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第1話

初めてこのサイトに投稿します。どうか

温かい目で見てほしいです。

病院の天井は、どうしてあんなにも白く、そして冷たいのだろう。


視界を覆うその無機質な空白を、規則正しい機械音が刻んでいく。


――ピッ……ピッ……ピッ……。


河西仁は、ぼんやりとその音を聞いていた。


消毒液の匂いが鼻をつき、肌寒い空気が肺を冷やす。


鼓膜の奥には、先ほど告げられたばかりの医師の声が、ひたひたとよどみのように残っていた。


「……河西くん。落ち着いて聞いてほしい。君の病気は、予想以上に進行が早い」


静かな宣告だった。


医師の眼鏡に、診察室の蛍光灯が白く反射する。


「今の医学では、完全な治療は難しいのが現状だ。……正直に言うと、余命は長くて、あと一年ほどだろう」


あまりに淡々と、事務的に放たれたその言葉は、かえって現実味を奪っていった。


余命一年。それが、僕の人生に残された砂時計のすべて。


普通の高校二年生なら、泣き叫ぶか、あるいは質の悪い冗談だと笑い飛ばしたかもしれない。


けれど、仁の口角から漏れたのは、乾いた吐息のような笑みだけだった。


「……そうですか」


医師は何か言葉を探していた。同情か、慰めか、あるいはもっと残酷な真実か。


だが仁は、それ以上何も聞かなかった。聞いたところで、細胞の反乱が止まるわけではない。


そもそも、仁は――「失うこと」に慣れすぎていた。


十年前、まだランドセルが大きく見えた頃、両親を交通事故で失った。


そして、たった一人の幼馴染も、数年前に同じような病室で、静かに息を引き取った。


それ以来、仁の世界からは色彩が失われ、常に「静寂」が隣り合わせだった。


彼にとって「死」は恐怖の対象ではなく、ずっとそこにある日常の一部に過ぎない。


「……短いな」


帰り際、独り言がこぼれた。それだけだった。


その日の夜、仁は逃げるように病院を後にし、借りている小さなアパートへと戻っていた。


玄関を開けても、迎えてくれる明かりはない。一月数万円の静寂がそこにあるだけだ。


コンビニの袋をテーブルに置き、カップ麺に熱湯を注ぐ。


三分。


いつもなら気にも留めないそのわずかな時間さえ、今は酷く残酷で、気が遠くなるほど長く感じられた。


「……余命一年、か」


湯気の向こうで、仁は自嘲気味に笑った。


「俺、まだ高校二年生なんだけどな。まだ、何もしてないのに」


普通の奴らなら、今頃はテストの点数に一喜一憂したり、誰かに恋をしたり、不確かな未来に胸を膨らませたりしているはずだ。


だが、仁の未来は、すでに一年の短さに剪定せんていされてしまった。


いや、正確には――最初から、何もなかったのかもしれない。


仁は重い腰を上げ、窓を開けた。


夜風が火照った頬をなでる。視線の先には、町の外れに座する小さな山が、夜の闇に溶け込んでいた。


名前は――星願山せいがんざん


この町には、古くからの言い伝えがある。


山頂に辿り着けば、どんな願いも叶うという。


ただし、自分に対する願いは叶わない。


そして、必ず相応の代償を払うことになる。


子供の頃、一度だけ登ったことがあった。


自分のためではなく、病床で「外に出たい」と泣いた幼馴染のために。結局、彼女の病気が治ることはなかったが。


「……今さら、何を願えっていうんだよ」


もうすぐ幕を閉じる人生に、未練なんてあるはずがない。


伸び切ったカップ麺を胃に流し込み、泥のような疲れに身を任せてベッドに倒れ込んだ。


「……もしも」


天井を見つめたまま、音にならない声が漏れる。

あり得ない仮定。


子供じみた空想。


それでも、意識の端っこで、小さな火が灯る。


「もしも、もう一度だけ、人生があるなら。……俺だって」


その先は言葉にならなかった。


意味のない祈りを振り切り、仁は深く目を閉じた。

第2話は3/18 20時に投稿します!!

次回はヒロイン登場!!

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