究極体
「ふはははははは!!とうとう無敵魔法の開発に成功したぞ!!」
テンプルと言う名の男は代々続けていたとある魔法を自分の代で完成させることができた。
「御師匠!さっそく使ってみましょうにゃ!」
「究極魔法、弱点分離擬人化!!」
テンプルの体から膨大な魔力が発散され、七色に輝く!
テンプルを師匠と呼んだニャンミはきゃいきゃいはしゃいだ。
ゴゴゴゴゴゴゴ
濃厚な魔力の奔流は目に見えるほどで、テンプルを中心に渦を作った。
らせん状に広がる光は、ニャンミの隣の空間に収束していき、徐々に何か形作っていく。
「うにゃ、まぶしい」
発光する魔力がニャンミの隣で大きくなっていき、その大きさに比例し光の強さを増していく。サングラスをかけてその様子を見ているテンプルはその形が予定通り人の形になって行くのを眺めていた。
「どのような形になるかは、魔法の効果が終わるまでわからぬが、上手く行ったことだけはわかる。」
そう言うやいなや、光は一気に消えて、裸の少女がそこに現れた。
「おおー女の子だにゃー。でもこれが師匠の弱点なのかにゃ?」
「そうだ、こいつが私のありとあらゆる弱点の化身。」
「んやー?師匠に女の子を見せると師匠やられちゃうのかにゃ?」
「そんなわけあるか。この姿をとったのはたまたまだよ!!これは、生命のありとあらゆる弱さ、ダメージを負う事、寿命があること、病気になること、へこたれること、生きている上で付き纏うあらゆる弱さを術者から分離して無敵になる魔法なのだ!」
「なんども聞きましたにゃ!で、師匠はもう無敵なんですかにゃ?」
「もちろんだとも。さあ、そこの剣で私を切り殺してみたまえ!!」
「にゃにゃ?!本当にいいのかにゃ?死んでも蘇生魔法は使えないがにゃ」
「つべこべ言わずにやれ!!」
「ではいきますにゃ!」
ズガアッ!
「にゃにゃ!?」
「どうだ、言った通りだろう。」
切りつけようとしても刃が体に当たらない。テンプルが避けている様子も、ニャンミがわざと当てないようにしているわけでもなかった。
「それだけじゃないぞ、飯は食えるが餓死することも太ることもないし、年老いることもない。呪いで死ぬことも魔法で焼き殺されることももうないのだ!」
「にゃにゃ、すごいにゃ!師匠の言っていたことは本当だったのにゃ!」
二人の会話を茫然と眺める少女が居た。
「そういえば、御師匠。この女の子はどうするのかにゃ?」
「ふむ。これは私の弱点だから切り殺せば弱点が無くなる…というわけでもないんだなこれが。」
「にゃ?!ひょっとして、この子が御師匠の弱点なのかにゃ?」
「いや、確かかに弱点で出来ているがこの子が殺されたところで私が死ぬわけではない。ただ、私に弱点が戻ってくるだけだ。」
「つまり、この子が生きている限り御師匠は無敵でいられるということかにゃ?」
「ニャンミにしては飲み込みが速いな!正解だ。だから、私が好きかって生きる為にこの子を生かしておかなければならない。」
「この子は見た目通りの子なのかにゃ?」
「うむ。人間と同じだ病気にもなるし、食事もしなければならないし、大して強くもない、普通に生活させる必要がある。死んでしまったらまた同じ魔法を使わないと無敵になれないからな。」
「そうなのかにゃ!でも師匠それ最強すぎるにゃ!たとえこの子が死んでも又同じ事ができるにゃら、師匠を害することはほとんど不可能にゃ!」
「その通りだ!が、この魔法は私の膨大なMPをもってしてもいくつかの補助MPを使わないといけないぐらい大量の魔力を使うから、そうそうやすやすと何度もできるものでもないのだ。魔力の回復も私程最大値が大きいと時間がかかるからな。全開になるまでは」
「さぶい。」
「にゃにゃ、女の子寒がっているにゃ!このままだと風邪ひいちゃうにゃ。」
「おっと、こんな可憐な女の子を裸のままで置いておくなんて、私とした事が。私は女物の服は持ってないから、ニャンミの服を持ってきてくれ。見たところ同じぐらいの背丈だしな。」
「分かりましたにゃ」
そう言うとニャンミは、コットンの下着と赤いワンピースを持ってきた。
「なんですか、このパンツ、お尻のところ穴があいているんですが」
女の子は不満そうにニャンミに貰ったパンツを広げた。
「にゃにゃ、私は猫族だから尻尾があるにゃ!しっぽを通す穴がないと着れないからしかたないのにゃ!がまんするにゃ」
そう言うと、女の子はしぶしぶ下着を身につけて、ワンピースを着た。
「私の弱点を抽出した魔法生物とはいえ、人の服を着れば可愛いもんだな。名前でもつけるか。」
「にゃにゃ!可愛い名前を付けるにゃ!御師匠、私につけさせて欲しいにゃ!」
「いいぞ。」
「ニャッキーというのはどうにゃ?」
「いやです!」
女の子はきっぱりと断る。
「にゃにゃ、どうしてにゃ?わがままにゃ!」