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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
43/210

【源頼光】解放

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/3/17 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定

「この娘は?」


 間違いなく道満さまの能力と思われる、季節外れの氷に閉じ込められた小鬼。こんなことされても生きてるの? って疑問はあるけど、私の腕の中でほとんど死体発見猫と化した火車が、いまだに酒呑を挟んだ道満さまにしか反応してないから多分無事なんだろう。


『どうにも播磨の連中が大江山の麓にも火を放ったようでな、その下手人を追って摂津まで釣り出されてきた大江山の鬼、だそうだ』


「大江山に住む鬼ってことだ。摂津に付いた時、門とそれをくぐった広場の修復してたのを見たんじゃねえか? オレと戦う中でこいつがやったことだ」


「オレト相棒ノ、友情! 努力! 勝利! 見セテヤリタカッタゼー!」


「始めは賭けの対象として盛り上がったんすけど、選手交代してから殴り殴られだけの泥仕合になったから、主様が凍らせて無効試合になったヤツっすよねー」


「摂津のために闘った人間たちに言う言葉か、それが?」


 何やら箱のようなものをいくつか持って後から部屋に入ってきた氷沙瑪に、話を茶化され不満顔の酒呑。あら、今まで半身に相棒の距離感で話されるのを嫌な顔してた酒呑が、むしろ協働に水をさされたことに怒ってるなんて変わったものね。そもそも皆での協議の場じゃ一歩引いて話に入ってこない奴なのに、道満さまと話し出しが被るくらいこの娘との戦いに思うところがあったってところかな~?


「……頼光。そういうことじゃねえからお前もムカつく顔やめろ」


「おやおや? 仲良しは良いことよ。恥ずかしがることじゃないって」


「はいはい、じゃれ合いも結構だけど邪魔だからちとどいてくれよ――と、手が空いてるやつはこれを氷を囲むように置いてほしいっす」


 持ってきた箱を氷を囲むように指示されたから、受け取ろうと近づいたところ腕から火車が飛び出そうとしたのでギリギリ止める。


「これ――――呪道具やんな!? 何? どういう効果なん?」


 嬉々として箱を運ぶ呪動具大好き茨木ちゃんが、うっきうきの声で氷沙瑪に聞くと、氷沙瑪がニッコリと答える。


「熱風を出すんすよー。その方が氷も早く溶けるってもんす」


「え? 封印を解くって道具頼みなの?」


 茨木ちゃんが「あ……」って微妙な顔したから代わりにツッコんだだけなのにお尻を蹴られる理不尽。とはいえうっかり火車が解放されないように滅茶苦茶手加減されてたので、何の問題もなし。やらかした時の道満さま対策見つけたかなこれ。


『今の季節凍ったままなのは、氷が溶けたその瞬間に再び凍るように術をかけているからだ。私が術を解かん限り永遠に凍り続けるのだから、封印を解くという言葉に偽りはない』


 なんとなく早口だった気がする道満さまが「後は任せる」と退室したのを見て、酒呑にこの娘について聞く。


「それでどう? 氷が溶けたらそのまま落ち着いて話が出来る感じ?」


「イヤ。真ッ当ナ頭源氏ダカラ、襲イカカッテ来ルンジャネ?」


「使ってた斧がねえから多少は楽かも知れねえけど、力はオレより強えから見た目で侮ったらやべえぞ」


「へー! それじゃまず私が1人で戦ってみていい? 皆は壁まで下がってて……」


「おい、馬―――!!」


 闘いの準備をしようと腕の力を抜いた途端、するりと抜け出した火車が出入り口に向かって全力で駆ける! それを阻止しようとした綱の高速体当たりを軽やかに躱し、空気を読んで防ごうとした保昌殿と致公くん、主の危機を察した氷沙瑪をすり抜けたけど、体勢を崩した隙に必死に戻った酒呑により首根っこを掴まれた。


「しゃー! ふしゃーー! Burn them all! Burn them all!」


「馬ッ鹿野郎! ちゃんと抑えとけって言っただろうが!!」


「頼光たちが播磨に言ってる間も、すーぐ抜け出そうとするから大変だったんだよねー。……途中から布団で簀巻きにしてたけどー」


 なるほど……さっき道満さまが梁の上に避難してたのも大げさじゃなかったわけね。いや、うん。四六時中命の危険にさらされてたとか、この小鬼みたいに氷漬けにしてない時点で聖人君子じゃない。


「いやマジで、仮に燃えるのが死体だけで霊魂の方は害がねえっていってもよ、シャレになんねえから2度と主様に近づけるの止めてくれね?」


「てか、火車ってこんな感じだったっけ? なんか野性味増してない?」


 たどたどしい言葉を話し、大怪我してる人間を見たら治療する優しい火車はどこへ行ってしまったのか。なんか頭がこんがらがってるとポンという音とともに猫精霊ケットシーさんたちが飛び出す。


「キャスを責めないであげて欲しいニャ! 受けた神託を嘲笑うかのように死体に入り込んで活動してる輩と生活をともにしてるこの状況がストレス半端ないんニャ!!」


「うーん、確かに火車と道満さまどっちにしても今の状況はよくなさそうね。今回のお使いは大江山ってことだろうけど、一緒に来てもらってそこからみやこの拠点に戻ってもらおうか」


「そうしてくれると助かるニャ」


「しかし神が何かしてくれるわけでもなし。空から高みの見物かましてるヤツの言いつけなんてほっときゃいいのにな。信じる者は救われるだっけか? 信じてほしけりゃ先に救えって話だ」


 いつになく饒舌じょうせつだったせいか、うっかり余計な1言を放ってしまったことを火車の表情から酒呑が気づく。まあ、首根っこを掴まれてるのに首だけぐるんと回して瞬きもせずに目を見開いてるの見れば私だって分かるけども!


Whatなんつ didった youてめ say? 今、主に、ふざけたことぬかした、デス? 不敬、Death?」


「悪かった! 今のは完全にオレが悪かったって! 好きなだけしゃーしゃー言っててくれ、そっちの方がよっぽどマシだっての!」


「よっし。どうやら矛先が主様から酒呑に移ったみたいだな! マジ、グッジョブ!」


「いやいや、全然良くないやろ!?」


 剣呑な雰囲気に包まれるなか、ピキピキと張り詰めるような音が聞こえる。ん? 張り詰める雰囲気とはまた違うけどなんの音―――


「熱っつうううううううぅぅぅぅッッッッツ!!??」


 大きな叫び声とともに氷の割れる音が部屋に響く。汗のせいか溶けた氷のせいか、全身をぐっしょり濡らした小鬼は呪道具をなぎ倒して転がると、部屋の中央で止まった。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――摂津源氏。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【芦屋道満】――摂津の遙任国司。左大臣・藤原顕光に仕える陰陽師。

*【雄谷氷沙瑪】――芦屋道満の腹心。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【源致公】――源満季の養子。本当の父は源忠賢。

【名もなき小鬼】――大江山に住む鬼。名前はまだない。酒呑との戦闘後氷漬けにされていた。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【呪道具】――一品物である宝貝を再現しようとして作られた歴史を持つ。宝貝は仙人や道士といった修行を積んだ人にしか扱えないが、一般人でも扱えるように魔力を込めた呪符を差し込み動かすことを想定している。のろいの道具ではなく、まじない=魔法の道具。

*【頭源氏】――脳筋・戦闘狂など人によって意味が異なる。摂津源氏においてはそれぞれがイメージする頼光みたいな考え方のやつという意味。

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