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平安幻想譚~源頼光伝異聞~  作者: さいたま人
3章 集結、頼光四天王
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【源頼光】宇治橋の戦い その4

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

 背丈は140㎝を少し越えたくらい。水色の髪は前は前にかからない様スパッと真っすぐに切りそろえられ、後ろは肩にかかるくらいの長さ。


 ゆるゆるの帯でだらしなく留められた青緑色のはだけた着物の下からは、白い肌が見え隠れしてるあたり襦袢を着けずに直接着物を着てるみたい。


 この娘が何者かは分からないけど、この角と尻尾はあれね。大江山で火車から聞いた―――



 虎熊との闘いを終えた後、傷ついた鬼たちを順番に治すためしばらく滞在してた時のこと。私たちは私に起きた体の変化、つまりドラゴンについての説明を受けた。


「要は日ノ本でいう天狗なんだけど、異国ではより研究が進んでるってのは分かった。こっちじゃあまりの高慢ぶりに鼻が伸びたり、空から他人を見下すためにカラスみたいな見た目で羽が生えるって言われてるけど、なんかひと目で分かる要素ないのか?」


「Interestingおもしろ。というより、日ノ本、結構やばいデスね。人に近い姿、かなり危険、デス。Dragon、最終形態、一般的に、角の生えたトカゲ、デス」


「え? 人間が悪魔? だかに唆されてーって話よね? 何でトカゲ?」


「それだけ聞くと、竜神様とか想像してまうな」


「何でと言われると困る、デスが、そう言うものとしか。そこまでいく、手遅れ。肉体は圧倒的、デスが、知性の欠片もない悪魔に使役されるだけの愚物、デス」


「あれれー? そうなると満仲おっさんは行くとこまでは行ってない感じー?」


「人に近い姿の方が危険ということは、満仲殿やマドモアゼルのように力だけを得ることも可能ということなのでしょう」


「あ、私の場合は体が覚えてたから、そのままの動きが出来たってだけで、火車からは2度とやるなと言われてます」


 着地に失敗して明後日の方向を向いた足の治療の時、折れる以外にも相当なひびが入ってたらしい。記憶のなかったときは、勝手に傷が治ったりとか人の体じゃなくなってたみたいだけど、私の体じゃいつもの動きがギリギリだったらしくて、出力を上げるとダメとか。それでも少しづつ慣らしていけば体もついていけるかもって感じらしいけどね。


「ブリターニャだと、Dragon化が進む人間、鱗生えたり、翼生えたり、人によってさまざま、デス。But、最終形態の手前、角とトカゲのような尻尾ある人間、肉体・知性・欲望・悪魔の誘惑に逆らう精神力を兼ね備えた、1番危険。唆した悪魔すら御せない、最悪の存在、主の敵、デス」


「あれ、もしかして私も道満さまみたいに、火車から狙われる未来もあった感じ?」


「わっはははははー! そうなってもオレは姐御の味方だぞ! にしても、そんな神の敵とか倒したらかっけーよな!」


「馬鹿かテメエは。元の強さにもよるんだろうが、あの時の頼光よりも肉体的にヤベーだろう相手、テメエにゃどうにもなんねえだろ。出会ったらさっさと逃げろよ?」


「わっはははははー! そんなかっこわりー真似できるかってんだ!」


Wellよく saidいった! 主の敵、滅すべき相手、逃げる許されない、デス。刺し違えても倒せ、デス」


「命大切にせえってのが、神の教えちゃうんかい」



 呆れた感じの茨木ちゃんのツッコミの後は、完全に雑談って感じになったけど……この娘の特徴、完全にそれよね?


