1 徽章
2
ギルドの建物から出るとすぐに一人の大男がマスクをし近づいてくる。
人々はどよどよと近づく大男と私の方に注目が集まる。
マスクをし上半身裸の男、方や全身黒くコートとフードで体を包み正体を隠してる二人向き合い立っているその光景は異質でしか無い。
足早にその場を去ろうとすると大男は肩を掴み、マスクを外す。
「カペラだろ!お前まだこんな辛気臭ぇ事やってんのか!?」
「セラムさん」
特徴的な傷だらけでゴツゴツとした肌と筋肉質な体格に恵まれた骨格、ちいさく髪を結ぶその男は「セラム」。
かつての”支配の龍”を倒し英雄と称えられたパーティの一人である。顔を真っ赤にし、口からはお酒の匂い。
彼は恥ずかしげもなく大衆の前にも関わらずガハハと大声で笑い、私の肩から手を離した。
「スターキャリアーなんて下っ端仕事や勇者崩れの仕事だろうによぉ、お前さぁ俺らチームの名前に泥塗るつもりか?永栄ある勲章が泣いてるぜ」
「私はこの仕事に誇りを持ってるんです、セラムさん」
腰のベルトにつけた勲章をチラチラと私に見せ言う。
「この勲章すげえぜ、これチラつかせりゃどこでも入れるしよ、なんだって貰えちまう。多少の問題も誤魔化しもみ消す事だって」
「相変わらずだね、あなたって人は」
「そんな目で見んなよカペラ、冗談だよ・・・。
まあでも実際俺らの中じゃろくな使い方してない奴もいるがな、それにお前もそんな見窄らしい姿しなくてもこれつけてりゃ白昼堂々歩けるどころか英雄って称えられんだぜ?」
「そんなの有っても無くても一緒だよ」
私のその言葉が気に食わなかったのかあからさまに機嫌を悪くし彼は言う。
「随分と御大層だなカペラ。いつからお前俺より偉くなったんだ?化け物」
苛ついた表情を見せ背を向け「あばよ」と一言捨て台詞の様にっ彼はその場を立ち去る。
いつか見た果敢な姿、彼にもうあの頃の面影は無い。
嫌味な性格だけが残った彼を哀れにも見える。
隣に立つ人影からの視線、そこにはさっきまで部屋で業務をこなしていた所長がセラムの後ろ姿を呆れ顔で見ていた。
ざわついていた賑わいを見てやってきたのだろう。
「セラムのやつ今は闘技場で八百長やってチャンピオンやってるんだよ。
風の噂でみんな知ってるから評判も最悪であいつ自身その事も分かってる筈なんだが、名誉欲と言うのは恐ろしいよ自暴自棄になって日中酒浸り。
もうこの街に彼を慕う人なんかいなくてね。仲間のよしみ、邪険にしてやらないでやってくれカペラ君」
「大丈夫です、所長」
セラムの言葉、姿、当時のパーティのみんなは思い思いに変わっていった事を改めて実感した。
もうあの時の私達ではあり続けられない。
3
日も暮れ始めた頃に城郭都市カラットを離れた。
見渡す限りの草原、簡単に整えられた道を進み街からしばらく離れた先にある"ノコラズノ森”と呼ばれる場所へ向かう。
目的地である”トリル・サンダラ”の通り道に”ノコラズノ森”という樹林地帯がある。
”トリル・サンダラ”は一面砂の世界。広大で何も無い砂の土地で闇雲に探しても探し物は見つからない。
だからこそ、その森でひっそりと住む彼の探索に長けた知識や魔法といった能力が必要だった。
街から離れてから休まず歩く、気が付けばもう日は落ちている。
思えば依頼をこなし報告のため帰ってきて新たに所長から託されたこの依頼。
休みなしに動き続けている事に気がつくと一気に疲れが来る。
完全に日が落ち切る前、明るいうちに歩みを進め野宿出来る場所を探した。
野宿は基本的に危険で盗賊や魔獣といった被害も多い。
しかし幼い頃から慣れている野宿、ある程度の土地勘や治安の把握をしていればあればそういった問題に直面する事は特に多くは無い。
