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【源頼光】宝貝の使い方

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

 出発の時間目前となり、寺の門の前にみんなが集まった。本当ならすぐにでも出発というとこだけど、罠に無策で突っ込むわけにもいかないし、それには積もった雪が邪魔。


「私の認識だと、宝貝ぱおぺえって仙人様以外には扱えない物で、それを万人に使えるようにしたのが呪道具。ほんの少し使い方教わっただけで使えるものなの?」


「それは頼光次第だね。仙人にしか使えないっていうのは間違いで、正確に言うと仙骨を持つ人間にしか使えない。ちなみに乙種以上の宝貝の話で、丙種以下の物は誰でも使えるよ」


 仙骨――どこかで聞いたことがあるわね。確か……。


「仙人になる素養がある人が持つ骨、だっけ? 青竜の首から上がそうって話だったわね」


「やたら頑丈なやつな。その言い分だと頼光コイツも持ってるのか?」


「あははー、そう言われるとあっさり腑に落ちるものがあるねー」


 そう言った綱が私の履物に視線を向けた。確かに呪道具といえば呪符を使うもの、言われてみれば、これは宝貝に近いのかな。


「これを爆発させたりできるなら、宝貝も使えるってそういう話ね」


「いや、仙骨の話しとる時に何言うとるん。そこにあるんやろ?」


「そうだね、頼光の場合両足首の付け根。足首がぐりんって反対になってたでしょ? 普通、バッキバキのグッチャグチャになって、あんな愉快なことにならないから」


「壊れねえ部分があったからこそ、おかしなことにもなったってことか」


「あははー、そもそもあの速度で動いても足が壊れないのが、不思議だったんだよねー」


「なるほど……」


 つまり修行を積めば、私も仙人様の仲間入り出来る素養はあるということかしら。でも今はこの万里起雲煙? って宝貝さえ使えればいい。


「さっきも少し触れたけど、宝貝は甲乙丙丁の4種に分類されるんだ。丁は影繍鸞刀えいしゅうらんとうみたいに『影に刺す』という風に、規定の動きをすればいい。丙は……頼光も言ってたけど、その靴もそうだね。そこに道力を直接流し込むことで使うことが出来る」


「あ、やっぱ専門の菡芝仙かんしせんから見ても、これって宝貝なのね」


「うん。というより呪道具というのが、完全に宝貝の発展形なんだよね。自分じゃ道力を練れない者でも、他人に練ってもらった道力で扱えるとか天才の発想だよ。そんなものを考案した人間に会えるのを楽しみにしてるよ」


 なんだかんだ今回の土蜘蛛攻め――というよりこの山に住む職人さんたちに会いたいと、1番積極的なのは菡芝仙。うんうんと頷いた後、思い出したかのように続ける。


「丙種も扱える人間は限られるけど、道力を練れる人物自体はそれなりにいるでしょ? それでもってそんな輩は大抵力に溺れてるわけで、乙種以上の影響範囲の大きな宝貝を扱うには、不適当なのばかりになるわけだ」


「偏見が凄い」


「そんな輩が扱えないように、徳を積んだ正しき仙道のみが使えるよう、安全装置を付けられてるのが乙種以上だね。要するに建前として品格と能力を併せ持たなければ使う資格なし、ってなってるってこと」


「はーい。俺様の一族、そんな仙道サマのせいで棲みか追われたんだけど? クソみてえな仙道サマ方の戦争に巻き込まれて、生き残ったの俺様と愚弟だけだけど? 説明してみろや自称品行方正さんよー」


「建前、って言ったでしょ? 昔、鴻鈞道人という仙人が、通天教主、元始天尊、太上老君という3人の仙人を弟子として育てた。まず自尊心を育て、自分の意見に賛同する者たちで派閥を作らせ、互いに大きな組織を持ったところで、敵愾心を煽り宝貝を作って渡したんだよね。するとどうなったか? 自分は特別な存在だ、自分の意見は絶対に正しいと考える派閥間で宝貝を使った闘争が始まった。以前は思想の違いなんて議論で解決しようとしてたのにね。仙人様とかありがたがられるけど、実態はそんなものだよ」


