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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
3章 集結、頼光四天王
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【源頼光】頼光、綱から腕を送られる

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

「え? え? ちょっと待って、ほんとに親父が何か仕掛けたの? 昨日の今日でいきなりこうなるのっておかしくない?」


I dont know。怪我してない、ので。臓腑も調べた、デスが、そっちも損傷なし」


「それもそうよね。火車がいるなら怪我で死にかけてるってのはおかしいし……」


 うん、まずは落ち着こう。こうやって頭がごちゃごちゃしてると分かるものも分からないし。


 昨日(みやこ)に戻ったばかりで状況を把握できてないだけで、もしかしたら流行り病が蔓延してるかもしれない……? そう考えると職人さんが病を寄せ付けないみたいなこと言って絵を推しだしてるのも分かるかな? これは茨木ちゃんに何か体にいい食べ物を作ってもらうとか、そういう方向で――……。


「…………ん? 怪我してない? 足にも怪我なかったの?」


「Yes。逆に聞きマスが、足、怪我したなんて聞いた、デス?」


「ええ、昨日親父たちとの話が終わった後、綱と合流したときに血の匂いがして……実際足から血を流して小袴も赤く……」


 そういえばあとで火車に治してもらいなとは言ったけど、怪我自体は見せてもらってなかったわね。そこから何かしら病を……というよりあの言葉が嘘だったってこと?


「うーん……ここであれこれ考えてもらちが明かないわね。とりあえず拠点に行って様子を見てみないと」


Just a moment。私も茨木も、分からない。きっと頼光行っても同じ、デス。In thatれな caseらば、人の多いこっちで、考えた方が効率的、デス」


「はい、従姉上あねうえ。ならばそれがしは屋敷の皆を集めて来るであります!」


「ちょっと待って! 正直親父に知られたら、『綱が死にかけるなど頼光も危険だぁぁぁ』とか言って本気で部屋から出さないとかなりかねないから。一番頼れそうな満季叔父上だけでお願い」


「残念ながら、義父上はすでにこの屋敷を発っているであります」


「なら致公くんだけでいいわ。とはいえ綱の状態が分からないとどうにもならないと思うんだけど、詳しく教えてくれる?」


 聞かれた火車は袖に手を突っ込むと、何か布で包まれたものを取り出した。なかなか厳重に包まれてるけど、それなりに幅のある棒状のものってことは分かる。


「綱に言われて、納屋から持って来たもの、デス。中身、知りません、頼光に見せろと」


「綱は自分の体調不良の原因に気づいてるってこと?」


 その場で開けずにわざわざ私に届けさせたってことは、私なら何か分かるってことよね。火車から包みを受け取り結び目を解くと、緊張しながら少しづつ布をめくっていく。


 そして中身が見えた時、隣からのぞき込んでた致公くんが「うッ」と声を上げた。


「これは、人の腕、よね?」


 触ってみると確かに人の肌の感触。腐ってる様子もないから体から離れてから、まだあまり時間が経ってないかな。見た目と一緒に切り落とされたと思う袖の柄からして、男じゃなくて女のもの。


 そこまでは分かるんだけど、結局どういう意味なんだろ?


「Oh my god。これは、マヤーのLa eMeのやり口、デス」


「はい? どういう意味でありますか?」


「マヤーでは、ケツァルコアトル神が定めた法、国が成り立ってマス。デスが、La eMeと呼ばれる、法から外れた人たちいます。その人たちがルチャの興行などで、八百長促したりするとき、脅迫のやり口そっくり、デス。つまり――」


「つまり?」


「逆らったらお前がこうなるゾ」


「はい。いいえ、火車殿。それは間違ってると思うであります」


 一瞬何か綱に恨まれることしたかなーとか思ったところで、致公くんから反論が飛んだ。


「従姉上が見た時、綱殿の小袴が血で塗れてたのでありましょう? きっとその少し前に反射的にこの腕の持ち主を斬りつけたと思うであります。そのすぐ後に従姉上が戻ったので慌てて小袴の中に隠したのでは? 体調不良もきっとその罪の意識からくるものであります!」


「あ~~~……」


 うん。隠したところまでは物凄く想像がつくわね……。大江山での宴会で熊童子に切りつけた後、茨木ちゃんと私からその癖を直せと言われたのにやらかして、ばつが悪くなったのね。いや、本当にそれが理由ならさすがにいい加減にしろと言いたくなるわ。


 でも罪の意識……罪の意識か~……。そんなものを感じるような殊勝な奴とは思えないのよね~?


「欠損は無理って言ってたけど、こうやって切り落とされた腕を持ち主にくっつけるってことはできるの?」


「No problem。生やすことはできない、デスが、くっつける楽勝。マヤーの医術を用いた手術、一瞬で終わらせる能力、デス」


「え。一瞬で治せるのが特殊なだけで、時間さえかければマヤーという国じゃ誰でもできるってこと?」


Ofもち courseのろん。マヤーの医術、世界一、デス」


 前に氷沙瑪ひさめも言ってたけど、本当にすごい国があるものね。今の言い方なら時間をかけて手術とやらをすることもできるなら、興味持ってた茨木ちゃんをはじめ他の人も覚えようとしてみてもいいかも。


「でもそうなると、こうやって私に腕を託したってことは、この腕の持ち主を治療してくれってことなのかしら? 本当に罪の意識で体調を崩してるのかもね。それは恨みとか怒り以外の人の心が芽生えて来たってことで、昔の綱を知ってる身としてはうれしくなるわ」


「Wait。前提として、腕の主、生きてる、デス?」


「それは大丈夫だと思う。綱はまあ……結構な人数殺してきたことがあって、初めは私の事も殺しに来たくらいだから。殺したか殺せてないかは判断ついてるはずよ。そうじゃなければ、やらかしをわざわざ私に伝えるだけ損だと考えると思う」


「では従姉上、やみくもに片腕の人間を探して回るのでは大変だと思うでありますが? 綱殿の命がかかっているとなれば、さすがに今の任務よりも優先すべきと判断して、それがしも手伝うであります」


「その前に一度綱の様子を見て来るわ。どういう相手だったのか聞いた方が探しやすいしね」


 とにかく今は急いだほうがいいわね。火車もだいぶ足速いけど、それでも今は一刻を争う。


 そう考えて火車を小脇に抱えると、拠点に向かって走り出した。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【源致公】――清和源氏。源満季の養子。本当の父は源忠賢。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

【小袴】――裾を短く絞れるようになってるズボンのようなもの。

*【マヤー文化国】――火と文化ルチャの神・ケツァルコアトルによって生み出された現在のメキシコ一帯に広がる大国。ルチャによる怪我の治療を重ねた結果、医術が異常に発展している。

【La eMe】――スペイン語でメキシカンマフィアのこと。

*【ケツァルコアトル】――マヤー文化国に火とルチャを伝えた神。

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