慣れた手つきで野宿の用意をし、重いコートを脱ぎテントで一休みをする。
相当疲れていたのかその夜は晩御飯も無しに眠りについてしまう。
目を覚ませば日を跨ぎ早朝。
日が登り始めたくらいの時刻、予定より早めの出発。
歩みを進めていく内に遠目からも分かる程の大きく並ぶの自身の数十倍もある高さの木々が見えてくる。
朝から歩き始めてからその木々の目の前まで来れたのはお昼頃。
歩むペースを変えず余裕を持ちながらの進むも予定をしていた時間より早く着くこととなった。
森の中、奥へと進むほど辺り一体薄暗くなってゆく。
光を遮るほどの葉と枝木の天井、遠くに見える目印の様に暗がりの中1つ大きくポッカリと穴が空いたように空から光指す場所。
陽の光が指すそこには彼が住む家がある。
「いるかな・・・ラック」
少しの不安を過りながら、光の差す家の方までへ行くと太い切り株に目新しい切り口、ざっくりと刺された剣に切られた綺麗に並べられた薪、それに屋根の煙突からは煙が吹いている。
生活を感じるそこに人の気配も感じられる。
期待を胸に家の扉にノックをすると直ぐ開かれ、目の前には1人の少年が立っていた。
「え?あれ?」
扉の前に突然現れた全身黒の姿で覆う人物を見た少年は驚きもせず、私はというと彼では無い150位の同じ背丈程の見知らぬ少年が家から出て来た事に声が漏れてしまった。
狼狽える事なく少年は「どちら様?名前は?何の用ですか?」私に問いかける。
ただでさえ見た目が怪しいのに少し戸惑いを見せてしまい更に怪しく見えたに違いない、少年の目はえらく冷たくいかにも警戒をしている雰囲気だった。
「ラックは居ますか?彼の旧友です。カペラという名前を伝えて貰えれば分かると思います。」
少年はまじまじと頭から足の先を細く目を尖らせ睨み怪しむ素振りを見せ、深く被るフードを指し言った。
「その上着を脱いで下さい、脱がないのであれば帰って下さい・・・、と言って大人しく帰りもしないでしょうけど」
脇に巻いたベルトに付いたホルダーから短剣に手をかけ少年は戦闘態勢に入る。
完全に怪しまれている。
目は本気だけど相手は子供、手荒な真似は避ける為、コートの背に隠した背丈程の杖を取り出し即座に少年の脇とホルダーの間に杖を差し込み体ごと持ち上げ身動きを取れない様にした。
「降ろせ!こ・・・」
少年の咄嗟に暴れようと試みるも驚いた様子でこちらを見つめている。
杖を取り出す際にコートが持ち上がり深く被っていたフードは外れた。
少年の青い瞳から映る人とは異なる大きな三角の獣の耳に顔は白い毛に覆われ、少し長く尖った口に逆三角の黒い鼻、まさに獣そのもの人ならざる魔獣の姿は私の姿。
「魔獣・・・」
「手荒な事してごめんなさい、でも私はラックに会いに来ただけなの」
「ふざけるな、お前みたいな醜い魔獣が師匠に何の様だ。報復か?」
軽蔑の目に映る私は手荒な真似をしたせいか酷く憎く見え映る。
そんな彼の目をしっかりと捉えながら信じて貰えないと思いながらも彼を説得しようと対話を続ける。
「私は彼の仲間だったの」
「嘘つくなお前みたいな化け物が英雄である師匠のパーティな訳無いだろ」
「証明が必要ならする・・・」
「信用する訳無いだろ、どんなでっち上げをしようと絶対にありえない」
「もういいだろ」と呆れた様な少し抜けた声。
後ろを振り向くとそこには背の高くヨレヨレの軽装をしたどこにでもいそうな見た目の男、ラックが立っていた。
「師匠!こいつをやっつけて下さい!」と少年は興奮した表情を見せていた。
それを見てラックは苦笑い。私は彼の姿を見てからは直ぐに少年を下ろすと彼は私の肩を優しく叩く。
「手荒い歓迎で悪いなカペラ、元気そうで何より」
「ラック、お願いがあるから来たの」
