死の魔王
あの日、
すべてを奪われた。
私たちのすべてを…
暗闇に生きてきた私たち…
*****で生まれた私たちが…
いや。
物語は終わらない。
いや。
ここでは終わらせない。
ここでは死なない。
生き続ける。
悲惨から始まり、
暗黒で終わる。
そして、闇の中で再生する。
すべてを殺してやる。
+++
カツ、カツ、カツ
銀髪の端正な女性が玉座の間に入ると、足音が響き渡る。扉が開き、閉まる音が広いホールに反響する。彼、すなわち魔王が口を開いた。「なぜ我が眠りを妨げたのだ、ヴァスティウム・ゼータ?」。兜の内側で赤い目が光る。彼が放った一瞥は、精密でありながら、恐ろしいほどの威圧感を伴っていた。
「申し訳ありません、我が偉大なる主よ。死の大魔王様!」ゼータは額を床に押し付け、彼に深々と頭を下げた。彼女の身体は震え、偉大なる主の反応を待ちながら沈黙を保っていた。
「言え、すぐに」魔王は言った。
「お探しの男、オフェリウス地方の指導者、ズアサ・イル・ジクメルを捕らえました!」ゼータは正確な口調で言った。
「白エルフの指導者か。今は地下の牢にいるのだな。」
「はい、我が偉大なる魔王様!どういたしましょうか?」
魔王は何も言わなかった。
「すぐに『荒野』へ連れて行け。」
「かしこまりました、我が偉大なる主よ!」ゼータは最後にもう一度頭を下げ、玉座の間を退出した。
ゼータが魔王の命令を伝えると、召使いたちはズアサを指定された場所、『荒野』へ連れて行った。一体『荒野』とは何かと考える者もいるだろう。これは、死の魔王が自らの基準で裁きを下すために特別に作り上げた拷問室の具現化である。『荒野』は、魔王の命令に応じて形状、環境、温度などを変えることができる。これは彼の領域、すなわち邪悪の領域である。
「ズアサ・イル・ジクメル」
魔王が言葉を終えた瞬間、恐ろしい悲鳴が響いた。
「おいおい。まだ始まったばかりだぞ。」
彼の犠牲者は鎖に繋がれていた。彼女の足は伸ばされ、腕は天に向かって果てしなく続く鎖に縛られ、首には首輪が付けられている。その姿はあまりに無惨で、彼女の容姿を言及する必要すらない。
白エルフの指導者は死の魔王の慈悲に縛られていた。
「弱者のくせに大口を叩くとはな。かつては無敵だと思っていたが」魔王は彼女の首輪を掴んで言った。魔王の悪魔の手は黒紫の粒子を放ち、被害者の肌に触れるとひどい火傷を負わせる。ズアサの悲鳴が『荒野』に響き渡り、魔王は彼女を苦しめ続けた。
「覚えているか?南ジャカ市を?」魔王が尋ねた。
ズアサは息切れしながら答えようとした。「私…私…」
「9月21日の夜を覚えているか?」
「私は…攻撃を指揮していた…消滅させるために…」
「そうだ。人間のテロリスト集団をな。」
「なぜ…なぜそんなことを聞くの?」
「もう一度思い出せ…あの日、何と言った?」
ズアサは突然、9月21日の夜の出来事を思い出した。南ジャカ市では祭りが開かれていた。それは9月21日を祝う伝統行事であり、異種族との平和を成し遂げた日を記念するものだった。しかし、都市の住民のほとんどが人間であったため、この祭りは実質的に人間のためのものであった。
同じ日、人間のテロリスト集団は群衆の中に隠れ、白エルフの追跡を逃れていた。
「仕方がなかった…彼らは私たちからすべてを奪った…」ズアサは言った。
あの日、ズアサ・イル・ジクメルは、自分の軍が捕らえられる限りのすべての人間を捕らえるよう命じた。彼女は、民間人を犠牲にしてでも、テロリスト集団を見つけることに満足していた。
「その日、あなたが何を言ったのか、何をしたのかを思い出して。」
南ジャカ市の民間人は一晩中捕らえられ、ズアサは敵意をもって人質を取り調べた。彼女は老人、女性、そして子供に至るまで、テロリスト集団を誘い出すためにあらゆる手段を使った。
「そして、一人の人物が立ち上がった…」
「やめてくれ!ここにいる人たちはただの貧しい市民なんだ。私たちは9月21日の夜のこの祭りを楽しんでいるだけだ!なぜこんなことをするんだ?」ある男がズアサに強い口調で言った。
「メド!やめろ!彼らは-!」別の男が最初の男を止めようとした。
「お前の話を聞いてやろう、人間。前に出ろ!」ズアサは言い、兵士が最初の男を前に連れて行った。ズアサに歩み寄るとき、男は一瞬怯えたが、兵士が彼の腕に傷をつけたことに気づいた。その手から血が滴っていたが、無視してズアサの前に進んだ。ズアサは微笑みながら腕を上げていた。
「話を聞く前に、答えてくれ…家族はいるか?」
男は困惑した顔で答えた。「はい、います。」
「本当に?家族はどれくらいの人数だ?詳細に教えてくれ。」
男は少しの躊躇の後、答えた。「兄弟が二人…妹が一人、そして両親も健在です。」
「本当に?それはそいつらか?」ズアサは男の前を指差し、5人がエルフの兵士に捕まっていることを示した。
「何だ?何をしているんだ?」
ズアサは微笑んだ。エルフには血を使って系譜を追跡する能力がある。男が血を流すと、その家族が兵士たちによって探し出され、人質にされた。
「私がこれをしている理由を教えてやろう。」
シュシュッ!
