表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
48/212

【源頼光】源氏

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/3/31 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定

「さて頼光、今言った主流と傍流の1番の違いってなんだと思うー?」


「そりゃ傍流って言われてる方は名前に地名が入ってるわけだし、その土地の国司になってるってこと? んー? でもそうなると親父まんじゅうはどうなるんだろ?」


「くそ、あのおっさんの存在のせいでややこしくなってんなー……。そこは頼光のほうが詳しいと思うけど、あのおっさん清和には出戻りなんだよ。主流の清和から外されて摂津の多田庄に籠もって多田源氏を名乗ってたの知らない? 自虐的にオレは源氏から見放された多田満仲ただのまんじゅうって言ってたらしいじゃん? 頼光の『まんじゅう』呼びもそこから来てると思ってたんだけど」


 言われてみれば……? 親父のことを考えるといつも頭痛くなるからあまり考えたくないんだけど、陸奥での親父は覇気の欠片もないヒョロガリのおっさん。だからこそ母上が実務を執り行ってたわけだし。


「……そっか、それで清和を倒すために鍛えられたあんたが、親父じゃなくて満頼を仮想敵として仕上げられてるってことなのね」


「あははー、満頼相手なら確実に勝てる自信あったのにいい迷惑だよね~。で、国司になってるってのは正解なんだけど、それはなんでかってこと。清和の致公むねきみはわかるよね?」


「はい! 武の才能がないからであります! 源氏にとって力とは武力! その道に見込みがない者は主流から外されるであります! とはいえ血を分けた家族、ちゃんとした生活が出来るよう権力や財力といった別の力が持てるよう働きかけると聞きます!」


「おお、オレらみてえな考え方だな! 鬼も弱えヤツは飯炊きしてろって感じだ!」


「源氏さあ………………」


 酒呑が上げる呆れた声をあげるけど、まあ源氏うちはそうよね。歴史書とか兵法書なんかも少し読んだほうがいいかなと部屋に持ってきてもらった時も怪訝な顔されたし。知力や政治力、ひいては権力とか財力も興味があるように見えない。


「で、逆に歴代天皇の名を冠する方は1度主流から外した連中から生まれたけど、武の見込みがあるから戻った連中。当然、主上には諡号おくりながされてないけど、その子供ですでに主流に戻ったのには花山源氏って名前が送られてるからね。主上が亡くなったら花山天皇って呼ばれるようになるよー」


「ムッシュ綱。天皇の名前が子どもたちの所属する源氏から付けられるとなると、それは主上よりも主流の源氏の立場が上と言ってるようにも聞こえるのだが」


「一応、傍流の連中の忠誠心は高いはずだよー。ボクも頼信とかと話す時は気を使って源氏って臣籍降下した連中だから主上を慕ってるよーみたいな感じでおどけてるけど、巷で言われてる『源氏は所詮天皇になることができなかった敗北者』みたいな言い回しはわりと本気で嫌ってる人多いねー。嵯峨の爺様なんかとくに。頼光は出戻りの満仲おっさんの影響で忠誠心高そうだけど」


「ちょ、ちょっと待って? あんたはどうなの? 節々から忠誠心ないように聞こえるんだけど……?」


「あははー、そりゃそうだよ。ボクが忠誠誓ってるのって頼光だし。この際ぶっちゃっけちゃえば、陸奥を支配したいなら反乱起こして乗っ取っちゃえばいいのにって思ってるよー。氷沙瑪は陸奥守就任からの独立って悠長なこと言ってたけど、今すぐ反乱起こすといっても乗ってくるでしょ。満仲おっさんが介入してこなけりゃ余裕で成功するんじゃない?」


 マジかこいつ。そういえば氷沙瑪の冗談なのか本気なのかわからない言葉を、私に本気にするなって忠告してきたのって酒呑だったわね。過去1やばい発言に酒呑は呆れ顔で茨木ちゃんはドン引き、検非違使を率いてる保昌殿からしたら即逮捕案件――……ん、何で苦笑だけで済んでんのこの人? てゆーか――私の武士団、朝廷への忠誠度低すぎ……?


