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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
86/210

【源頼光】帰宅

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています


2025/8/14 修正

 ・一部加筆

 ・誤字修正


「では、それがしは一足先に屋敷へ戻り満仲様たちに従姉上の帰還をお伝えしてくるであります! ここまでの強行軍でお疲れでしょうから、一息入れてから向かってきてください!」


「そんじゃ、熊童子のおっちゃんが持たせてくれた肉饅頭でも蒸すか。頼光はその間に汗でも拭いとき」


「あんまりかいてないし、嫌なことはさっさと終わらせたいからすぐにでも屋敷に行きたいんだけど。まあ少し早いお昼ごはんにするのもありかな」


 昼前に拠点に戻った私たちは各々荷物を降ろして一息入れることにした。


 なんかこの短い間ですっかり食事は1日3食になれちゃったものね。屋敷にいる時は日が昇ってから南に向かうまでの中間くらいで朝ごはん、日が落ちる前に夕ご飯って感じだったのに、日の出直後・真昼・日没後の3食の方が正直私の体には合ってる気がするわ。


 さっと汗を拭き、着替えを済ませると熊童子の肉饅頭を頬張る。うーんやっぱりおいしい、1日3食があってるって思うのもなんだかんだ京にいる時よりおいしいもの食べてたからなのよねー。


 うちだと火を通した食材に勝手に味付けしろって言わんばかりに、酢に塩に醤油を一緒に出されるだけだし、味付けした汁に具材を入れて味をしみこませる鍋とかもっと流行っていいと思うけど、味噌なんかは高級品で惜しみなく使える大江山が普通じゃないらしい。


 ま、その作り方は茨木ちゃんがしっかり覚えて来たらしいから今後はこっちでもおいしい食事がとれるけどねー。


 食事を終えると、茨木ちゃんは職人さんのとこに顔を出したい、火車は京が大法要を行った後どうなってるか見てみたいということで一緒に京へ向かう。


「Oh……少し離れただけで、よくもまあMonsterだらけに……。呆れる、デス」


「あれだけの法要を行って穢れを払ったはずなのにねー」


 播磨国も多いとは感じたけど、京は相変わらずねえ。穢物けがれものの数は体感だと京>>播磨国>>>>>摂津国≧大江山周辺って感じ。人の多さだと摂津の方が播磨より多いけど、摂津は為政者と領民の距離が直接不満を伝えられるくらい近いからなー、人の不満が穢れに結びついてるならみやこの人たちはあまり満足した生活を送ってないのかしらね。それとも単純に圧倒的に人が多いだけ?


 適当に穢物を倒しながら進むと、延平門の下までやって来た。


「おーい、おっちゃん開けてやー」


「月子ちゃんか。なんか久しぶりだな、今開けてやるから少し待ってな」


 ゴゴゴと大きな音を立てて人が1人通れるだけ開いた延平門をくぐったところで、茨木ちゃんたちと別れる。


 久しぶりの京を歩いてると、身分の高い低い関係なくすれ違う人たち皆がなぜか私の事を見てる気がするわね。んー……なんだろこの居心地の悪さは……。大江山での暮らしが陸奥にいた頃を思い出して都会の暮らしに窮屈さを感じてるのかしら。


「あははー、それじゃボクはここで待ってるからー。終わったら声かけてねー」


 屋敷の手前の一条戻り橋で綱が立ち止まりこっちに向かって手を振った。


「何よ、あんたは行かないの?」


「あははー、致公がどこまで満仲おっさんに話してるか知らないけどさー、場合によっちゃ殺されるからねー」


 ……たしかに一応護衛としてついて来てるていなのに、護衛対象わたしが殺されたとか腹切れって言われてもおかしくないわね。


「分かった。でもこんな寂しい場所にいないでも茨木ちゃんたちについてればよかったんじゃない?」


「あははー、京じゃ結構有名人だしねー。ひっそりとしてるよー」


「はッ! それではここから先はそれがしが引き継ぐであります!」


 後ろから声をかけれられて振り向くと、そこには致公くんが立ってた。ま、門はすぐそこだしそりゃ目立つか。


 致公くんに先導されて縁側を進み、通された客間にはすでに親父まんじゅうが座って待ってた。


「おおおおおおお頼光よぉぉぉ、心配していたぞぉぉぉ――――」


 うわ、ウザ。涙を流しながら突っ込んできそうな勢いだった親父だけど、ぴたりと止まった。


 ? なんかプルプル震えてるけどどうした?