彼はため息をつきズボンのポケットからメガネを取り出し、半場強引に私の背中を押し家の中へ入れてそれを横目にポカンとした表情で少年は目のやりどころに困っていた。
「あのなあカペラ、久しぶりにあって用事だって寂しい事言うなよ。
とりあえず座れ、ローライなんか飲み物出してくれよ」
ローライと呼ばれたその少年はビクリと体を動かし、キッチンのあるであろう部屋に急ぎ足に去っていき。
ラックは居間の方へと私をつれ大きなテーブルの前に綺麗に並べられた椅子の内の1つを引き、導かれるまま私はそこに座り彼は向かいの位置に座った。
「あの、ラック謝るから・・・」
「なんだよお前、あんだけ遊びに来いって手紙出して来なかったのに。
お前のお願いは聞かなきゃなんないのか?」
意地悪そうにニヤニヤと頬杖をつき見るその姿、居心地の悪い状況を楽しんでいるラック。
「本当にごめん、ずっと長い旅続きで家に帰ることも全然無くて」
そう答えるとラックは少し微笑み言った。
「知ってるよ、まだお前スターキャリアー・・・だっけか?やってんだろ?ユージーは元気か?」
ユージーとは所長の名前である。ラックと所長は旧友の為にその名前を聞くことも久しく無かった為、一瞬誰の事か分からなくなってしまい反応が遅れてしまう。
「うん、元気だよ。・・・あの、ラックあまり長居は出来ないんだけど・・・」
「お願いの話か?」
私は頷きラックの方を見ると奥の方から受皿に2つ並々と注がれたお茶の入ったカップを持つ少年のローライの姿が見え、座る2人の前にお茶を差し出し去ろうとする。
そんな彼に「待てローライ」とラックは呼び止め、続けて「お茶をもう1つ、お前も座れ」と指で指示。
小さく「ハイ・・・」という声が漏れ出したかの様に聞こえた。
少年が新たに持ってきたお茶を片手にラックの隣の席へと座る迄の何とも居心地の悪い数秒は長く感じた。
彼の行動自体別に事情を知らないのなら当たり前の行動にも思えてしまう分、ただただ罪悪感しかない。
「お願いの前に」そう切り出したのはラックでその後に続く言葉を挟む様に口を開く他なかった。
「あの、その子は私の事知らなかったし私も格好が格好だから・・・責めない・・・で・・・ね?
人もあまり寄らないようなこんな場所に魔獣の姿が見えたらさ警戒しちゃうよね?」
私の言葉に彼は軽く首を横に振りしょげる少年に向け言う。
「2つ、勘違いしてる。相手の力量の見極めの甘さ、戦闘経験も無いのに戦おうとしたんだろ。逃げ方も教えたよな?」
「ハイ・・・」
「あと、カペラに謝れ」
ローライと呼ばれたその少年は唇をグッとかみ締め睨む様に恨めしそうに頭を下げ、彼は静かに軽くローライの頭を叩いた。
「カペラ許してくれ」
「別に怒ってないんだけど〜・・・」
とても気まずい、早く要件だけ伝えて依頼元へと行きたい。
だが、この状況を見る限りお願いは無理だと感じ始める。
「あの、ラックお願いの件だけど・・・やっぱりいいかなって」
「水臭いな、言うだけ言え、言うだけならいいだろ?それにそんなに急ぎか?」
「急ぎ・・・まあ急いだ方が良いかもだけど」
「1日位足休めろよ、客部屋もあるんだぞ。1回も使った事ないけど」
いや、この状況で無理だよ。とも言えず。
その言葉を聞いた隣に座っているローライも驚いた表情を見せている。
泊まる話になるとこの子にも申し訳ない。
「いや・・・泊まるって言っても・・・」
「無理にとは言わないけど、嫌か?」
「あのねラック、遊びに来たわけじゃなくて」
「なんだよ、じゃあ何しにきたんだ」
「えっと・・・」
私はチラリとローライの方を見る。
そう彼がいるとなると無闇にラックを連れ出す訳にもいかない、かと言ってこのローライという子を連れて行けるほど余裕のある仕事でも無いだろう。
