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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
61/210

【源頼光】大江山の戦い その9

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています


2025/8/14 修正

 ・一部加筆

 ・誤字修正


「おぉおおおおおおおおおおッッッッ!!」


「やあああああああああああッッッッ!!」


 篝火に照らされた夜の山に火の花が咲く。周りを高速で動き回る頼光に対して、右足を軸に回転することで、自身の正面で捉え続ける虎熊童子。


 頼光が距離を詰めようと踏み込むと、虎熊童子は幕を張るかのような高速の突きで応じ、その重圧を受け頼光の足が止まる。足の止まったところを目掛けてなおも繰り出される槍を、頼光は右膝を大きく上げて構え、繰り出した前蹴りですべて防ぐ。


 そんな応酬が続くこと数百合、興奮する鬼たちとは裏腹に綱たちは固唾を飲んで戦況を見守っていた。


「綱殿、恥ずかしながら、それがしには何が起きてるのかろくに理解できないでありますが、従姉上あねうえは大丈夫なのでありますか!?」


「わっはははははー! 何の心配をしてるのかさっぱり分からないぞ! 姐御が訳分かんねー縛りを止めればいいだけだぞ!」


 いつの間にか戻ってきたのか、遠くでちやほやされてた丑御前のお気楽な物言いに眉をしかめながら、綱が致公むねきみの問いに答える。


「あの虎熊童子ってやつの継戦能力がどれくらいかわからないけど、頼光のあの動きはもってあと15分ってとこ。その間に決められるかどうか……」


「先ほどのように大きく槍を弾いてその隙に飛び込めば――いや、そうはさせまいと握りを強めているということだな」


「ああ。力が入ってる分、槍の扱いがぎこちなくなってるから、回避しきれないでかすり傷が増えてったさっきまでとは違って防御が間に合ってる。でもこのままじゃジリ貧なのは間違いないからね、武器の破壊も視野に入れて穂先目掛けて足を出してるんだろうけど―――緋緋色金ひひいろかねとあれだけ打ち合ってるのに何で壊れない? あの槍は何でできてるんだよ……」


 日ノ本1の硬さを誇ると言われる緋緋色金。同じ性質を持ちながら青く輝く青生生魂アポイタカラという金属の存在は知られているが、緑色をしたものの存在を綱は聞いたことがない。


「銀、デス。頼光の靴裏――オリハルコン、それに匹敵する硬度。無茶苦茶な加工されたミスリル、デス」


「ミスリル? 初めて聞く名前だが、銀がマドモアゼルの緋緋色金に並ぶ硬さになるとは信じられないのだけどね?」


「オリハルコン、もともと銅、デス。自然にあって、大地のマナをたくさん吸収することで、変質する。ミスリル、神力で製錬された金属の総称、デス。中でも神力通しやすい銀、すごく強くなる、デス」


「銅は自然の力溜め込みやすうて、銀は人の力が入りやすい言うわけやな。ええな、銀のほうはうまいことやれば商売になりそうや」


「オリハルコン、自然の最高傑作。それに並ぶミスリル作る、Maybe、あの穂先とブレストプレート作るだけで、銀山1つ使い切る、デス」


「ごっついな……なんぼすんねん……」


「……武器破壊は難しそうだね。さてもう時間がない。どうする気? 頼光」



 体から流れる汗と一緒に命そのものが流れていきそうなこの感覚は親父まんじゅうとの覇成死合はなしあい以来ね。道満さまたちや丑御前との闘いよりずっと長期戦になってるし、立ち止まって休もうにも、回避か防御を強いられるもんだから全く休めないしで、体から肉がどんどん削ぎ落ちてってるのが分かる。


「さーて、どうしたもんかしらね……」


 かなり好戦的な第1印象と違ってえらい守備的というか、清和源氏的というか。まるで満頼みつよりとでも闘ってるかのような気分になってくる。


 正確には虎熊こっちのほうが踏み込ませるつもりすらないから、踏み込んできた相手に向かって後の先を取ろうとする満頼よりかは攻撃に重きを置いてる感じはするけど、これだけの技量の相手にがん待ちされると……はてさてどうやって崩したらいいものやら。


 途中、挑発をはさんだり工夫はしてみたけど、いきり立つのは観戦する鬼たちばかりで虎熊自身は鼻で笑うだけ。戦闘になればとにかく冷静になる――というよりかは2000年間積み上げてきた武を、実戦の場でも出し切ることだけに集中してる感じ。


 愚直、って言ってしまうのは簡単だけど、その修練は自負となり、修練の成果をすべて出せば負けることはないという絶対の自信こそが虎熊の強さの根源。


「――誘いには乗ってこない。正面からの突破は難しい。なら他に取れる手段は……!」


 思い切り踏み込んだところに合わせて繰り出される槍を足裏で受け止める。この30分ほどの間に何百回と繰り返してきたことだけど今度は違う。


「あ……?」


 軸足の力を抜き、突き出された槍の勢いを借りて大きく後方に飛ぶと、そのまま転がるように腰の高さの草の中に身をゆだねる。


 思い出せ、さっきの虎熊のやり方を。


 私は息を殺して気配を消すと、完全に山と同化した。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【虎熊童子】――大江山首領。虎柄のコートを羽織った槍使い。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【緋緋色金】――西洋のオリハルコンと似た性質を持つ緋色の希少金属。硬い・軽い・熱に強いと武器や防具に最高の素材だが、それ故に加工が難しい。

*【青生生魂】――緋緋色金の色違い。綺麗な青色をしている。

*【マナ】――自然の中に存在する超常の力。自然物に大いに影響を与える。中でも特に銅はその影響を受けやすい。

*【神力】――生物が持つ超常を起こすための力。魔力・道力・気力・妖力と所属勢力によって呼び方は異なるが、全部同じもの。

*【覇成死合】――源氏間で行われる最も神聖な格闘イベント。

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