悪夢の始まり
「アヒト?」
そう話しかけられて振り向いてしまった。
アヒトというのはセカンドワールドでの俺のハンドルネームだ。
「やっぱりアヒトだ」
その声は心なしかはしゃいでいた。
そして俺はこの声の主を知っている。
今目の前にいる少女、レンはセカンドワールド時代の親友にして宿敵だった。
「「なんでここに?」」
はもった、いやまぁ気持ちはよくわかるし理由もわかるよ。
絶対あのGMのしわざだってのはよくわかる。
でも言っておくべきだとも思った。
「「GMにやられた」」
またはもった。
やはりこいつとは気があう。
「やっぱりか……俺は痛覚on死亡数カンストで他人のたどり着けないとこまで来たからご褒美とか言われた。お前は?」
「あのどM健康法まだやってたんだね……私は交配数カンストで同じようなこと言われた。」
どM健康法とか言ってるけどただの自殺です、太陽に特攻する健康法とか何それ怖い。
そして、交配ということから分かるようにこいつは例の魔王。、つまりモンスター。
誰も男とは言ってないですよはい。
女の子のアバターで現実でも女の子。
オフ会で何度か話したけど腹黒いいい子だった、見た目もアバターに似て可愛かった。
今更だけど俺やレンはアバターの姿でここにいる。
俺は魔族特有の黒髪黒目、つまり日本人のそれと大差ない感じで、レンは茶髪赤目、赤目はナイトメアの証で茶髪は一般的な色。
ついでにナイトメアは現存するのはレンだけだしまともに人の前に姿表さないからバレない。
「それで?」
「それでとは?」
「このあとどうするか考えてる?」
「ギルドに登録して、手柄立てて家買ってのんびりニートでもと考えてる」
「協力するから養って」
思えばゲーム時代もこいつにはよくこうやって頼み事をされた。
街に連れて行ってだとか初心者向けの狩場を教えてだとか、どちらも人を襲うためで危うく俺が裏で手を回したと思われるところだったけどその時はうまく逃げた。
とにかくこいつの頼みをまともに聞いたらろくなことにならない、けど断ってもろくなことにならない。
以前、街に連れて行くのを断ったら俺がセカンドワールド内で購入した家を【蜘蛛の毒糸】というモンスターの攻撃でぐるぐる巻きにされた。
俺の場合その当時すでに毒は効かなくなっていたが家の中にあった本や食べ物は腐ってしまって抗議に行った。
スライムと蜘蛛に身体の末端から食われた。
いくらなんでもあの死に方は最悪だった。
麻痺らされて、でも痛覚と意識はそのままに食われるとか……囲碁俺はこいつの頼みごとを断れなくなった。
「養うのは構わないし協力してくれるならぜひ頼む、けど一般人を殺すなよ、ここはある意味現実なんだから」
「りょーかい、じゃあ早速宿屋に泊まるお金をチョーダイ」
「いや、お前俺が泊まってる宿屋にこいよ不安だから」
それはもうあらゆる意味で不安だ、見た目美少女なこいつは変な奴に絡まれるかもしれない、そうするとそいつらは地獄への片道切符を配られる。
そうなったらどこからこいつがモンスターとバレるかわからない、そして俺との関係がどこからバレるかわからない。
だから監視することにする。
「それって……一緒にいたいってこと?」
何かフラグが立ったきがする、」モンスターとの恋愛か……モラル的にどうなんだろ。
「監視したいってことだ」
「そっか、ずっと見ていたいってことなんだね」
俺はこいつのこういうポジティブなところが好きだけど苦手だ。
俺にはないものだから。