最近の博士と立野くん
「簡単な装置を作れといってきおった」
「どんなのですか?」
「避難所用の簡易トイレに設置する、スイッチを押すと手洗い用の液体石鹸が出るやつだそうだ」
「できますかね?」
「わからん。足踏み式のスイッチで、手の高さに届くようにするとある」
「ちょっと込み入ってますね」
「3Dプリンタで試作品を作れと言っておる」
「fusion360の出番ですね。しばらく使ってなかったから、解約とかになってないかな?それと、3Dプリンタの粉とか巻いてるやつとか劣化してないかな」
「巻いてるやつ?」
「しばらく使ってなかったので呼び名をド忘れしました」
前途多難だな、と2人は思った。
「液体石鹸の出口とスイッチの距離があるから、ちと厄介だぞ」
「はい。でも博士、受けてきたお仕事ですよね?やりましょう」
「おお、立野くん、頼もしいのう」
そこへ博士の奥さんがお茶を淹れて運んできた。
「珍しく人様のお役に立てる発明ですね」
「どういう意味かな?」
「いいえ。おほほほ」
「最近は編み物されてないんですか?」
と立野くんが奥さんに聞くと、
「マルの猫ちぐらを作ってますよ」
「猫ちぐら!?そんなんできるんですか?」
「試作品ですよ」
「すごいなぁ」
「ここはなんでも作る場所ですからね。ねえ、あなた」
「そうじゃな」
3人は朗らかに笑った。