我が名はルイン. 破壊と再生の前触れ
あの日以来、人間、妖精、そして霊たちと世界が一つになったその日から、我々はすべての上に立つ力を確立してきた。私たち亜人族は、他のどの種族よりも強力だ。しかし、あの...悪魔たちが突然現れ、この世界の力の序列を一変させた。彼らの圧倒的な魔力は、我々とはかけ離れている。こんなことが許されるのか!
どうしてこんなに強力な種族が存在するのか?
これは不公平だ!
私はこの状況を変えてみせる!
この秘宝を発動させれば、我々獣人族こそが再び最強になるのだ!
これこそ、私が亜人族のチャンピオンとして果たすべき唯一の使命だ!
獣人族のラロフは、黒装束の男に一撃を加えようとする。しかし、男はその攻撃をいとも簡単に防ぎ、「つまらん」と言い放った。
強化された力でも、この男はまだ俺の攻撃を防げるのか?
ラロフの誇りは少し揺らいだが、深く考えることはなかった。かすかに恐怖を感じたが、それが彼の自信を揺るがすことはなかった。「まだ始まったばかりだ」とラロフは言った。実際には、ラロフ自身がそう言わないと落ち着かなかった。勝てるかどうか分からないが、勝てると自分に思い込ませていた。しかし、相手の一言がその自信を崩した。
「いいだろう、飽きるまで遊んでやる」と男はラロフの腕を払いのけた。
その手は明らかに魔法で強化されており、青い粒子が周りを漂っていた。彼はラロフの顎にアッパーカットを食らわせた。その拳が当たると、魔力の火花が散った。ラロフの皮膚をかすめる魔力の感触があった。
動き自体はシンプルだったが、この男の魔力制御は完璧だった。魔力で強化した拳で打撃を加えるのは比較的簡単だが、打撃時に火花を散らすのは非常に難しい。拳に集中した魔力を放出し、接触時に即座に分散させる必要があるからだ。
これができるのは、魔力を呼吸するかのように操れる者だけだ。
ラロフは男の攻撃を受けながら思った。
俺だってできる!
ラロフはその一撃から立ち直り、同じ技を試みた。まず、自身の体から魔力を集め、右拳をそれで包み込む。黒装束の男とは違い、ラロフの魔力は赤色だった。赤い粒子が彼の拳を覆い、男の腹部に向けて打ち込んだ。
ラロフは、亜人族のチャンピオンとして師匠たちから魔力制御を教え込まれていた。彼は自分も相手と同じことができると思っていた。彼の拳は男の腹部に突き刺さり、赤い火花が散った。
「痛かっただろう?」とラロフは言った。
「ふん」と男は笑みを浮かべ、左拳をラロフの腹部に置かれた右腕に向けて打ち込んだ。動きは先ほどとは異なり迅速で、またもや青い火花がラロフの腕に爆発した。今度の傷は、前よりも深かった。
こんなことがあり得るか!
俺の攻撃が効かないなんて?
どうしてだ? こんなの信じられない!
ラロフは一歩後退し、何が起こったのかを理解しようとした。信じられない状態にあるのも無理はなかった。彼は、世界を暗闇から操る組織の一員だと自称する男と対峙していたのだ。
いや、まだ勝てる!
俺は勝つんだ!
獣人族のラロフは、自分の思考を押し殺し、男との戦いを続ける覚悟を決めた。
男は突然姿を消し、ラロフとの距離を縮めた。またしても、その速度は先ほどとは段違いだった。男は拳を振り上げ、左から右へとラロフの体を狙って打ち込んだ。一撃ごとに、魔力の火花がラロフの皮膚をかすめた。火花はラロフの顔や腕、体に爆発的に広がった。それは明らかに、魔力制御が極めて上手な者だけができる完璧な技だった。
信じられない!
こんなのは理不尽だ!
