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第6話

――前回のあらすじ――


異世界での初めての朝を迎えた仁は、改めて自分の「余命一年」という病状が変わっていないことを痛感する。

王女キュアに連れられて向かった訓練場で、メイドのセラピーから厳しい洗礼を受ける仁。

病弱な自分には無理だと弱音を吐くが、キュアは「おぬしならできる」と強い確信を持って告げる。

それから、地獄のような修練が始まった。


「腰が入っていません!」


「足を止めないでください、死にたいのですか!」


「もう一度です!」


セラピーの怒号が飛び、仁は何度も木剣を振るった。


腕がちぎれそうなほど熱く、足は生まれたての小鹿のように震える。


肺が焼け付くように熱くなり、呼吸をするたびに胸の奥がズキズキと悲鳴を上げた。


「はぁ……はぁ……っ!」


ついに膝をつき、荒い息を吐く仁。


視界がチカチカと火花を散らす。


病気のせいか、それとも単なる過労か。


自分でも判別がつかない限界の淵で、キュアがゆっくりと歩み寄ってきた。


「もう終わりか? 異世界の客人は、これしきのことで根を上げるのかえ?」


「……まだ、やれる」


仁は震える足に力を込め、再び立ち上がった。


不思議だった。


日本にいた頃は、何に対しても無気力で、ただ終わるのを待つだけの日々だった。


なのに、この理不尽なまでの修行を、なぜか拒絶したくない自分がいる。


キュアはそんな仁をじっと見つめ、小さく微笑んだ。


「……よい目じゃ。昔、おぬしと似た目をした者を知っておる」


「誰のことだよ。君の元カレか何かか?」


「ふん、そんな俗なものではないわ」


キュアはふいと顔を背け、城の向こう、雲を切り裂くようにそびえ立つ巨大な山を指差した。


「仁、あの山が見えるか? あれが『星祈峰せいきほう』じゃ」


その言葉に、仁の心臓が大きく跳ねた。


「……願いを叶える山、か」


「そうじゃ。山頂に辿り着けば、どんな願いも叶うと言い伝えられておる。……ただし、自分のための願いは叶わず、必ず代償を払うことになるがな」


仁は、遠く霞む霊峰を見つめた。


胸の奥が、熱い疼きを上げる。


子供の頃、日本の『星願山』で祈ったあの日の記憶が、鮮明に蘇る。


幼馴染のために、自分の何かを差し出してでも救いたいと願った、あの無力な夜。


「いつか、登るか?」


キュアの問いに、仁は少しの間をおいてから、静かに首を振った。


「……いや。願いなんて、もうないよ。俺の人生は、もうすぐ終わるんだから」


「本当に、そうか?」


キュアの声は、見透かすように優しく響いた。


仁は答えず、ただ遠い山嶺を見つめ続けた。

次回は本日19時に投稿します!!

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