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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
47/210

【源頼光】野営

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/3/31 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定

 芦屋から大江山までは100km弱、以前綱に怒られたし余裕を持って7時間くらいかけて走ろうと提案すると、丑御前以外の皆から却下されて結局4日掛けて歩くことになった。丑御前がここに来る途中いくつか集落を通ったらしいけど、見つけた集落全部で大っぴらにケンカを売ったことで住人は皆逃げていったそう。もしかしたら戻ってるかも知れないけど、酒呑と丑御前は相手を怖がらせちゃうかも知れないってことで、開けた場所で野営をしていくということになった。


「結構日も暮れてきたわね。今日はこの辺で休む?」


 体感としては25kmくらい。ばかデカ馬もなく全員徒歩での移動だからか、足に来てる感じの茨木ちゃんはその場に座り込み、致公むねきみくんも涼しげな顔をしてるけど。どうも痩せ我慢してるみたいね。


「とりあえず飯の準備でもするか。近くに湧き水でもあるか探そうぜ。特に頼光はのんびり歩きすぎて元気が有り余ってんだろ?」


「あははー、そうだろうけどその必要はないよー。ね、保昌?」


「HAHAHA! 確かに。そろそろマドモアゼルのお役に立たないと妻に怒られてしまいますからな! ムッシュはこれをそちらに建ててくれたまえ!」


「はいはいっと。致公も手伝ってねー」


 どこから出したのか、水の入った竹筒を全員に配ると保昌殿は綱に渡したのと同じ袋を広げる。10分もすると唐国の軍隊が使うっていう幕舎が2張建てられた。


「では食事と行きましょうか。こちらを少し火で炙ったあと、こちらに乗せて食べてみてください。異国の素晴らしさ、ぜひその舌で味わってみてください!」


Wow(いいね)、チーズにパン、デス。この国来てから、初めて、デス」


 なんか後ろに伸ばした手の先が途中で見えなくなったかと思ったら、そこから出るわ出るわチーズとパンとやらが次から次へと。懐かしそうな顔で食べる火車に続いてそれを口に運ぶ……これは! フワフワの生地にとろりとした濃厚な味わいがなんとも合う。匂いが少しキツイから人を選ぶかもしれないけど私としてはかなり好きな味かな。


「んー! うまいぞ! もっとくれ!!」


「これってだよねー? 清和じゃあんまり食べないみたいだけど、嵯峨の爺様がよく食べてたよ。日ノ本じゃお貴族様の食べ物だけど、火車の様子を見る限り異国じゃ普通に食べられるんかねー」


「HAHAHA! 残念ながら似て非なるものですな!」


「いや、おかしいやろ!?」


 和気藹々の食事を妨げるように茨木ちゃんが声を上げると、同意とばかりに酒呑も激しく首を縦に振る。


「え? なに? どこから出したんこれ? このパン……やっけ? これも火で炙ってへんのにほんのりぬくいし、幕舎もわけわからんとこから出したよな!?」


「あははー、わっけわかんないよねー! なんか別の空間に物置いとけるらしいよ。めっちゃ便利だよねー」


「HAHAHA! 収集癖が高じた結果ですな! とはいえ別空間に送ったものの総重量の1/1000の重みが常に降りかかるという代償がありますがね!」


「ぶっ壊れやん!? そんなん代償のうちに入らんやん!! はッ……! そういえばついさっき氷沙瑪ひさめさんが言うとったけど、事象がどう起こるかわからんことには能力使えんのよな!? 教えてくれへんですか!?」


「すまないマドモアゼル。さっきも言った通り収集癖が高じたとしか言えないのだよ」


 呪道具だったり、術だったり、医術だったりと、もともと色んなものを欲しがる茨木ちゃんにとっては過去1で欲しかったのか、ダンダンと地面を叩いて悔しがる。氷沙瑪のいい加減な言葉に期待しただけに、それが手に入らなかった悔しさも一入ひとしおってとこかしらねー。


「言うなればこれも『芯が通っている』という結果なのでしょうな。こういった他の人間と異なる能力についての知識は源氏の方が詳しいのではありませんかマドモアゼル?」


「え? んー……そう言われても私としては得意な戦闘の型っていうのかな。そういう認識だったからなんとも……。そもそも源氏のことも主流とか傍流とかなんぞやってくらい、ろくに知らないし」


「そうだろうとは思ったけどさ、なら聞いてよね。氷沙瑪と道満はどういう意味なのか聞きに来たよ」


 お、久しぶりに嘘くさい笑いもなけりゃ語尾も伸びてないわね? 致公くんも驚いてるし、これは源氏の人間としては知ってて当然の常識。それを知らないことに激おこって素振り?


「西の備前と美作は源氏が封鎖するって話ですっかりまとまってたのも関係してそうだな」


「そ。備前守源惟正(これまさ)は文徳源氏の源相職(すけもと)の息子だし、美作守源時中(ときなか)は宇多源氏の源雅信(まさのぶ)の息子だからそっちから圧力がかかるはずー。まあ大雑把に言えば歴代天皇の名前を冠する源氏が主流で、地名を冠する源氏が傍流ってわけだけどちょうどいい機会だから話しとくよー」


 そう切り出すした綱はジトーっとした目で私の目を見据え、ゆっくりと語りだした。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

*【雄谷氷沙瑪】――芦屋道満の腹心。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【唐国】――中国。

【蘇】――乳製品。税として徴収され、納められなかったら品質が悪かったりすると杖で殴られる。殿上人しか食べることが出来なかったとされる。

*【芯が通る】――通力芯という気力や魔力といったものを通すため人体に張り巡らされたパスが通ること。先天的に通ったものもいれば後天的に通るものもいる。後天的に通す場合、理想の自分を完璧な形でイメージすることで無理やり通す方法と、辛い修行の末に通す方法がある。


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