだいそりゃ」
「強さの基準みたいなもの」
「初めて聞いたね、うーん狼の群れなら勝てるくらいかな」
という当たり障りのない会話が済まされた。
今事からレベルの概念すらない人たちに、亜空間から物取り出すの見られたらやばいと考えて上着の内ポケットから出すふりをして1000Sを出し、おっさんにお礼として渡しといた。
1000sとはセカンドワールドの金で、S=シルフ、一般市民の平均月収が5000くらいなのでなかなかの金額だった。
おっさんは最初遠慮したが腐る程あるからといって無理やり握らせて逃走した、あのままだと互いに話が進まなかっただろうから。
それに実際腐るほどある、というか無限にある。
ゲーム中のイベントで【成金趣味のつきない遺産】という物があった。
このイベントはクリア可能人数一人という条件で、配信開始直後から一度もクリアされることがなかった。
というのもイベントを進めていくうちに遺産は月にあるということが判明し、月に行くための手段が少なく、帰ってくる方法も皆無、また月にとどまる方法も無いのでクリア不可能とされていた。
そのぶん報酬雨は文字通り【つき(月)ない遺産】深夜0時、その日のうちに使っただけの金額が自動的に補充されるというものだった。
ちなみに俺のクリア方法は風系の魔術で飛ぶ、友人に頼んで物理攻撃でさらに打ち上げてもらう、宇宙空間でリスポンポイントを決定、魔力を空気に変換、その勢いで月まで行く、その間血液が沸騰、1000回ほど宇宙空間でリスポン、【害無効】の元の一つ【宇宙空間適応】取得により血液の沸騰が収まる、同じく【害無効】の元の一つ【無呼吸生存可能】取得、宇宙に対応してイベントクリア。
本当なら技術力を上げてロケットを作るという手段をとって欲しかったとごじつGMに言われたのはいい思い出。
そういうわけで俺は今宿屋を探して放浪中。
魔王様の収める領地だからと意気込んで白に乗り込んで大暴れする阿呆がゲーム時代に沢山いたが、魔王様といっても魔族の国家を収めるというだけだ。
どうにもゲーム配信開始の初期段階では魔族、獣人、エルフ、妖精、人間、など百を超える種族どうしでの交流はなかったらしいが先人たちがレベル上げすらおろそかにして種族間の交流に力を入れた結果今の光景があるそうだ。
それはトリップしても変わらないらしく街の中では魔族と人間が、妖精と獣人が、仲良さげにしている。
仲良きことは美しきかなとはよく言ったものだ。