無理を承知に私は依頼の事を簡単に伝えた上で今回の一時的な同行と協力をお願いしに来たことを伝えた。
話を終えると彼は理解したのか頷き言った。
「成程ね、まあ確かにあそこの広さだと並の探索知識と土地勘と探索能力はいるな」
「うん、ラック位しか思いつかなくて・・・」
というのも数多存在する勇者の中でもラックは特別変わっており、他の勇者に比べ探索に関しては最強を誇る。
基本的な勇者のアビリティは等しく全体的に高いのが特徴だが、彼の場合そこまで長けた能力は多くないが固有する魔法や能力に関しては他の追随を許さなかった。
そんな彼が居れば簡単に依頼は済むはず。
と当初は考えていた。
「探索なんか出来るやつ今だと結構居そうだけど?」
「居なくもないけど、誰もついて来てくれないんだよ。魔獣だし仕方ないんだろうけど」
「同族は?魔獣同士なら問題無いだろ」
「現職として活動してる人少ないし辞めた人から探すの大変で」
「まあ理由はお前と一緒だろな、良くやるよその仕事。回復特化で探索は経験だけ、一人だとまあそりゃ仕事長引くわな」
しばらく沈黙は続いた後、チラリとラックの隣に座るローライが気に掛かり見ていると、その目を追うように彼はローライを見て何かに気づいたように手をパンと鳴らした。
「あぁ、そうか成程。カペラ、ローライを連れて行け」
「「えぇ?!」」
2人してガタリと椅子から音を出し立ち上がり、それを見て驚いたラックはお茶を飲もうとした手を置く。
「なんだよ」
「いや・・・なんで?」
「師匠、嫌です」
「ローライお前は少し黙ってろ」
「ラック、この子見た感じ10歳くらいの子でしょ?仮にも危険な場所には違いないんだよ?」
「お前の魔法能力があれば充分過ぎる位大丈夫だろ。
それにローライにはかなり探索能力と捜索や察知能力や魔法使えるように教えてるし、そこら辺の探索使えるやつより断然使えるぞ。
何よりローライにとっては実戦経験があった方が良い、結構良い案だと思うけどダメか?」
「ラックも来るんだよね?」
「いや、行かない」
「なんでオレがこんな奴と!」と椅子の上で立ち上がるほど怒鳴るローライ。
そんな彼をどうどうと宥める様にラックは言う。
「ローライ、仮にも俺達はお前らで言う"支配の龍"を倒してんだ。こいつはその一匹、俺のお墨付きだよ」
ローライは苦虫を潰したような顔でこちらを見つめ、かく言う私も不安が顔に現れていたのだろうか、ラックは「大丈夫だよ」と一言かける。
4
結局その日はラックの住む家で一夜を過ごす事となった。
ラックとは久しぶりの再会と言う事もあり会話はそれなりに弾みはしたものの、終始敵意を露わにするローライはまともな打ち合わせも出来きず。
彼との距離は遠いまま・・・。
早朝、出発よりかなり早くに目覚めてしまったので風を受けに外に出た。
濃い霧が朝日を反射する、綺麗に丸く描いた日差しと木々の影はさながら真っ暗な中に差す舞台のスポットライトだった。
こんな綺麗で静かな場所を選んだ彼の意外な一面を見た気がする。
「綺麗だろ、朝が一番居心地良いんだよ」
振り返るといつの間にかラックが家の玄関の前を立っていた。
「早いねラック、おはよう」
「お前もな、ここ住んでからこれ見たさにずっと早起きでさ、街が遠いくらいかな不便なのは」
「この景観の為にここに家建てたの?」
「まあな、賑やかなのも嫌いじゃないけど、もう飽きた」
「変わったねラック」
「歳食っただけだよ」と掛けているメガネを指差し笑う。
「ラック、あの子は?」
「ん?ローライか?あいつ故郷にいた孤児だよ。帰った時にこっちに連れて来た」
「故郷って解散した後に村に帰ったの?」
「帰ったよ、丁度解散したのが4、5年前だったか、その時故郷に帰ったら村がもう跡形も無くてさ。
