表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
90/211

幕間 12天将会議 その1

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています


2025/8/14 修正

 ・一部加筆


 ――夏も終わりに近づき、虫の声が秋の足音を告げ始めたある日の事。京の壁の外、大内裏を裏から守護する位置にある船岡山の洞窟に10柱の男女が車座になって集まっていた。


 北東の位置、12天将の長にして九尾の狐である貴人。


 そこから時計回りに、スライムのような形状をした青竜。


 琵琶を持ち、紫色の道士服と辮髪べんぱつ帽を身に着けた猫耳と2本の尻尾が生えた女性――六合りくごう。黒に近い紫の髪をしているが、前髪の中央だけは黄色をしている。


 1つ空席を挟み、貴人の向かいには12天将最強と呼ばれる騰虵とうしゃが座り、それにへばりつくように、薄黄色の旗袍チーパオを着て真紅の羽衣を羽織ったオレンジ色の髪の女性――天空。前髪をデフォルメされた鶏の顔の髪留めで止めておでこを全開にし、後ろ髪は細いみつあみで束ねた後に左右で束ね、これまた鶏の顔をした白い布で覆う。数えれば実に8個の鶏の顔のアクセサリを身に着けている。


 さらに時計回りに朱雀、大裳たいも、白虎と続いた後は空席を3つ挟んで貴人の隣に玄武という並びになっている。


「さて、皆様。そろそろ定刻になりますが――」


 車座の中央に立つ安倍晴明が場を仕切るため声を発したその時、玄武の隣の空席の時空が歪んだ。


 そこから狐の耳と尻尾の生えた巫女服の童女が2柱ずつ4列現れると、道を作るように左右に分かれてお辞儀をする。


 その中央を十二単衣じゅうにひとえに身を包み、大きな白い狐耳をはやした女性が進む。その後ろにはやはり4柱の狐耳の童女が十二単衣の裾が地面に付かないよう支えながら続く。


「ふむ。妾が最後かと思ったのであるが」


天后てんこうか、久しいのう。そのような術を使えるのであるから、もちっと顔を見せればいいものを」


「妾が動くと下の者が騒ぐのものでな。意味もなく無駄な苦労を掛けるなど、長のとる行動ではあるまいて」


「ははは、違いない。それこそ上に立つ者の正しい姿じゃな」


「は?」


 朱雀の言葉に思わず声を出してしまった白虎が慌てて口を塞ぐも、朱雀はニコニコとした柔和な笑顔を向けている。


「なんじゃ公明。言いたいことがあるなら口に出さんと伝わらんぞ? ん?」


 こうなっては沈黙しても無意味であることを知っている白虎は、意を決して朱雀に対して思ってることを口に出した。


「いや、だってよ。無駄な苦労をかけないどころか常に重圧かけて来るじゃねえか。そんな奴が苦労を掛けないことが正しいとかどの口が―――――危っぶねえ!!?」


 朱雀が指を鳴らしたことで発射された音速の飛剣を、椅子から転げ落ちながらもすんでのところで躱した白虎は、汗で塗れた顔で抗議の声をあげる。


「だからそういうとこだってんだよ! 避けられなかったらどうする気だったんだクソばばあ!!」


「あー分からん。分からんのう。昔、後頭部を海の水を全て詰め込んだような重いもので、ガツーンとやられた時からおかしくなってしまったのかもしれんのう。あれはなんじゃったか……」


