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第13話

――前回のあらすじ――


夕闇に包まれた裏庭で、仁は胸の奥に秘めていた「元の世界」の記憶を語る。


それは、病で逝った幼馴染との果たせなかった約束。


失うことの痛みを知る仁の独白に、キュアは静かに、そして深く寄り添う。


「……仁。その幼馴染のこと、好きだったのか?」


問いかけるキュアの瞳に宿る切なさと、突如として仁を襲う心臓の激痛。


余命一年のタイムリミットが刻一刻と迫る中、仁はキュアの面影に、拭いきれない既視感を抱く。

静寂に包まれた夜の王城は、昼間の喧騒が嘘のように穏やかだった。


廊下には等間隔に魔法のランプが灯り、柔らかな琥珀色の光が、磨き抜かれた床の上に長い影を落としている。


河西仁は自室のベッドに身を横たえ、高い天井を見つめていた。


「……眠れないな」


昼間の荒行とも言える修行で、体は鉛のように重いはずだった。


それなのに、意識だけが妙に冴え渡り、まぶたの裏にはあの金髪の少女の残像が焼き付いて離れない。


「……キュア」


名前を口にすると、胸の奥がわずかに疼く。


傲慢で、勝気で、けれど時折見せる年相応の幼さと、深淵のような慈しみ。


「……本当、変な奴だよな」


独り言に、自然と苦笑が混じった。


その時だった。


静まり返った廊下から、微かな物音が聞こえてきた。


――コソコソ……。


忍び足のような、遠慮がちな摩擦音。


仁は不審に思い、ゆっくりと体を起こして扉を開けた。


すると、廊下の角を曲がろうとする小さな人影が目に飛び込んできた。


月光に透ける、見覚えのある金色の髪。


「……キュア?」


その瞬間。


「ひゃあぁっ!?」


情けない声を上げて、少女がその場で飛び上がった。


弾かれたように振り返った彼女の顔は、驚愕で引き攣っている。


「な、なな、なぜ起きておるのじゃ!?」


「それはこっちのセリフだよ。主様」


仁は呆れ顔で腕を組んだ。


「こんな時間に、忍び足でどこへ行くつもりだ?」


キュアは明らかに動揺し、視線を泳がせている。


「な、なんでもない! 散歩じゃ、ただの夜風を楽しみにおっただけじゃ!」


「散歩にしては、その腕に抱えてる袋が怪しすぎるだろ」


仁が鋭く指摘すると、キュアはハッとして自分の腕の中を隠すように抱え込んだ。


だが、袋の中からふわりと甘い、香ばしい匂いが漂ってくる。


仁は一歩踏み出し、中身を覗き込んだ。


「……焼き菓子? 昼間の屋台のやつか」


キュアの顔が、一瞬で耳まで真っ赤に染まった。


「ち、違う! これは……その……」


しばらくの間、消え入りそうな声で口籠もっていたが、やがて観念したように肩を落とした。


「……夜のおやつじゃ」


「王女様が、夜食のつまみ食いかよ」


「王女じゃからこそ、楽しみが必要なのじゃ!」


彼女は開き直ったように胸を張った。


だが、頬はまだ林檎のように赤い。


「昼間に食べると、メディシナが『糖分の摂りすぎです』と、うるさく叱るのじゃ。あの者、わらわの健康管理には鬼のように厳しいからの……」


「ああ、おつぼね様は怖いよな」


「そうじゃ。王女というのも、不自由なものなのじゃぞ」


キュアは観念したように、廊下の広い窓際に腰を下ろした。


――次回公開――

3/20(金)22:30〜



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