プロローグ
「おめでとう、君はほかの人では到達できないところまで上り詰めました。その後褒美をあげましょう」
いきなり現れた男……ゲームマスターが俺にそう語りかけてきた。
ゲームマスター、通称GMとは主に製作者並びにスタッフがNPCやFAQなどでは解決しきれない問題の対処、バグの早期発見、その他マナー違反などの対処などのために特殊なアバターを用いてプレイヤーを見張りつつ時に手助けしてくれる存在だ。
俺はこの時死亡数カンストで何か特別な称号でももらえるのかな、などと軽く考えていた。
甘かった。
「君にはこの世界で暮らす権利とアバターの持つ能力をあげよう」
その時は全く意味がわからなかった。
しかしGMはそんなことはお構いなしに俺に手を向け……気がついたらGMは消えていた。
そして違和感を感じた、今装備している質のいい服の感覚がある。
地面に立っている感覚、体重を支えている重量感がある。
日差しの熱、風が頬を撫でるこそばゆさ、頬を抓る痛み……全て先程までとは別物だ。
正確に言うと《セカンドワールド》で痛みを感じることはできるがそれ以外の感覚はほとんど無いに等しい。
互換こそ発揮されるが、触覚に関しては痛みと快感以外は基本的に反映されない。
というのも流石にPCの負荷がひどいらしい……と噂されている。
しかし今ならわかる、このトリップが本物だと実感させるために機能を抑えていたのだと。