プロローグ
《セカンドワールド》、世界で最も有名なオンラインゲームの名前だ。
このゲームは数世代先の技術が導入されており、噂では宇宙人が開発に関わっているのではないかとも言われている。
というのもこの《セカンドワールド》、なんとVRとBDCというシステムが有り……わかりやすく言うと実際見て聞いて話して触ってができ、コントローラを使わず実際に身体を動かす容量で操作するというものだ。
ぶっちゃけて言うとこれが有名になった一番の理由であり、さらにその自由度は従来のものが束になっても勝てないほどであった。
ゲームのタイトルのとおりそこは第二の世界で、丸い大地に果てしなく続く宇宙、そこの知れない海に果ての知れない草原、さらにNPCには個々に高性能AIが搭載され感情を持って行動している。
そんなどう考えてもありえない技術力に合わせ、プレイヤーの生き様すら自由に選択出来てしまう。
あるものはギルドに登録して冒険者に、またある者は畑を耕して農民に、またあるものは魔法の研究をする学者に、またあるものは王に取り入って貴族にと十人十色の第二の人生を送っている。
発売当初は様々な問題について専門家の意見なども踏まえて議論されていたが、最近ではそれもなくなりつつある。
なぜならば生活の基盤がこちらに移りつつあるからだ。
例えば学校、一時間の道のりを汗水たらして学校に、その後睡魔との戦闘を片手間に授業を受けるよりも《セカンドワールド》で授業を行う方が良いと判断した者が実際に行い、結果を出してしまったため現在の学業は基本的にこちらの世界で行われる。
また仕事に関しても商談などはこちらで行われることが増えた。
それどころか夜の営み、まぁつまりセックスなども《セカンドワールド》には導入されており、避妊の必要もなく風俗なども性病に危険がないということからこちらに拠点を写した。
また、ある意味で男女の性別の垣根がなくなったと言える。
というのも《セカンドワールド》はキャラクタエディットで自由に自分のアバター、つまり分身体を作り出せるため男が女性アバターを使って風俗嬢になるなんてこともあった。
現在のところこの《セカンドワールド》で大きな事件は何一つ起こっていない、大きな事件は何一つ。
要するに小さな事件は山ほどある、先の風俗嬢として働いていた男に、本気で惚れ込んでしまった客がいてカミングアウトされた際勢い余って刺してしまったり(もちろんゲームの中で)、あまりにリアルすぎて寝食を忘れて病院に担ぎ込まれそうになったりなどがその最たる例だ……いやまぁ病院に担ぎ込まれる前にご近所さんに救出されたそうなのでそこまで大した事件じゃないよね。
さてさて、まぁそんな話は置いといてだ。
俺はなんの手違いがあったのか、GMなるものにこの《セカンドワールド》なる世界にトリップさせられてしまったというわけだ。
本当にどんな手違いなんだよ。