「ぐ……」


「師も白虎もその辺で。勾陳こうちん様がいらっしゃるとは思えませんので、これで全員揃ったかと。各々忙しい身である故、どうぞ始めて下され」


 右後頭部をさすりながらの朱雀の言葉に、白虎が黙り込んだのを見て玄武が晴明に進行を促す。それに従った晴明は白虎の隣の空席を一瞥して口を開いた。


「それでは(べべんべんべん!)たので(べべべべべんべん!)ます。……すいません六合様、琵琶を鳴らすのを止めて頂けますか?」


 全員の視線を一身に受けた六合は不思議そうに小首をかしげるが、やがて合点が言ったかのように尻にはやした尻尾をピーンと伸ばした。


「(べん!)にゃるほど! もっと激しい曲がよかったかにゃ? タマちゃんうっかりにゃ(べべべべべべべべん!!!)」


「そういうことでは、ありませんので、本当に、止めて頂いて、よろしいですか?」


「にゃー?(べべん)」


 1言1言、力強く言ってもなお理解する素振りがない六合に呆れつつ、晴明は視線を別の方向に向ける。


「天空様もそろそろご自身の席にお戻りください」


「あら、厳しいこと。ではお姉さま、また後程」


 騰虵の体から離れてすぐ隣の空席に腰を下ろす天空に対し、その対極、天后の隣の空席を指さした晴明が言う。


「騰虵様の、お側では、話にならないと分かっております故、ご自身の席に、お戻りください」


「何ですの! どうせ参加する気のない勾陳の席なのですから別によろしいのではなくて!? その物言い、近くにいたらわたくしがお姉さまのお姿に見惚れて話を聞かないとでも…………うふひひ、やっべ、少し離れてみてもお姉さまのたくましい腕、まるで黄玉のように輝いて――はッ!?」


 冷たい目で空席をさし続ける晴明に、折れた天空がしぶしぶ本来の自分の席に向かって歩き出す。騰虵の背後を通るとき、背中越しに騰虵が言葉をかけた。


「こうやって全員を集める場だ、今は大人しく話を聞くがよい。なあに終わり次第、我がじっくりと手ほどきしてやる」


「手ほ――――!? じ、じ、じっくりって……やっべ鼻血が……」


「きったねえな!? すぐに鼻血を噴き出すの止めやがれってんだ!!」


ほへんはほはへ(ごめんあそばせ)ふふほはひはふは(すぐ止まりますわ)


「あーあー……そうやって羽衣で鼻を塞ぐのを止めぬか。まったく、宝貝ぱおぺえを雑に扱う神経が分からぬ。元が何色だったのか、もはや分からぬわ」


「私の記憶の限りでは元々その色だったはずですが。いつ鼻血を流しても良いようにその色の生地を使っていらっしゃったと思っていたのですが、別の色だったのですね。申し訳ございません天后様、お忙しい中お越しいただきましたのにお待たせしてしまって」


「許そう。ぬしも大変よの」


 天后に謝罪しつつ天空が席に戻ったのを確認すると、晴明は1度咳払いをした。


「さて、落ち着いたところで会議を始めたいと思います。本日集まって頂いて議論したいことは――大陰様が消息を絶たれた件についてです(べべーーーーーーーん!!!)」


 琵琶の大きな音が響くと一転、洞窟内が静寂に包まれる。


 大裳が皆に聞こえるほど大きな音でごくりと喉を鳴らしたのは議題の重大さ故か、はたまた普段温厚な晴明のこめかみに青筋が浮かんだ故か。


 緊張に包まれる中、12天将たちの会議が始まった。

【人物紹介】

【安倍晴明】――藤原道長配下の陰陽師。狐耳1尾の少女の姿。

【貴人】――12天将の1柱。天1位。9尾で狐耳の麗人で安倍晴明の母。ポンコツ疑惑あり。

【騰虵】――12天将の1柱。前1位。角が生えたマッチョウーマン。

【朱雀】――12天将の1柱。前2位。真紅の道着の仙人。年寄りじみた話し方をする。

【六合】――12天将の1柱。前3位。琵琶を担いだ2股の尾を持つネコ娘。

【勾陳】――12天将の1柱。前4位。

【青竜】――12天将の1柱。前5位。スライム状の何か。

【天后】――12天将の1柱。後1位。狐耳1尾の麗人。貴人と違い大物感が漂う。

【大陰】――12天将の1柱。後2位。女媧の配下。混沌のことをパイセンと呼ぶ。

【玄武】――12天将の1柱。後3位。元・殷の道士。

【大裳】――12天将の1柱。後4位。安倍晴明直属。陰ながら京の治安維持を務める。

【白虎】――12天将の1柱。後5位。元・殷の道士。過去に陸圧道人に1度殺されている。

【天空】――12天将の1柱。後6位。鶏のアクセサリと深紅の羽衣がトレードマーク。騰虵大好き。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

【大内裏】――平安京にて天皇陛下のおわします場所。行政施設や祭事を行う殿舎がある。

*【船岡山】――平安京の北に位置する標高112mほどの低山。地下に大空洞があり12天将と呼ばれる式神たちが拠点としている。安倍晴明の屋敷にほど近い一条戻橋と地下通路でつながっている。

【辮髪帽】――俗に言うキョンシー帽。

旗袍ちーぱお】――チャイナドレス。本来は満州人の衣装で、中国に入るのは清の時代以降。

【黄玉】――宝石。トパーズ。

宝貝ぱおぺえ】――仙道が扱う不思議アイテム。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