表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
82/211

【源頼光】播磨源氏の落日 その8

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています


2025/8/14 修正

 ・一部加筆・修正


「なぜだ! なぜ嵯峨源氏が清和源氏を倒すために作りだした貴様が、清和源氏に連なる源頼光の傘下に入っている!!」


「あははー、そりゃ源満仲に敗れた後に拾われたからねー。こちとら嵯峨の爺様から対満頼を想定して鍛えられたってのに、あの満仲おっさん相手は無理だって――――」


「そういうことを言っているのではない!!」


 大声で言葉を遮られ、綱が笑顔のまま舌打ちしたのが聞こえる。


「打倒清和源氏の想いは我ら共通のものであるはず! 事実、嵯峨源氏は源忠賢あにうえに対する刺客ともいうべき者を作らず、醍醐源氏の傘下に入っていたわけではないか!!」


「……いやいや、単純に忠賢殿が全方向に強すぎて用意できなかっただけだから。つーか主流と呼ばれる源氏はどの派閥も頂点を目指してるに決まってるじゃん。嵯峨が醍醐の傘下に入ってるとか、爺様に騙されてるよ? 謀略の嵯峨なめんなよ?」


 めんどくさそうに右手の小指で耳をほじりながら答える綱。大声で叫び続け息を切らしてる権守との温度差がひどい。てゆーか話長くなるのかな? 覇成死合はなしあいの前口上とかもあるし、長くなりそうね。


「あとさー? ボクも致公むねきみから1月ほど前の会合の内容は聞いたけどさ、今回の事は摂津源氏と播磨源氏っていう傍流同士の争いだーとか言ってったらしいじゃん? ボクを見かけた途端、清和だの醍醐だのはどうなのー? せっかく大好きな兄上が頭使ってくれたんだから、ぶち壊すようなバカな真似はやめよ?」


 1度綱の言葉が止まる。


「それで武人として優秀ならともかくさー、上の忠賢殿おにいさんの武には足下にも及ばないわけでしょ? 文武の両面においてお兄様方の能力におんぶにだっこ、甘い汁だけをちゅーちゅー吸わせてもらってきただけっぽいのに、なんであんたがイキり散らしてんのよ?」


「~~~~~~~~ッッ! 我が武を侮るか! 良かろう、今から貴様の主を切り刻み、勝者の命に従い貴様にも死をくれてやるわ!! 平安4強などと呼ばれ調子に乗っているようだが、みやこを離れれば貴様の武など大したことないと知るが良い!!」


「………………すでにそれは存分に知らしめられてんだよ、ば~か」


「おいおいおい、まだ始めねえのか? 頼光が飽きてさっきからおかしくなってんぞ」


「きゅっきゅっきゅ~……きゅ? あ、口上終わった?」


 伝統とかそういうのは大事にしなきゃいけないってのは分かるけど、正直長すぎるのよねー。今回に限ってはこの子と遊ぶ時間が出来たから別にいいけど。しゃがんで突き出した両手のひらに伝わってた感触に後ろ髪を引かれつつ立ち上がると、一緒にしゃがんで私とモコモコの戯れを見てた丑御前も続いて立ち上がる。


「あははー、そういや壁を登ってる時にボクの頭に張り付いてたねその謎生物。ま、いいや。そんじゃこれから清和源氏・源頼光と播磨源氏・源経房による覇成死合を始めます。清和の立会人はボクと虎熊童子と丑御前、播磨はー……名前分かんねえや。とにかくこの場にいる全員ってことで」


 って今から口上入るんかい。長すぎるのはあれだけど、口下手な満頼がきっちりとこなしてたものを、適当にやりすぎるのもまた微妙というか。なかなか塩梅が難しいわね。


「あー……あと、うちの大将人殺すのが嫌いらしいんで、戦闘不能になったら終わりね? 生殺与奪の権利は勝者にあるってことでよろしく。ついでに言うなら、無理だと思ったらさっさと降参しても良しってことでー」


「フン! それほど覚悟がない者が傍流といえ源氏の長を名乗っているとは嘆かわしい。我なら生き恥を晒すくらいならば死を選ぶぞ。そこまでして生に執着するか!」


「ほんっっっっっとに話が通じない奴だねー。『死にたくない』じゃなくて『殺したくない』ね? あんたが生き恥晒したくないって言うなら、戦闘不能確認後にちゃんと介錯してやるから安心しなー」


「わっはははははー! なんならオレがやってやってもいいぞー!」


 丑御前が片手で巨大な斧を軽々と振り回すと、播磨の人間から驚きと恐怖の入り混じったどよめきが起こった。


「最後にいい加減目をそらし続けてる現実を見て欲しいから言うけどさー。清和源氏ってさ、頼光の弟の頼親や頼信と違って、頼光が親父を覇成死合で破って独立したごりっごりの主流源氏なのね? 傍流が主流に喧嘩吹っ掛けた以上、このままじゃ一族郎党皆殺し以外の未来ねーんだわ。それを覆すためには必死こいて闘いな?」


 後は「いざ尋常に勝負」の掛け声待ちってところで、まーた物騒なこと言って不必要にびびらせてるし。1つ注意した方がいいかなってところで、「きゅきゅー」の掛け声とともに私の両腕に緑のモコモコがすっぽりと収まった。


「きゅー? きゅきゅー? ここが気持ちいいのかきゅ~~~?」


 もーこれから大切な勝負って時にしょうがないモコモコねー。耳を優しく、くしくししてあげると気持ちよさそうに顔をほころばせるモコモコ。そんな私たちに綱の呆れ果てた視線が突き刺さる。


「…………………………あー、もういっか。そんじゃ、いざ、尋常に勝負!」


 こうして播磨源氏と摂津源氏の――親の代から続く因縁に決着をつける闘いが始まった。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【虎熊童子】――大江山首領。虎柄のコートを羽織った槍使い。

【星熊童子】――大江山に住む鬼。虎熊童子の弟で弓使い。

【熊童子】――大江山前首領。料理が得意。

*【雄谷氷沙瑪】――前世は羅刹の転生者。生前も死後も母禮に仕える忠義者。

【源経房】――源高明の五男。播磨権守。

【源忠賢】――源高明の長男。源氏最強の武士と呼ばれたが、満仲に敗れ戦死。

【源満仲】――源頼光、頼信、頼親の父。平安4強の1人にして最強。

【源満頼】――源満仲の弟・満季みつすえの長男。先天的に芯が通っていたため当主である祖父の経基つねもとの養子となり武芸を仕込まれる。平安4強の1人。

【源頼親】――藤原道長配下。大和守。道長からは人斬り上手と重宝されている。

【源頼信】――源満仲の次男。頼光とは異母姉弟。河内守。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【清和源氏】――源氏の系統の1つ。『鉄壁の清和』と呼ばれる。

*【嵯峨源氏】――源氏の系統の1つ。『謀略の嵯峨』と呼ばれ、覇成死合に勝つために手段を選ばない。

*【醍醐源氏】――源氏の系統の1つ。かつて隆盛を極めたが安和の覇成死合にて没落。播磨源氏と名を変え返り咲きを狙っている。

【権守・権官】――定員に達してる職に定員を超えて任官するもの。今回の場合播磨守がすでに任命されているところに、同じ報酬でもう1人任官されている状態。

*【覇成死合】――源氏間で行われる最も神聖な格闘イベント。以下公式ルール。

         ・試合形式は1VS1

         ・武器の使用制限なし

         ・それぞれが立会人をたて不正がないよう務める

         ・死ぬか負けを認めるかで決着

         ・敗者は勝者の要求を1つ飲まなければならない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