 うーん……これが外なら虎熊の言う通り逃げの一手なんだけど、場所が場所だし何より結構頭がくらくらしてきてる。ここなら息もできるし、外の皆がどうにかするのを待つのも本当ならありだけど……さっきまでは息が出来なくて時間がーって感じだったのに、血が少なくなってきて時間がない感じ。


「結局この娘はなんなんだろ? 謎クラゲが私と同じように取り込んで、その力を利用してるとか? ……にしてもこの状況でのんきねえ」


 ここに着いてからというもの、攻撃も妙な笑いも止んでるあたり、謎クラゲにとってこの娘が起きることは都合が悪いことなんだと思うのよね。とはいえ相手の不都合が、こっちの好都合とは限らない。


 それと……火車が言ってた人がドラゴンになる要因は傲慢・憤怒・強欲・嫉妬・色欲・暴食・怠惰。その中でこの娘は何かって言われたら、1番可能性が高そうなのが怠惰なのよね……それの睡眠を邪魔するって、どんな理由があるにしろその時点で喧嘩売ってるってとられるわよね……?


 でもまあ……もしここに閉じ込められてるなら一緒に出ようって提案してみて、残りたいって言われても、せめて珠から溢れてる水だけでも止めてもらえないか頼んでみよう。供給さえ絶てれば、謎クラゲの体は水を消費するだけ小さくなっていくんじゃないかしら。


「―――よし、なるべく怒らせないように、優しく声をかけて……」


 狭い空間、寝ているドラゴン(仮)の肩を叩くため近寄ろうとしたとき、急に目の前が霞んだ。やば……想像以上に血が抜けて立ってられな――――……。


「――――――~~~~~~~~ッ!!!!!!」


「あ、ごめ……」


 立ち眩みを起こして尻もちをついた。うん、裸足の指の上に。声にならない悲鳴を上げてるみたいだけど絶対痛いよね。これは私もやられたら怒るなー……。


 体を起こしたドラゴン(仮)は持ってた珠を私の方に突き出してくる。


「―――定海珠」


「ッ!?!?」


 ドラゴン(仮)が何か呟いたと思った次の瞬間、既に私は水の中にその身を叩き込まれてた。


 やっば……ッ!! 何これ体がバラバラになりそうッ!! 渦巻く水流は、爆発で前に進んでた時とは比較にならないくらいの速さで私の体を押すッ!


 暗い水の中を押し流されることほんの数秒、星明りに照らされてる程度とはいえ、私は明かりの中に押し出された! これ、地面に叩きつけられる!


 でも大丈夫―――頼光爆発脚ライコーキックエクスプロージョンの着地に失敗して骨を折った私はもういない。あの後、虎熊にさんざん受け身の下手さをからかわれたし、みっちり鍛錬を重ねて来た――――あ、やっぱ無理。


 外に出てから1秒も経たない間に地面に叩きつけられ、そのまま押し付けられながら20mくらいの轍を作ったところで、私の体はようやく止まった。


 うん……生きて帰ってこれたのはいいんだけど……まだ掻き鳴らされてるはずの琵琶の音すらまともに聞こえてこない。


 周りの状況もろくに確認できないまま、私は意識を失った。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【火車】――摂津源氏。ブリターニャ出身の精霊術師ドルイダス。生者を救い、死者を燃やすことを使命とする。本名キャス=パリューグ。

【酒呑童子】――大江山首領。人の体と鬼の体が同居する半人半鬼。相手の表情から考えていることを読める。

*【外道丸】――酒呑童子に取り憑き、半身を持っていった鬼。

【虎熊童子】――大江山前首領にして最強の戦士。虎柄のコートを羽織った槍使い。

【橋姫】――橋の守り神。元は橋建設のため人柱になった女性。

【六合】――12天将の1柱。前3位。琵琶を担いだ2股の尾を持つネコ娘。

【青竜】――12天将の1柱。前5位。スライム状の何か。

【大裳】――12天将の1柱。後4位。安倍晴明直属。陰ながら京の治安維持を務める。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【Dragon】――『心を見透かす者』の名を冠する悪魔王(第6天魔王と同一存在)、またはその眷属(天狗と同一存在)を指す言葉。

*【ブリターニャ】――現代のイギリスにあたる国。

【定海珠】――混沌(分身)が作った宝貝の内の1つ。

*【頼光爆発脚ライコーキックエクスプロージョン】――頼光の必殺技。崩しの蹴り連打からの1連の動作含めての必殺技。ライダーキッ―――ではなくイメージ的にはVPヴァルキリープロファイルのニーベルン・ヴァレスティを超高速の蹴りだけでやる感じ。

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