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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
2章 摂津争乱
37/210

【源頼光】大法要

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/2/21 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定

 蓮台野に集まった80人弱の人々が見守る中、野ざらしになってた遺骨を集めての大法要が行われている。


 火車と出会って半月。目を覆いたくなるような蓮台野の惨状と、『この世界は生きる者のためにある。けがれを残し生きるものに、病やさわりを運ぶ存在と成り果てた死者の肉体は炎で清めて天上に送り、この地に縛られてた魂には輪廻の輪にお戻りいただく』という火車の活動に感銘を受けた私は、みやこ周辺に転がる死体を集め燃やして回った。


 貴族たちは穢らわしいと眉をひそめてたみたいだけど、目に見えて穢物けがれものの数が減ったことで領民からは一定の支持を受け、手伝いたいと言ってくれる人も出てきた。その総決算が今行われてる保昌殿に紹介してもらった燃屍教に寛容な坊様を招いての大法要だ。


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「「「Ohhh! Burnもー themやー all! Burnもー themやー all! Burnもー themやー all!」」」


「「「ばーんぜもー! ばーんぜもー! ばーんぜもー!」」」


「あはは……頼光、坊主を呼んで法要を行ってもらってんだからさー、せめて南無阿弥陀仏って言わない? 坊さんもそれだけ唱えときゃいいってんだし」


 たしかに、言われてみれば坊様以外の全員が「ばーんぜもー!」の大合唱ね。なんか京での燃屍教の布教が順調に進んでるとか、その人たちから私が幹部扱いされてるとか、わりと予想外の方に進んでるのよねー。


 しばらくして法要も終わり集まった民衆たちがばらばらと散っていく。特に護衛もなく談笑しながら解散していけるってのは、この辺りが安全になった証拠って感じがしていいわね。


 そんな様子をひと通り眺めてると、火車が満足げに話しかけてきた。


Fantasticすばらしい! これでこの街の人、安心デス。死体、なくなり、病気、なくなり、皆、Happy!」


「そういえば、変に悪目立ちするよりはと仏教の法要という形を取ったけど、火車の信じる神様的には良かったの?」


「No problemだいじょーぶ。主は言ったデス。死体を燃やせ、全力で生きろ、己を鍛えろ、死体は必ず燃やせ。この理念さえ守る、他の宗教があっても、そこにも広める、デス。私のこと、魔女言った、救世主信仰みたいなとこに広める、デス」


 死体を燃やすことを口酸っぱく言ってくるあたりなかなか変わった神様ね。でもこの半月間ずっと一緒に行動してたおかげでそれなりに信頼してもらえたのか、日ノ本で活動するには都合がいいということで、そのまま火車という名前を使い始めた彼女と猫精霊たちは大枝山の拠点で生活してる。


 そうなると残る問題は1つというところで、法要に参加してた保昌殿が声をかけてきた。


「HAHAHAHA! ローマン神聖国などで広まる救世主信仰では火葬はご法度ですからな! ……さてお預かりしていた例の件ですが播磨から摂津への破壊工作、というのが濃厚です」


「あー、道満って異国との交易で相当利益上げてるみたいだし、嫉妬とかヤバそうだよねー。なんか文句言われても燃屍教徒がやったことってするわけだねー」


「えー……国司になるとそういうのもあるの……?」


「あははー、そら国司になりたがる理由って蓄財のためが1番多いんじゃない?」


 あの日、摂津の蔵を燃やしたのが燃屍教じゃないという疑惑が生まれた時、その調査に名乗り出たのが保昌殿だった。左大臣派の道満さまの所領での事件ということで、右大臣さまの部下である保昌殿にお任せするのってどうなの? と思わなくもなかったけど、そこは自他ともに認める『異国かぶれ』殿、派閥とかそんなことよりも蔵にしまってあった異国の品物が被害にあったということで入れ込みようが半端じゃなかった。


 しかも半月と期限を切ってくれたから、ダメだったらダメだったで次の行動に移りやすかったし、その間に火車と親睦も深められて当初の目的通り摂津源氏に加わってもらえたから結果オーライ。火車との付き合いの中で少しづつ異国の言葉も覚えてきてるしね!


 ……それより異国の品物いくつか贈れば、保昌殿も引き抜けるんじゃないのと思うくらいには保昌殿の右大臣さまに対する忠誠心低いのよね。本人も自由武士の方が合ってるって言ってたし。


 そんな失礼なことを考えてると保昌殿は首を振り、ぱちんと鳴らした指で私のことを指してきた。


「残念ながらマドモアゼル、今回の騒動の原因は摂津守ではなくあなたが摂津源氏を名乗ったことにある」


「あははー! え、なになに? また知らんうちになんか無礼働いてた感じなのー?」


「いやいや、期待されてるとこ悪いけどなんの心当たりもないんだけど……?」


「それについて、それがしから説明させていただくであります!」


 面白がって身を寄せてくる綱を引き剥がそうとしたとき、保昌殿の後ろに控えてた1人の少年が手を上げて叫んだ。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【猫精霊】――火車に従う3柱の精霊たち。青白い炎に包まれた手押し車を押し死体を回収して回る。

【藤原保昌】――藤原道長配下。異国かぶれの異名を持つ。

【芦屋道満】――摂津の遙任国司。左大臣・藤原顕光に仕える陰陽師。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

【蓮台野】――墓地のこと。

*【穢物】――穢を浴びて変質した生物。俗に言うところのモンスター。

*【燃屍教】――破闇是無鏖留と唱えながら屍体を燃やすことを正義として信仰を集める新興宗教。

【南無阿弥陀仏】――修行僧じゃなければ、とりあえずこれだけ唱えとけばOK。称名念仏の精神。

*【ローマン神聖国】――イベリア半島~黒海沿岸にまたがるヨーロッパの大国。

*【自由武士】――主を持たない武士。穢物退治や物資輸送の護衛などで生計を立てる。俗に言う冒険者てきな方々

*【摂津源氏】――源氏の系統の1つ。現在所属7名、源頼光・渡辺綱・酒呑童子・茨木童子・火車・碓井貞光(暫定)・卜部季武(暫定)。

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