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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
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【源頼光】強奪

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

「トラトラトラーーーッ!!! 我、奇襲ニ成功セリーーーーーッ!!!」


「う……うわあああああああああ!! 出た……、みんな逃げろおおおおおおおおおおお!!!」


「あ、ちょっと! 荷物荷物!!!」


 大江山に来てから1月近く経った本日早朝、見張りの鬼から麓を馬に荷物を載せた輸送隊が通ってるって報告があった。道満さまの指示通り追い返そうと準備しようとしてたら、槍を手に取った虎熊が真っ先に飛び出したもんだから慌てて後を追った結果がこれよ!


「山賊じゃん! 奪っちゃったら山賊じゃん! 穏便に追い返すだけで良かったのに!!」


「いやいや、1合も交えてねえのに逃げるとか思わねえじゃねえか。つーかこんな簡単に置いていくってことは、それだけの価値のもんって事だろがよ」


 丑御前や星熊が言うには、酒呑に首領の座を譲ってからというもの虎熊のはっちゃけ具合がやばいらしい。毎日毎日何かしらの勝負を吹っかけられてる私だって時々怖いと思うときあるってのに、こんなのが嬉々として降ってきたらそりゃびびるって。むしろ腰を抜かさず走って逃げれたのが凄いくらいなんじゃないかな?


「さて……これどうしたもんかしらね。送り返すにもどこに送ればいいのか分からないし……1人捕まえるか」


 逃げ出したとはいえ、残念だけどあの人たちの足はそんなに速くないし簡単に追いつける。


「あははー、止めてあげてー。今びっくりさせたら心臓止まりかねないからねー」


「丹波国は播磨国と繋がっておりますので、おそらく丹後国―――ああ、魚の干物からものもございますし、間違いないでしょう。とりあえず後で返すとして一時的に私がお預かりいたしましょう」


「うーん……道満さまを疑うわけじゃないけど、そもそも播磨国宛ての荷物で間違いないのかしら? 荷物を追い返せって言われてるのって播磨国に荷物や人が入らないようにってことでしょ?」


 追いついてきた綱と保昌殿と話しながら疑問をぶつけてみると、保昌殿は困ったように頭を掻きながら答えた。


「HAHAHA……大江山の麓を通り南に向かっておりましたからな。マドモアゼルもご存じの通り、大江山から摂津までの間にあった郡は丑御前の出現で無人となっておりますので……」


「わっはははははー! オレってば人間に恐れられてるなーもー!」


「あー……」


 確かに遠慮して開けた場所で野営を続けてきたけど、ここに来る途中の集落は結局どこもかしこももぬけの殻だったのよねー。どこに避難したか分からないけど、自分の郡に帰れって言われても恐怖の対象がそのままなら早々帰れるもんじゃない。となれば行先は摂津国か播磨国の2択、仮に摂津国宛てなら任務をこなした結果なら道満さまが怒る道理はない。


 てゆーかこれ、丹波国からしたら私ってば大江山の鬼を使って国をめちゃくちゃにしてるやばい奴になってない?


「あははー、それにしても見事に食い物ばかりだねー。もうすぐ秋の収穫だってのにこんなにいるのかねー」


「確かにムッシュ俊賢としかたの政治能力には右大臣も一目置いているとのことですからな。このような時期に他国よりこれほどまでの物資を調達せねばならない状況になったといのは信じられないところではありますな。――もしくは糧食が必要ということで調達してるか、というところですが」


「摂津国と戦争を考えてるってこと? それなら道満さまが先手を打ったとも考えられるけど、氷沙瑪ひさめを見る限り明らかに守りの一手というより攻めを意識してたよね」


「とりあえずはこれだけの食料、後で返却する際に何々が足りぬと言われてはかないませんからな。1度このまま屋敷まで持ち帰り、マドモアゼル茨木に目録を作ってもらいながら収納すると致しましょう」


「うっし、そうと決まれば引き上げだ。テメエら馬ごと荷物を屋敷に運べ! 1匹たりとも逃がすんじゃねえぞ!」


「「「おおおおおおお!」」」


 降りてきた鬼の皆に連れられて次々と山に荷物が運ばれてく。そんなたくさんの食べ物を見てると、お腹がくーと鳴った。


「そういえば朝ごはん食べてないわね。わざわざこんな時間に運ばなくてもいいのに」


「HAHAHA。マドモアゼルは夜目が利くからそうお思いなのでしょうが、普通の人間は明かりがなければ到底歩けませんからな。昼間歩くのも夜に明かりをつけて歩くのも、鬼に見つかる危険性を考えたら避けたいと思うのが心情でしょう。早朝こそ1番発見されにくいと思った結果でしょう!」


「なるほど……。まあ朝食前の運動に軽く走ったと考えればいっか。熊童子たちの作る料理がもっとおいしく感じられそうね!」


 今日のご飯は何かしらねー。京じゃ食べれないものとか出るし、食生活は完全にこっちが上だわー。あの時の喧嘩で怪我した鬼たち全員を火車が治療するまでってことで長居してたけど、帰りたくなくなっちゃうわねー。


「熊童子のおっちゃんの料理もいいけどな! 姐御と虎熊童子は色々勝負してんのに、まだ料理で勝負してないよな! 飯作ったらどっちがうまいんだ!?」


「「ほう?」」


 私と虎熊の声が重なる。確かに言われてみれば料理勝負はしてなかったわね。


「あははー、料理対決かー。それなら同じ料理作って酒呑に食べてもらえばいいんじゃない? ほらボクたちじゃ頼光びいきになるし、鬼たちは虎熊びいきになるでしょー?」


 一理ある。正直何百人前の料理なんて作れる気がしないし、唯一公平な立場にいる酒呑1人に判断してもらうのがいいかもしれない。私と虎熊の視線が交差し火花が散る。その時後ろから誰かがほっと溜息をつく音が聞こえた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【虎熊童子】――大江山首領。虎柄のコートを羽織った槍使い。

【星熊童子】――大江山に住む鬼。虎熊童子の弟で弓使い。

【熊童子】――大江山前首領。料理が得意。

【源俊賢】――源高明の三男。播磨守。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【トラトラトラ】――虎熊童子が狩りに成功したときに周りに伝えるため発する言葉。狩り=奇襲なので「我奇襲に成功せり」の意味も持つ。

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