男の兄弟の一人が腹部を刺された。
「いやあああ!!!」男が反射的に前に進もうとしたが、ズアサに抑えられた。
ズバッ!
頭が地面に落ちた。それは彼の妹の頭だった。
ズアサは暴れる男を押さえつけながら言った。「アアアアアアアアア!!!」彼は叫んだ。
次は両親だった。兵士たちは足から腕へ、胴体から下へ、そしてついには目に剣を突き刺し、四肢を切り裂いた。
「今の私の気持ちがわかるか?」ズアサは、今や壊れた男にささやいた。
残されたのは彼の弟だけだった。彼は当時7歳だった。この虐殺を目の当たりにし、彼は泣くことしかできなかった。終わることを願っていた。
「二度とそのような口調で私に話しかけるな。お前は弟と共に生き延びるがいい。」ズアサは男を解放した。
男は大声で息を切らし、足元はもう支えられなくなっていた。彼は弟に向かって這い寄りながら涙を流していた。
「弟よ…はぁ…」男が弟に近づくと、涙が溢れ出た。
ヒュンッ
その瞬間、矢が飛び、彼の弟の頭を貫いた。
「兄ちゃん…」
少年は後ろに倒れ、その目は白くなった。
「へへ…ちっぽけな人間め」
ズアサは現実に引き戻された。依然として死の魔王の手の中にいた。
「面白いだろ?」
「ええ…本当に面白かった…」
「お前は、そのちっぽけな人間たちにしたことを後悔したことがあるか?」
「ははは…いや、正直に言えば、ない…」
「ははは、そうか…」
その時、ズアサは何かに気づいた。なぜ魔王はそんな質問をするのか?なぜ彼女に過去を思い出させようとするのか?それはまるで、彼女が何を言うべきか考える前に、何かが彼女を無理やり真実を話させているかのようだった。
「いや…違う…そんなつもりじゃなかった!」
「この世界で、最も試練の時に我々が頼るのは、最も心地よい記憶だ。それがこの世界の自然の法則だ。」
「違う、間違っている…私はそんなことをしたくなかった!私は—」
「黙れ」
死の魔王はズアサの口を切り裂き、血が空中に飛び散った。口がなくなり、彼女の顔には歯がむき出しになり、息を吸い込むたびに音を立てていた。それは大きな音で、彼女の呼吸は煩わしかった。いっそのこと彼女が叫んでしまった方がましだった。
「お前のような者が、今日の私をここに呼び寄せた理由だ。」
「私はこの世界に絶対的な正義をもたらす。」
死の魔王は手を伸ばし、その手に光が包まれた。
「破裂」
ズアサの体から血が噴き出した。彼女の臓器は風船が破裂したときのように飛び散り、死の魔王はズアサの血を浴びた。『荒野』の中では、血が四方に飛び散り続けていた。
カツ、カツ、カツ
『荒野』の中で足音が聞こえた。
白いコートと悪魔の角を持つ人物が現れ、死の魔王の領域に足を踏み入れた。
「ここまでやったのか。これはただの報いだろうな。でも心配するな、また生き返るさ。」