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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
1章 摂津源氏結成
26/211

【源頼光】結成、摂津源氏

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/1/05 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定

「それじゃ私たちは道満さ――まの命令に従って行動していく、ってことでいいんですか?」


『頼みたいことがある時は優先してもらうが、能力はすでに見せてもらっているからな。人となりを見るという意味でも思うままに行動してもらって構わん。ただ1つ注文をつけるのであれば、貴様も源氏なら大和源氏というのは知っているか?』


「大和源氏……大和と源氏って組み合わせどこかで聞いたことがあるような……?」


「だーかーらー、頼親よりちかが大和守だって今日だけで何度も言ってるじゃん。そいつを祖とする系統だっての。自分の弟なんだから少しは興味持と?」


「大和守の弟がいるのは聞いた気がするけど、大和源氏なんて言葉は初耳だし……」


 そもそも貴族うちらの婚姻なんて基本的に通い婚なんだから、母親が違えば住む家も違うし顔なんて合わせないじゃん? 母上みたいに親父まんじゅうにくっついて陸奥まで付いてったりは珍しい気がする。


『貴様の弟だったか。まあそれはどうでもいいのだが、大和源氏の首領である源頼親は【殺人上手】の異名を持つ右大臣・藤原道長の懐刀で、率いる武士たちは道長の政敵を排除して回る暴力組織だ』


 それって道満さまにとっての殺人上手になれってことね……。


 さっきの戦いは結果的に人死になしですんだけど、あの時の嫌な気持ちを思い出すと酸っぱいものが――――!


「分かってます。弟にできてることですから……私も覚悟、決めておきます」


 口を抑え、なんとかこみ上げたものを喉の奥に戻して無理矢理笑顔を作ると、道満さまは無表情のまま首を振り否定する。


『殺す覚悟ならいらん。この時代人の命は軽く、貴様自身これからも命をかけた戦いに巻き込まれるだろう。その中にあっても貴様は敵を殺さない、弟と真逆の道を進め』


 殺さなくていい、そう命令されて心は軽くなったけどその道はすごく難しいように思う。さっきみたいなギリギリの戦いの場合、懸かってるのは私だけじゃなく付き従ってくれる皆の命。それを危険にさらしても、私は人を殺さずにいられるのかな。


『陸奥守になりたいというのが友のためと言うなら、再開した時に躊躇いなくその手を取れるように血で汚すような真似はやめろ』


「あー! むちゃくちゃ言ってんなーと思ったすけどそういう……。あいッ変わらず過保―――ごッ!」


 また話の途中で蹴りを入れられ吹っ飛んでいく氷沙瑪。いや、いい加減学習しなさいよ……。とはいえどれだけ怒らせる態度をとっても蹴りで済んでるのがこの2人の関係性を示して―――って待てよ。もしかしてこれが殺さずってこと? 私にもこれを真似すればいいって道満さまが示してくれてるんじゃ……?


 なんてことを考えてたところ左肩を掴まれ振り返ると、左後方から表情を伺ってたらしい酒呑が、眉をしかめて細かく首をふる。どうやら違うと言ってるようだから、あとで皆で協議しよう。


『ともかく私から貴様に望むのはそれだけだ。あとは貴様を頂点とする組織を作り存在感を示せ。名前はそうだな……特にこだわりがないのなら摂津源氏を名乗れば良かろう』


「私の組織、摂津源氏――――!!」


 右後方に座る綱の方に振り返ると、私の独り言を聞いて歯をむき出しに獰猛な笑顔を浮かべてる。良かったこれで「あははー、それって誰々のところじゃーん」とか言い出したら、せっかく案を出してくれた道満さまが赤っ恥だったし!


 そんな小さな確認が済むと、胸からグツグツと熱いものがこみ上げてくる。


 体ごと振り返り居住まいを正すと、後ろに座る3人の方に手のひらを下にして左手を突き出し宣言する。


「今この時より私は摂津源氏を結成し、その長となる。正直至らないところばかりの私だけど、所属する皆が望みを叶えることができるそんな組織にしていきたい。もしこんな私でも付いてきてくれるなら、自分の望みを口にしながら皆の手を重ねて」