「テメエらもその一員だろうがよ。何で他人事なんだテメエ」


「だって思想とかどうでもいい、とにかく自分の好きなことやってたいんだってのが究道派わたしたちだし」


「それより鴻鈞道人……ってあれよね? こよみにもなってる最高に偉い仙人様。菡芝仙の言い分だと、相当ろくでもないヤツみたいに聞こえるんだけど……?」


「ろくでもないよ。12天将ってのは4凶の誅滅を目標として集まってるわけだけど、その4凶の筆頭が鴻鈞道人こと、混沌と呼ばれる邪神だ」


「邪神……」


 響きだけでとんでもないのを相手にしてるんだなと思ってると、派手な兜と鎧に身を固めた弟くんが近寄って来た。


「すいません姉上。兄上からの指示もあります。先鋒をお任せいたしましたが、出発なさらないのであれば、我らが先発いたしますが?」


「ごめんごめん。もしうまく使えたら進軍速度で挽回できるからちょっと待ってて。悪いけど菡芝仙、ぱぱっと使い方教えてもらっていい?」


「そうだね。まずはこことここを握ってもらって……練り上げた道力を1度仙骨を通す様に、体の中を巡らせた後に宝貝に流し込むんだよ」


「体の中を巡らせる……? こんな感じかな」


 頭、腕、足と順番に体を意識した後に、握った手に気力を漲らせると、菡芝仙は目を閉じて首を横に振った。


「それだと手で道力を練り上げただけでしょ。練り上げたものを体に流すんだよ」


「そう言われても、全然どうすればいいか分からないって」


Maybe(たぶん)、心臓を動かして血を巡らす、そういう、image(イメージ)、じゃない、デス?」


「血……? ごめんますます分からない。血を巡らす……? 体の中から湧いてくるものでしょ?」


「仕方ねえ反応、デスね。いい、デス――――?」


「姉上……」


「すぐ終わる! すぐ終わるから、本当にもう少しだから!」


 弟くんを宥めながら、火車に注意を向ける。


「人の体、いくつかの道がある、デス。For() example(えば)、食べ物を摂る、胃に入り腸を通って、尻から出る、デス。As you(ご存じの) know(通り)、食べ物、血肉になる。尻から出ない、何故か、体の中で血の道に移る、デス」


「ふむふむ……?」


「血の道、体中を巡る、デス。The reason(それと言) is that(うのも)、血、生きるために必要なもの、全身に運ぶ。マヤーでも研究中の分野、デスが、それこそ肉を作るものとかも、デス」


「……人間の内腑見たことないけど、大江山で熊童子のおっちゃんと陸の動物捌いたんと似たようなもんなら、確かに食べ物が血肉になる考えたら、腸から離れた場所、腕や足に肉がつく理由が分からんな。そんでどこを怪我しても血は流れ出てくること考えたら……でも、体の中の道を巡るってなるとどうなん? 足にどんどん溜まることにならへん? 川が低いところから高いところに流れることが無いように」