「なんだぁぁぁそのはしたない格好はぁぁぁぁぁ!! そんな服ぅぅぅパパは絶対許さんぞぉぉぉぉぉ!!」


「パパとか言うな。サクサクしておいしいpapaじゃがいもに失礼だわ。いつも着てた着物が破れちゃったんだから仕方ないでしょ」


「……従姉上。それがしもすっかり麻痺しておりましたが、確かにその格好は京だと目立つでありますな」


 今の格好といえば、ボロボロになった着物の代わりにと虎熊がくれた黒地の旗袍ちーぱお。さすがに体格が違いすぎてそのままじゃ着れないからと仕立て直したとき、いっそ動きやすさ重視ということで丈を股下くらいに留めて、下はスパッツを穿いてる状況だから下半身の線がはっきり出てる。


 ……なるほどね。来る途中に視線を集めたのはそういうことかー。大江山だと虎熊と丑御前くらいしかまともに着込んでないからこれでも相当マシな格好だったんだけどね。


「兄上、あまり大声で騒ぎなさるな。部屋の外まで丸聞こえですぞ。快活な性格の頼光にはよく似合っておりますし、さほど変ではありますまい」


「叔父上、お久しぶりです」


 ふすまが開き、満頼の実父で致公くんの養父である満季叔父上が入って来た。


「ああ、久しぶりだね頼光。元気そうで何よりだ」


 ゆっくりとした口調で語り掛ける叔父上は親父が座ってた隣の座布団に腰を下ろし、用意されてた白湯に手を伸ばす。


 顔つきは満頼をそのまま年取らせた感じだけど、武の極みを目指すという源氏の主流の話を聞いた後だと、親父と比べるまでもなく線が細く色も白い。


 実際、清和源氏を継がせるつもりで祖父上が孫の満頼を養子にしたわけだから、武力の方は大したことないと聞くし、全く強さというものを肌で感じない。


 ついこの前対峙した播磨守とよく似た印象だけど、得意とするのは政略でなく軍略。それに加えて人を見る目は確かなもので、屋敷に控える清和の武士たちも親父じゃなくて叔父上が集めてきたものだ。


 親父が自分の席に戻り、その対面に私。そのとなり叔父上と向き合う形で致公くんが座ると、叔父上が口を開いて播磨源氏の沙汰について語り始めた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【虎熊童子】――大江山首領。虎柄のコートを羽織った槍使い。

【星熊童子】――大江山に住む鬼。虎熊童子の弟で弓使い。

【熊童子】――大江山前首領。料理が得意。

*【雄谷氷沙瑪】――前世は羅刹の転生者。生前も死後も母禮に仕える忠義者。

【源満仲】――源頼光、頼信、頼親の父。平安4強の1人にして最強。

【源満季】――清和源氏軍師。源満仲の弟で満頼の父、致公の養父。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【穢物けがれもの】――穢を浴びて変質した生物。俗に言うところのモンスター。

*【延平門】――京の城壁の西にある、作中にのみ存在する架空の門。史実の平安京は南の羅城門のところにだけちょこっとあるだけで、城壁に覆われていない。

*【一条通り】――京の北端にある通り。史実では洛中と洛外の境の通りで、広く人通りも多かったが、作中では①城壁の真横。②城壁の門から遠い。③特に東側は大内裏と貴族の屋敷を結ぶ通りで庶民が通る理由がない。以上の理由で人通りが少ない。

旗袍ちーぱお】――チャイナドレス。本来は満州人の衣装で、中国に入るのは清の時代以降。

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