「あははー! ボクとしては何か粗相した場合に氷沙瑪がやられてるより少し威力抑えて尻に蹴りを入れて欲し―――」


「却下」


「あーあ。クソだわー摂津源氏クソだわー」


 そういえば今日は叱るようなことしなかったけど、常日頃優しく叱られたいとか言ってる綱。だけど、こういう時くらい真面目にやんなさいよ。皆ドン引きしてるし。ってあれ? 氷沙瑪もドン引きするのね。綱と同じで望んでやられてると思ってた。


「仕方ないなー、それじゃ清和を最強の座から引きずり降ろすってことで。あと左手こっちはこの場にいない2人の分で『我ら頼光様が進む道の尖兵とならん』ってとこかな」


 まずは右手を重ね、その上に貞光が言いそうな言葉とともに左手を重ねる。


「うちは大商人になる。そんで頼光には後ろ盾なって欲しい。おとんが罰を受けるの確定した以上、不退転の決意を持って頼光んこと支えたる」


 綱の左手を包み込むように小さな両手を乗せる茨木ちゃん。


「オレは……まぁ誰かと一緒に安穏とした生活できればそれでいい」


「ソウナルトオレハ振リ回サレル相棒ガ見テエナ!」


 酒呑が重ねた右手の上に、うまいこと右手の甲を重ねる鬼。


「頼光の陸奥守就任からの陸奥独立! 頼光が総大将で富ひ――ちゃんを国主とした渡島と出羽の蝦夷を巻き込んだ大連合による倭人やまとびととの合戦――――おッ!?」


『謀反を唆すな。それに貴様は私の直属だ』


 まーた蹴り出されて泥まみれになった氷沙瑪が「ちぇーこっちの方が面白そうなのに」と戻って来る。……振り向いて分かったけど、ほんとにちょっと羨ましそうな顔してるのねこいつ。そんな綱の癖に呆れてるところ酒呑が顔を寄せてきて耳打ちする。


「氷沙瑪ってやつの今の発言だが、一切の嘘も冗談もないマジのものだった。念の為頭に入れとけよ」


 冗談ぽく言ってたと思ったけど、酒呑がそう言うならそうなんだろう。納得して俘囚ふしゅうになったわけじゃなく、内心わだかまりが残ってるのかもしれない。


 なんにせよ私はともかく富ちゃんまで巻き込もうとするのは止めて欲しいかな。


『話はまとまったようだな。それで貴様らの拠点だが、京と摂津どちらに置くつもりだ?』


「拠点……。本当ならこっちに置きたいところですけど、屋敷に住み続けるって親父との忌々しい約束があるので……京で適当なところ見繕おうと思います。とりあえず酒呑が気兼ねしないで住める所があればいいなと」


「あははー……まさかここまでトントン拍子に事態が動くとは思わなかったからねー。余計な約束をしたもんだー」


「親父との約束なんざ無視しちまえばいいなじゃねえのか?」


「あははー、ブチギレたおっさんによる摂津国滅亡からの頼光再幽閉の未来しか見えないんだよなー」


 ここにいる全員に親父のヤバさが伝わったことで、拠点は京の城壁の外にある左大臣さまの別荘を貸与してもらえることになった。氷沙瑪は牛車の中の罪人たちを町に送るためここで分かれ、私たちは道満さまの案内のもと京へ向かう。


 いつの間にか雨は止み、私たちの未来を照らしてくれてるかのように雲の間から茜色の夕日が姿を覗かせた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――源頼光の配下。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。

【酒呑童子】――人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

【芦屋道満】――摂津の遙任国司。左大臣・藤原顕光に仕える陰陽師。

*【雄谷氷沙瑪】――芦屋道満の腹心。

【富ちゃん】――陸奥の山奥にある屋敷に1人で暮らす頼光の友人。

【碓井貞光】――源頼光の配下。平安4強の1人。

【源頼親】――藤原道長の配下。大和守。殺人上手の異名を持つ。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【摂津源氏】――源氏の系統の1つ。現在所属6名(2人は同意なし)。

*【清和源氏】――源氏の系統の1つ。『鉄壁の清和』と呼ばれる。

【渡島】――現在の北海道。

【出羽】――現在の秋田県辺り。

【蝦夷】――陸奥や出羽にあたる地域に土着してた先住民。

【俘囚】――朝廷に降った蝦夷のこと。

*【倭人】――大和朝廷から続く、大体畿内に住む日ノ本の支配者層。蝦夷など各地域に土着してた人々から侵略者に近い意味合いで使われる。

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