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第92話 綻びから見える✿『影』

 『新人』である間は、ギルド内であっても担当官と『迷宮』ギルドの『上役』にしか、スキル等の個人情報は流れない。

 これは、担当官同士の今後の『担当争い』に繋がるため、原則は同じ担当官であっても「新人を卒業するまで」はアンタッチャブルとなっている。


 ただ、『普通の新人』であれば、ギルドの職員なら「調べようと思えば調べれる」程度のことであり、それはあくまで『倫理の問題』であった。


― ☘

 ただし、『(スター)』は別なのである。


 唯一無二のスキルと分かった時点で、出世欲のある担当官の引き抜きは往々にして見苦しい手段で行われてきており、それは、『(スター)』持ちの迷宮探索家フローターうれいを見ることとなる。


― ☘

 それもあり、担当レベルでは絶対的に、その情報については共有が出来ないようになっているのである。


 だからこそ、担当官からすれば、迷宮探索家フローターとの最初の出会いが全てとなり、その情報を得る代わりに、担当官は『絶対的な責任』を負う。


― ☘

 サーシャが、マーガレットとフリージアに、エヴァの『(スター)』について話しているのも、「彼女達ならお互いを裏切らない」と、彼女がそう信じ、その責任の範疇で話をしているし、このことについて、助言と指導も言葉を選んで伝えてきたつもりだ。



 ✿

― ☘

(彼女達にも、その点はしっかりと伝えてある。『三つ葉』は別として、私からは誰にも話していない……。なのに、セビオがエヴァちゃんのことを知っていた。《《ということは》》……。)


「うーん、ギルド長に報告したいけれど……流石に今は、タイミングが悪いなぁ。」


― ☘

 サーシャは、『上役』と呼ばれる、『4名の統括担当官』と『2名の副ギルド長』の顔を思い浮かべながら、黒幕を絞れないその幻影に下唇を噛む。




 ✿ ✿ ✿


「サーシャさん~! フリージアの武器出来たよ~!」


 エヴァが自分のことのように、キラキラしてサーシャの元に走ってくる。


「最強の武器! これで私も伝説の剣士。いや、異国の侍から見たら、えーと、『伝説の異国の異国の侍』? と、とにかく……強い刀使いになった! ふふふ。」


 フリージアのテンションが何時もより高い!


「お陰様で残金10万エリスを切りましたけど?」

「あ、でも。僕の所持金と合わせれば、4人の路銀としてはまぁまぁですよ?」


「あ、リンデンのお金、当にしていいんだ! 後でカフェ行こ!」

「エヴァさん……節約は大事ですよ?」


「えー、ケチー!」

― ☘

 4人は、相変わらずの軽ーいノリで、サーシャは心の底から救われる思いだった。


「うふふ、良かったわね! アリアさんも居てフリージアちゃんが『最強の武器』って言うんだから、お墨付きってことよね!」


「フリージア、アリアさんと立ち会って一瞬で負けたけどね。」

「瞬殺でしたわね。」


「はぁ? 御師様が強すぎなの!

 それにエヴァの『影縫い』使えるなんて卑怯。私でさえ知らなかった技。」


「えー、私のじゃないよ。フィオレ姐さんのだよ?」

「そんなのどうでもいい。私はあれが羨ましいの。」



 わいわい、がやがや……。

 ぴーちくぱーちく、あーだこーだ…… 以下省略。


 ◇

― ☘

『―――でね! 明日の試験どうすればいいの?』


 あれだけ自由にぺちゃくちゃ話まくっていた彼女達が、こういう『気になる大切なこと』となると、ピタッと言葉を合わせて聞いてくる。


「ぷ、あはは、、、。明日は、朝一番にここに集合よ。場所は教えられない。

 持参のアイテムも、各自で予想して工面してらっしゃい。」


「わくわくするね!」

 目を輝かす3人娘と、少し不安そうなリンデン。


― ☘

「あ、後。先日も言ったけれど、試験は世界樹の中じゃないからね? 妖精は大丈夫だけれど、ティムモンスター……スライムちゃんは出しちゃダメだから。」


 伝えていい範囲よね?

 と、心の中で確認をしてサーシャは、マーガレットに注意をする。


「そうでしたわね。合間合間でスライムちゃんも鍛えていましたので、相手次第ではレベリングをしていたかもですわ……。ありがとうございます。」


「もう! あの子『あれ』なんだから気を付けなさい。それと……。」

 サーシャは、フリージアとエヴァにギルドからの手紙を渡す。


「ん? これは?」

― ☘

「ルイゼさんとアリアさんに渡して欲しいの。『第2階層事件』のことで、親代わりのおふたりにギルドから。それで、マーガレットさん。」


「あ、はい。」

「ギルド長直々の、お母さまへの書簡を預かっているのね。で、これからお会い出来ないかな?」


― ☘

「えーと、今日は『ガーデンの水やり』の日ですから、今からなら、邪魔をしなければ大丈夫かと思いましてよ?」


「あ……例の?」

「ええ……例の。」


「心してお伺いします……。エヴァちゃんフリージアちゃん、お手紙お願いね。」

「あ、うん。分かったけどリンデンはいいの?」


「そちらは別口で謝罪済みなので大丈夫。でも、リンデン君も私とマーガレットさんのお母さんのところに付いて来てもらって良い?」


― ☘

 サーシャは、パーティーで顔を合せなかったリンデンを、スパティに合わせておきたかった。


 今後、いや……この試験でエヴァ達を陰ながら助けるのは彼しかいない。


― ☘

 誰もがノーマークのこの「普通」の新人上がりの男の子が持つ『観察眼』。

 奴らの狙いが、エヴァ達で《《あった》》としても、そうで《《なかった》》としても、試験内部からの彼の目には期待がしたい。



 ✿ ✿ ✿


 様々な思惑を背景に、この日はここで解散となり、

 彼女達は各々の行く先にわいわいと向かう。


― ☘

 ギルド内部の思惑がどうであれ、エヴァ達にとっては、ただ単純に『D級への昇格を掛けた大切な試験』なだけなのである。


 彼女達は、ただただ、明日へのわくわくに期待を膨らませて明日への準備に勤しみ、遠足が楽しみな子供達のように笑顔で、ゆっくりと床に就く試験前日の夜。(リンデンを除いて)

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