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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
1章 摂津源氏結成
23/210

【源頼光】雨中の戦い その4

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

2025/1/04 修正

 ・一部加筆・修正

 ・段落の設定


「あっぶなー!? なんだよいきなりー!」


 雹にさらされる綱たちに向かって、酒呑の錫杖を投げ渡すと酒呑に合図を送る。


「よっし、綱。お前はそれをあいつに向かって思いっきり投擲なげろ」


「あはは、ボクが投げたところで弾かれるのがオチだけど―――――ね!」


 豪雨の裂いて飛ぶ錫杖は、予想通り途中現れた氷の壁に弾かれ地面に転がる。だけどそれはあくまでも囮。相手の意識が錫杖に集中したのを見て酒呑が全力で走り、氷沙瑪ひさめが復帰した時すぐに使えるようにとそのまま放置されてた錨に手をかける!


「オッシャー! 奪取ダゼー!」


「いけるか!?」


「任セロ! 喰ラエヤアアアアアアッッッッ!!!」


 気炎万丈、大声と共に繰り出された錨は空高く豆粒のように舞い上がる。あんな重さの物体がどこに落ちてくるかもわからない、そりゃ視線も上に向けちゃうよね! 距離は50m程度、足止めさえなければ4歩もあれば十分!


 私に気づき体を凍らせようとしてくるけど、皮膚を滑り落ちるのを見て『くそッ』と毒づいた相手はしゃがんで足元の水たまりに左手をつける。


『失せろ倭人やまとびと!』


 そう叫ぶと水たまりが槍衾を成して飛び出す。ここに来ての新技だけど、さすがにこれくらいは想定内。いつも戦ってる綱たちの攻撃に比べてだいぶ見劣れするし、動きに制限さえなければなんてことなし!


 目の前に飛び出た氷の槍に足をかけ、そのまま後ろに回転する要領で連なる氷槍を蹴り上げると、砕けた氷が宙に散った。残る距離は既に5m程、相手の濁った両目とバッチリ目が合う。


『うかつだな倭人。その体制からでは避けられまい』


「さっきはぜひ教えて欲しいと思ったけど、タネさえ割れれば真似するのもそう難しいことじゃないのよね」


 その言葉を聞き右手で作った氷柱を雑に打ち出すと、左の肩越しに後ろの水たまりを凍らせ滑るように距離を取ろうとするけど今更もう遅い。


 宙に浮かぶ氷を蹴り急降下して振り向いてる方とは逆、右の腰に手をかける。相手を寄せ付けず大きく動きもしない戦闘形式から勝手に思い描いてた肉体とは違い、分厚い生地の上からでもはっきり分かる鍛え抜かれた筋肉の質感。それを両手に感じながら相手の腰をお腹に乗せて、湿田の方向めがけて思い切り跳ぶ!


『離せ! 汚らわしい手で私に触れるな倭人風情が!!』


 力ずくで引き剥がそうと握られた右腕からバキバキと嫌な音が響くとともに襲いかかってくる目が眩むような激痛。……やば、最後の最後で選択肢間違えたかと思ったけど、相手も対応を間違えてくれて助かったわ。


 左右両方の腕をそれぞれの手で握りつぶされてたら絶対に支えきれなかったと思う。それでも左手で砕けた右腕をしっかりと掴み、飛びそうになる意識を繋ぎ止めるため腹の底から大声を上げる!


「必殺・黄泉よもつ――――――――落としッ!!!」


 意識するのは占い師さんが叩きつけられてた格好いい投げ技。


 離れたところに落ちた錨の轟音とともに、湿田に1人の人間が逆さに植え付けられた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――源満仲の長女。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――源頼光の配下。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【茨木童子】――大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。

【酒呑童子】――人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えてることを読める。

【芦屋道満】――摂津の遙任国司。左大臣・藤原顕光に仕える陰陽師。

*【雄谷氷沙瑪】――芦屋道満の腹心。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【倭人】――大和朝廷から続く、大体畿内に住む日ノ本の支配者層。蝦夷など各地域に土着してた人々から侵略者に近い意味合いで使われる。

*【黄泉落とし】――頼光式ジャーマンスープレックス。バルログで例えるならスカイハイクローのモーションで跳んでくるイズナドロップ。

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