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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
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【源頼光】大江山の戦い その1

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

「見えたぞ姐御! あのてっぺんに物見櫓が見えてんのがオレたちが住む大江山だぞ!」


 案内役として先頭を歩いてた丑御前がこっちを振り向き、歓迎するように両手を広げる。なんか山が連なっててどれがどれだか良く分からないけど……お、あれか! 直線距離で3~4kmくらい? うっすらと茜色に染まる始める空の中、遠くの方に途中までは高い木が生えてるのに、自分たちで切り開いたのか木の代わりに櫓が2個立ってる山がある。


「お前が言うには麓に火を点けて摂津の方角に逃げたやつがいるって話だが、もっと近くまで行ったのか? あんな見張り台あるのになかなか肝座ってんな。逆に木で隠れて見えづらいってんならどうやって見つけたのかって話だが」


「ん? それならそこだぞ。燃えカスの1つくらいなら残ってるんじゃないか?」


「しょっぺえなおい!? こんくらいのことで門ぶっ壊して襲ってきたのか!?」


「はあ~~~~……。雨の多い時期、植物、水吸ってる、デス。燃えにくい、当たり前。それくらい、分からない、馬鹿、デス?」


「え、オレが責められる要素あった?」


 火車の信仰する神様にたいして軽口を言ってからというもの、酒呑と火車の関係がぎくしゃくしたままなのは困ったものね。そんなギスギスした空気を、丑御前が脳天気な笑いで吹き飛ばす。


「わっははははー! オレたちはいっつも暇してるかんなー! 喧嘩さえできればどんな些細な痕跡だって見つけるぞ! もード派手に暴れたいもんだから、逃げた方向にある小せー村に乗り込みつつ、1番楽しそうなでっけー街にも殴り込んだってわけだ!」


「めっちゃ迷惑やん」


 目的地が見えたことで気が緩んだ……ってゆーか駄弁りながらの旅が楽しかったから終始こんな感じだったけど、道中よりも和やかに各々話してる中、びしっと致公むねきみくんが挙手をする。


従姉上あねうえ! 到着がだいぶ予定よりも遅くなっておりますが、どうするでありますか!」


 どうする? いや、どうするって言われてもここまで来て登らないって選択肢はなくない?


「あははー、致公が言いたいのはこのまま登ったら夜になるってことだと思うよー? ここらでもう1泊野営して朝一番で登ったらってことかと」


「ああ、なるほど。夜になって周りが暗くなったら何も見えないよーって人ー?」


「何アホなこと言うてんねん。そんなん当たり前――――って嘘やろ!?」


 綱と酒呑と丑御前と私、半数が手を挙げてないことに愕然とする茨木ちゃん。深夜の街道を芦屋まで突っ走ったときにその時いた仲間のことは把握してたけど、茨木ちゃんもダメかー。


「あの時みたいに火車の手押し車に乗せる方法もあるけど、めっちゃ目立つからなー。戦いの口実探してるとなると、因縁つけられそうよねー」


「HAHAHA! この先何が起こるかわかりませんからな。疲れを残さぬようもう1泊といきましょうマドモア――――」


「ッ!!」


 鞘ごと刀を外し、幕舎の準備をしようとする保昌殿に迫る影を叩き落とす! 


 ガゴンッ! と大きな音を立てて地面に転がったのは大きな矢――っていうかむしろ短槍?


「まだ来るわ! 皆私の後ろに隠れて!」


「あっは! なにこれ山の上から? どういう射程してんだよ!」


 弾いた矢がうっかり当たらないように後ろに下がるよう促すと、それを無視した丑御前が前に出る。斧を体の前で水車のように回し、続いて翔んできた全部の矢をはたき落とした頼りになる鬼はドヤ顔でふんすと鼻を鳴らす。


「わっははははー! 全弾回避ー! やっぱオレってばかっけーなーもー!!」


「ええ! 本当にかっこよかったわよ!」


 ワシャワシャと頭をなでながら、丑御前の肩越しに山頂の櫓の下に見える影を見据える。


「なんか暑苦しそうな虎柄の外套を羽織った鬼と、上半身裸の髪の黄色い鬼。バカでかい弓を持ってるし射手は後者ね」


「さっすが姐御、よく見えんなー! その外見なら虎熊童子と星熊童子で間違いないぞ!」


 手足をほぐしながら最短の道を探りたいけど、山頂はともかく途中は木が茂ってて全くわからないわね。そこは出たとこ勝負で行くしかない。


 もう1度山頂に目を向けると、虎柄の鬼――虎熊童子と目が合いどちらからとは言わず互いに笑みがこぼれた。



 打ち出した特製の矢が全て叩き落された星熊童子は少し驚きながらも、次なる矢に手を伸ばそうとするが矢筒にはもう1本も残っていない。1本1本が巨大な故、威力こそ桁違いだがいかんせん場所を取るため矢筒に収まる数は少ない。


「シット! すまねえマイシスター。ちょいとミーのルームまで換えのアローを取りに行ってカムバックプリーズだぜ」


「何言ってるのかさっぱり分からねえから不謝謝だ愚弟」


 星熊童子は大げさに肩を竦めると、丸太のように太い両腕を下にして匍匐前進で部屋に向かおうとする。千年以上前の戦争に巻き込まれ、矢を受けて動かなくなった膝から下は上半身と打って変わって小枝のように細い。


「攻撃に集中するのもいいがな、テメエはもっと人を見る目ってもんを磨くこった」


「ワッツ? 何をセイしてんだマイシスター」


 ガン! という鈍い音が周囲に響く。星熊童子の眼前に差し込まれた虎熊童子の持つ槍には、先程まで麓にいたはずの人間の膝が突き立っていた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【虎熊童子】――大江山首領。虎柄のコートを羽織った槍使い。

【星熊童子】――大江山に住む鬼。虎熊童子の弟で弓使い。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

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