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泡沫の恋  作者: 雨宮 桜
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別れと出会い

 「美海‼先に人間界で頑張るのよ‼」


「分かった‼渚が人間界来たらまた会おう‼」


別れを惜しむ時間はそう長くはなかった。まぁ、今後会えると考えるとこれぐらいがベストな別れってものなのだろう。


「美海、陸に上がったら大学の理事長が迎えに来てくれてるからソイツの話をしっかり聞け。それと、今後水辺に行くなよ。ヒレ戻るから。気を付けろ。」


「なんで、大事なことを今言うんですか?この間私を呼び出したくせに……」


よくこんな適当な人魚で教師になれたものだ。普通ならもっとしっかりしたのに任せるべきだったろうに……


「それでは4年後に帰って来るので‼」


陸に上がると体験したことも無いくらい綺麗な風景が広がっていた。海の景色は中からしか見たことがなく、私の視界には一面の夕日に照らされキラキラと穏やかに反射する海が見えた。


「お嬢さん~悲しいことでもあった?オレ相談乗るよ?」


海を眺めていたら、変な男に絡まれる羽目になった。此はナンパと言うものだろう。人魚でも人間でもナンパという概念が有ることに驚きを隠せない。それにしても、距離詰めすぎだし、なんで腰に手を回してんの?


「あの……やめ……」


「あぁ?」


ダメだ……この人怖い。"やめて"なんて言ったら殺されちゃう。私の肉狙い?不老不死になろうって?どうしよう。やっぱり、人間なんか……もう、海に戻りたい。


「おい、ソイツ嫌がってるだろ。離せよ。」


「うっせーな。お前に関係無いだろ。」


「なになに~海。うぉっ‼可愛い娘と……うわぁ~最低おじさんだー。」


「おい、クソガキ。最低おじさんだと……?おじさんじゃねーよ」


「おじさんじゃ無いのにこんなクソダサいことしてんの~?」


「おい、金髪のガキ。一回殴らないと分からないみたいだな」


「おい、やめろ」


何やら救世主が現れたようです。顔が整った2人の男性。一人は、チョコのような茶色の瞳に、金髪の男性。一言で言うならチャラ男。もう一人は吸い込まれそうな黒い瞳に、濃い青の髪の毛。言い表すなら夜の海って感じの頭。その人は海と呼ばれていた。その人が、先ほどのナンパ男を殴ってしまいました。


「もう、海~やり過ぎやり過ぎ~おじさん伸びちゃったじゃんか~僕、お巡りさん呼んでくるから~海はその子よろしくー」


沈黙が続く。初対面の人間、しかもちょっと怖そうな人と話せるわけないじゃん……


「見つけた‼美海ちゃん‼探したんだから‼りっちゃんから話聞いてない?」


「え~っと……」


「あら、ごめんなさい。大宮涼子よ。隣の方は……?」


「あの……」


「じゃ、オレ行くから。あんまり遅くまで出歩かない方がいいよ。お母様も危ない場所には行かないように注意した方がいいですよ。」


仏頂面をしていても私に対する心配をしていることは言葉だけで伝わってきた。海と呼ばれたその男性は背を向けて歩いていった。


「あっ……あの‼助けて頂きありがとうございした‼」


「アレ?海~あの娘は?」


「知らねーよ」


いつの間にか黒髪と金髪の男性は見えなくなっていた。


「私が遅く着いちゃったから何かに巻き込まれたのね。ごめんなさい。」


「いいえ……えっと……」


「涼子でいいわ。」


「涼子さん。」


「じゃ、美海ちゃんの暮らす家に行きましょう。車近くに停めてあるから。」


涼子さんの車は光沢感の有る黒色で、理事長って感じが伝わってくる。それにまさかのオープンカーだなんて……スゴすぎる。


「りっちゃんからは大の人間嫌いって聞いてたけど……そうでも無さそうね。」


「そんなこと言ってたんですか……」


あの教師。海に帰ってきたときはただじゃ置かない。覚悟してろよ。


「涼子さんは……どうして人間に……?」


私に取って一番の謎だった。童話の『人魚姫』もそうだが、人間になる決断をした人の思考が分からない。


「なんでだろうね。人魚でもよかったのよ。寧ろ、人魚であったら想い人とも一緒に居られた。でもね、私このセカイが好きなのよ。」


涼子さんは嬉しそうに微笑みを溢した。本当に今の生活が幸せなんだと分かる。


「家に着くまで時間があるし、少し私の昔話を聞いてみない?」



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