「お前は何者だ!」とラロフは脇に吹き飛ばされながら、特定の感覚を思い出した。
いつ、こんな感覚を味わったことがあっただろうか? ラロフは、黒装束の男に叩きのめされながら考えた。それは、死の魔王を狩るという失敗した時のことだった。悪魔の最上位を狩ることに失敗した、あの時の感覚だ。
あの時も完全に敗北し、今回よりも酷い惨めさを味わった。この時は太陽と月の杖を使って力を強化することができた。しかし、当時はただの力を持っていると自惚れていた愚かな若者だった。誰もが知る強者と称されていたが、彼はあっさりと倒され、知っている者全員の前で屈辱を味わった。
許せない! 二度と負けるものか!
「あの時は力がなかった。しかし今、俺は強い。いや、俺が最強だ!」とラロフは敵に宣言した。彼は冷静さを失い、敵の前で自分を欺きながら魔力を暴走させた。彼の体から溢れ出した魔力は赤い火花を散らしていた。
「俺は亜人族の中で最強だ。亜人族のチャンピオンの中でも最強だ。世界で一番の強者だ!」
「自分の強さを誇示すること。それは本当の強さを示す方法ではない。むしろ惨めだ」と男は言った。
「お前に何が分かる!? お前は何者でもない! 誰もお前のことを知らない!」とラロフは叫び、その火花は迷宮の壁を打ち始めた。
「なぜだか分かるか? それは、誰も生き残っていないからだ。語り継ぐ者がいないのだ」
「お前はただの口先だけだ!」とラロフは空気中から消えるように素早く動いた。
「そう言うが、お前は何をしている? 杖を使って力を借りるだけか?」と黒装束の男は言った。
ラロフは再び太陽と月の杖を持ち上げていた。それは彼が必死に再び満月の力を引き出そうとしているかのようだった。
「マスター! 彼がまた力を...」と白髪のエルフが言った。
黒装束の男はただ手を上げ、彼女に静止の合図を送った。
「力よ、来たれ! 力を!」杖から再び光が放たれ、月からさらに多くの魔力が降り注いだ。
白エルフたちは、太陽と月の杖が亜人族の力を元の10倍まで増幅するための条件を記録していた。それはまた、その力を最大限に引き出すには、スーパームーンが発生している必要があるという条件も含まれていた。しかし、今はただの満月だった。杖は、使用者が光の信号を送り続ける限り、無限の魔力を授けることができる。
この行為は禁じられていた。魔力が体を超えて溢れ出し、制御不能な魔力が体内を暴走し、破壊することで死のリスクが高まるためだ。また、近くに市民がいると危険である可能性がある。
しかし、この時点でラロフはそんなことはどうでもよかった。
彼には力が必要だった。それが彼にとってすべてだった。
彼には、この目の前の敵を倒すための力が必要だった。
魔力が彼に降り注ぐと、彼は体が受けた傷が回復するのを感じた。彼は陶酔感に包まれた。不動の意志と自信が彼の体に満ち溢れた。だが、その自信は敵の一言で粉々に打ち砕かれた。
「自分の力でもない力を使って強者と称すること。それは、強者と呼ばれるに値する者たちへの侮辱だ」
「黙れ! お前は誰だ! 俺に何をすべきかなんて言うな!」
「俺はラロフだ! 最強のラロフだ!」
この世界では、勝つか負けるかしかない。
ただ勝つか、負けるかだ。
勝てば強者だ。
負ければ弱者だ。
勝つためなら、どんな手段でもいい。
亜人族のチャンピオンであったラロフは、もはや存在しなかった。彼は力に飢え、錯乱し、完全に力に支配されていた。もはや恥もなく、価値観もなかった。ただ、力だけだ。
「我が名はルイン。 破壊と再生の前触れ。進化のために破壊をもたらす。この力で、お前を消し去る、ラロフ。いや、亜人族の底辺の者よ!」
次回: 視紅最大最強究極の超越の魔術。