「HAHAHA! この際私も本音を語らせてもらうなら、宮仕えなんて馬鹿馬鹿しいですからな! さっさと職を辞して主を持たない自由武士として異国を回りたいとは思っておりますよ!」


 ……マジかこいつも。反乱よりは断然マシとは言え朝廷に仕えることを馬鹿馬鹿しいって。なんかこれ以上この話するのも怖いから話変えよ。


「それじゃ播磨源氏は摂津源氏うちらが主流を追い出された武人の見込みのない集団と見て仕掛けてきたわけねー。思えば元が醍醐ってことは主流ってことだろうし、強いとは思わなかったけど武の才能も―――」


 今現在勃発してる源氏間での抗争に話を移すとピタッと、そりゃもうピタッと綱の動きが止まる。致公くんもなんとも気まずそうに綱と私の顔を交互に見てるけど、一体何なのよ……。


「醍醐源氏ってそもそも忠賢ただかた殿だけだったんだよ。ただその忠賢殿が圧倒的に強すぎたのに加えて人間も出来ててね。最悪なことに忠孝の気持ちが強すぎたんだ」


「?? ええことやん。反乱起こそう言うてるやつより、ずっとまともや思うんやけど」


「……父親の高明がそれを利用して忠賢殿に覇成試合はなしあいをさせまくった。自分と播磨の2人を含む息子たちを復権させ、そりゃもう好き勝手したってさ。表じゃ権力を傘に無法を繰り返し、源氏相手にも1度放逐されたを怨みを晴らすため主流の人間をゴミのように扱ったんだとさー」


 そこまで話すと1度綱は水を口に含む。


「知っての通り、覇成試合は殺し合いだよ。優秀な親戚だったり、ボクみたいに源氏の血は入ってないけど時間をかけて使い物になるようにした武士を殺されまくったわけだからね。醍醐憎しの感情を持つのは当然だろ? それに自分たちは覇成試合でうまい汁を吸い続けたのに、いざ負けたら約定を反故にしてきたわけで、今回の件は主流の連中は腸煮えくり返ってる。普通は傍流と勘違いしても、わざわざ当事者の満仲おっさんの娘の頼光に喧嘩売る意味がわからないんだけどねー」


「……それに加えて摂津守の道満さままで敵に回してるんだもんね」


「恐らく、道長さまと姻戚になったことで気も大きくなっているのでしょう。政治の世界では我が世の春を謳歌してるお方ですからな。とはいえ、話を聞く限り道長さまが持つあらゆる権力・財力を駆使しても助かる道はないように見えますな」


「Over Killの未来、デス?」


 まだ習ってない異国の言葉が出たことで会話の流れが切れる。その後は当たり障りもない会話で盛り上がり、この日は男女で2つの幕舎に分かれて眠りについた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【源満頼】――源満仲の弟・満季みつすえの長男。先天的に芯が通っていたため当主である祖父の経基つねもとの養子となり武芸を仕込まれる。平安4強の1人。

【源満仲】――源頼光、頼信、頼親の父。平安4強の1人にして最強。

【源高明】――源満仲の元政敵。安和の変で失脚して大宰府に流された。

【源忠賢】――源高明の長男。源氏最強の武士と呼ばれたが、満仲に敗れ戦死。

【芦屋道満】――摂津の遙任国司。左大臣・藤原顕光に仕える陰陽師。

*【雄谷氷沙瑪】――芦屋道満の腹心。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

【検非違使】――平安京の治安維持に従事する役人。当時の警察みたいなもの。

【臣籍降下】――皇族が天皇陛下から姓を賜い、臣下の身分に降りること。*【自由武士】――主を持たない武士。穢物退治や物資輸送の護衛などで生計を立てる。俗に言う冒険者てきな方々

*【覇成死合】――源氏間で行われる最も神聖な格闘イベント。以下公式ルール。

         ・試合形式は1VS1

         ・武器の使用制限なし

         ・それぞれが立会人をたて不正がないよう務める

         ・死ぬか負けを認めるかで決着

         ・敗者は勝者の要求を1つ飲まなければならない

【権守・権官】――定員に達してる職に定員を超えて任官するもの。今回の場合播磨守がすでに任命されているところに、同じ報酬でもう1人任官されている状態。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