「………………ふむふむ?」


That's a(当然の) valid(疑問) question(デスね)、故に心臓があるとされる、デス。保昌、水の入ったかめ、出せる、デス?」


「もちろんだとも」


 水がなみなみと入った甕が謎空間から取り出されると、おもむろに火車が両手を突っ込んだ。その手は時々火車が神様に祈りを捧げる時と同じように、指を交互に組まれてる。


「水が血、手が心臓、デス。胸に手を当てれば、分かる、デスが、常に脈打ってる。こんな感じ、デス」


 火車ががっちり合わせた両手をぶつけるように動かすと、小指側の隙間から押し出されるように水が飛び出した。


「おー、オレも水遊びのとき良くやるヤツだぞ!」


「なるほど……押し出された血は道に沿って流れを作る。それが常に行われるから、血は足に溜らず全身に巡るっちゅうことか」


「……つまり宝貝を握ってるとこに気を練るんじゃなく、心臓で気を練って、体の中に作った道を通すのを意識すればいいのね? 了解、やってみるわ」


「ま、出来れば儲けもの。言うほど簡単じゃないけどね。それこそ長年の――――」


「うおッ!!」


 宝貝を握る場所を無視して、胸の奥を意識して気を練り上げると、途端に万里起雲煙がまばゆい光に包まれ、見ていた仲間から声が上がった。


「ええ……何でそんな簡単に出来ちゃうかな。私なんかどうやってもできないのに……」


「丑御前から闘気の道を作る方法は教わってるからね。それを体の中に通すのを意識しただけよ」


「おお、オレでも姐御の役に立てるんだな、嬉しいぞ」


「いつも頼りにしてるわよ。それで、これからどうすればいいの?」


「……後は熱を流したいところに杖先を置くだけだよ。今回は地表だね。それで思いっきり叫べばいいんじゃないかな。あ、発動時に動かすと直線的に熱が飛ぶから、動かさないようにね」


「使い方教えてくれといて、出来たら何で落ち込んでるのよ……」


 なんか人差し指どうしでツンツンし始めた菡芝仙の言う通り、地面を見る。……朱雀さんにしろ、青竜にしろ宝貝の名前を叫んでるの見たことないけど、言われた通りにやるかー。


「万里ッ! 起雲煙ッッ!!」


 杖先を地面に刺さらないように立てて叫ぶと、ボンッと音が響いて視界が真っ白な霧に包まれた。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【渡辺綱】――摂津源氏。平安4強の1人。源氏の狂犬の異名を持つ。

【碓井貞光】――摂津源氏。源頼光の配下。平安4強の1人。

【卜部季武】――摂津源氏。夜行性の弓使い。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【茨木童子】――摂津源氏。大商人を目指す少女。商才に芯が通っている。本名月子。

【酒呑童子】――大江山首領。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【虎熊童子】――虎柄のコートを羽織った槍使い。

【丑御前】――大江山に住む鬼。頼光を姐御と慕う。

【橋姫】――摂津源氏。橋の守り神。元は橋建設のため人柱になった女性。

【菡芝仙】――截教究道派の仙人。朱雀の盟友。

【鴻鈞道人】――宝貝を配って戦争を激化させた戦犯。混沌の創り出した観測者のこと。周の武王には感謝されている。

【藤原保昌】――藤原道長配下。摂津守。異国かぶれの異名を持つ。

【源頼信】――源満仲の次男。頼光とは異母姉弟。河内守。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

宝貝ぱおぺえ】――仙道が扱う不思議アイテム。甲乙丙丁にランク付けされる。

*【呪道具】――一品物である宝貝を再現しようとして作られた歴史を持つ。宝貝は仙道士にしか扱えないが、一般人でも扱えるように魔力を込めた呪符を差し込み動かすことを想定している。のろいの道具ではなく、まじない=魔法の道具。

【万里起雲煙】――杖の形をした宝貝。杖先から高熱を発する。

*【影繍鸞刀】――王貴人(玉石琵琶精)が西岐軍と戦った時に繍鸞刀を使ったとアラクシュミが複製した封神演義に書かれていたのを、混沌(観測者)がノリと勢いでオリジナルの宝貝として仕上げたもの。影に突き刺すとその持ち主の動きを封じられる。

*【仙道】――仙人・道士。霊山に入り道術の修行を行う人間。弟子を取るほど術を修めた道士が仙人と呼ばれる。

*【究道派】――金霊聖母を長とする截教の派閥。ストイックに修行のみを追求するが、殷の聞仲を迎え入れたりと、修行に全力で臨みたいという俗世の人間を迎え入れるくらい懐が深く、門戸も広い。

*【マヤー文化国】――火と文化ルチャの神・ケツァルコアトルによって生み出された国。現在のメキシコ一帯に広がる大国。ルチャによる怪我の治療を重ねた結果、医術が異常に発展している。

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