厄介なイベント
ギルドの帰り道、俺とレンは観光の意味も込めて商店街をぶらぶらしていた。
一応城下町ということもあってここはとても栄えているし広い、それに合わせて人口も増えるため商店の数も多くなっている。
そのためすべてを一日で見て回ることはできないので目星をつけて廻っていた。
そして、半分位観光を終えた俺たちは休憩のため広場で簡単につまめるものを買って適当に話をすることにした。
「なんで俺に体を許したんだ?」
ふと気になって聞いてしまった、後悔はしていない。
ゲーム時代から付き合いがあったしリアルでもオフ会の後からはちょいちょい遊びに行くような関係だったが特別な関係ではなかった。
なのにこの世界に来てすぐに、再開したその日のうちに俺と床を共にした。
ゲーム時代は身持ちは硬かったと思っていたし今でもそう思っている。
「デリカシーがないなぁ、街中でそんなことを自分の婚約者に聞くかい?」
婚約者……我ながら随分と過程をすっ飛ばしたとは思うがこればっかりはどうしょうもない。
意思のある高性能AIが使われているとは言え先日まで壁や木といった決して意思疎通のできない存在だった街の人々、彼らの人格もあくまでプログラムに過ぎない物だったのにそれが今日に至っては本物の人間となってしまった。
いくら何でもすぐには受け入れられないし、今までの常識が一切通用しないところにたった一人で来てしまったんだから寂しくもなる。
そんなときに知り合いに会えて愛おしくなってしまい、自分だけのものにしたくなるなんてのは致し方ないことだろう。
「その通りだね、私も一人ぼっちで寂しかったのもあって君に再会できて気が抜けてしまったんだろう。そんな気が抜けた好きに君に落とされてしまったみたいだよ。」
「俺いま言葉にしていたか?」
「ん?あぁごめん。これナイトメアのレベルカンストスキル【リードブレイン】の効果、名前の通り相手の考えが読めるんだ。なんか難しい顔していたからね。ごめんね?」
レンガ首をかしげて謝ってきた、可愛い。
そんな仕草されたら許すしかないじゃないか。
でもあまり人の心は読んで欲しくない。
「残念なことにそれが難しくてね……誰か一人に対象を絞ってないと、私の場合この国の全ての人の考えが頭に飛び込んできちゃうから辛いんだ」
「それで俺だけを対象にしてほかの人からは読まないようにしていると?」
「うん、べつに複数の人を多少にすることもできるけどひとりを対象にする方が負担が軽いんだ」
「負担で言うなら今まではどうしてたんだ?俺みたいに誰か一人を対象になんて訳にはいかないだろ?」
「スキルを解除すればいいに決まっているじゃない」
とてもいい笑顔でそう言われた。
あぁなるほど、俺はからかわれていたらしい。
次やったらえっちな妄想をしてやろう。
「私で妄想するのは構わないし実行してくれてもいいよ、でもほかの女で妄想したら……ねじ切るからね」
「どこを!?」
「もちろんアヒトのアイボウをね」
アイボウ……ね、字は気にしないでおこう。
ちぎられても俺なら回復しそうで怖いけど。
「と、とりあえずそろそろ観光再開するとしようか」
「そうだね、そろそろあっちのほうにあるお店の探索でもしよう」
そういって立ち上がった時だった。
「見つけだぞクソガキ!!」
後ろから肩を掴まれた。