その時に村で生き残ってたあいつを引き取ったんだよ」
淡々といつもの表情で話す。その姿に後悔や悲しみ等は感じられなかった。
「生まれ育った・・・とはいえ長い間いなかったんだ、俺達が名前を上げていけばそりゃ、いつか故郷が襲われるなんてざらな話だしその覚悟はあった。
残念ではあるけど俺はあの旅を後悔したことは無いぞ」
そう語りながらラックはズボンのポケットから勲章を取り出し眺めていた。
世界を救った勇者一行にのみ授与されるそれは、丸く彫られた特別な宝石が埋め込まれた正方形に象られた金の勲章。
それぞれ受け取る勲章は埋め込まれている宝石の種類が違う。
「カペラはまだ持ってるのか?」
「・・・うん」
「使ってないだろ」
「うん」
「俺はたまに買い物で使うんだけどさ、これに誇りがあるかと言われると微妙だな。
何でも使える便利なアイテムって感じだよ」
「色んなものが貰えて、色んな所へ入れるもんね」
「あの徽章は?」
「あるよ、いつも服の下に入れて首に下げてる」
服の下にしまっている青い星が彫られたメダルが飾られたペンダント。それを取り出しラックに見せると彼は微笑んだ。
「俺はお前達と旅が出来た事、今でも誇りに思うよ。
お前もそうであって欲しいとそう思ってるけど、ふと思うんだ。お前を巻き込むべきじゃ無かったのかもってさ」
「寂しい事言わないでよラック」
「悪かったよ、たださ世界救った後に俺達の望んだ物は叶ったのかなって、あの旅の意味を考える事が最近増えて不安になるんだよ」
ラックは近くの積まれた薪に腰掛け、じっとこちらの目を合わせ問い掛けるようにそう話す。何か私にその問いに対する答えを期待している様な。
「分からない、少なくとも僕はあの旅が出来て良かった、と思う」
ニコリと微笑むと彼は「そっか」と一言零し家の中へと入っていった。
あの旅に、自分の目的があるときっと皆が思い集まった。その目的はそれぞれ違っていたけど、きっと共通の思いや答えがあったのだと思う。
旅の目的を終えた後、それぞれ思い描いた答えを得られた仲間もいればいなかった者もいる。
ラックが旅に誘った事を"巻き込んだ"という風に言い換えたのはそういう理由なんだろう。
かつての仲間達が今どうなったのか、リーダーである彼が事情を知っているのも不思議では無い。彼自身、願いが叶わなかったように。
気がつけば予定していた出発の時間まで太陽は上がっていた、家の中へと戻り居間の方へと行くと、ラックは四角の大きな包みを手渡してきた。
「これ持ってけ、邪魔にはなんないから」
「ありがとう、ラック」
客部屋に戻り、着替えを済ませ荷物を纏め再び居間の方へと戻ると準備を済ませ、装備を整え終えているローライの姿があった。
「行こっか、ローライ君」
「気安く名前を呼ぶな化け物」
ラックは軽くローライのお尻に蹴りをいれ、ムスッとした表情で私を睨んだ。
「気をつけてな、おまえら」
ラックに軽く手を振り別れ、ローライと共に"ノコラズノ森"を後にした。
目指すは"トリル・サンダラ"、いつもの様になるべく早く依頼をこなし無事ローライを帰還させる。
いつもより少し緊張感を持ってこなす事を心掛けていた。
想定以上の最悪の状況を襲う、そんな恐怖を身をもって知るとはこの時知る由もなく。
読了ありがとうございました。
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続きを制作しておりますので今後も楽しんで読んで頂けるよう尽力いたします。
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-世見人 白図- Yomihito Shirazu